2023年09月14日08時15分 / 提供:マイナビニュース
神木隆之介主演の連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~※土曜は1週間の振り返りほか)で、宮野真守演じる高知の自由民権運動家だった早川逸馬が、14日放送の第119回で再登場。早川は、神木演じる若き槙野万太郎と出会い、彼を中濱万次郎(宇崎竜童)に引き合わせた人物で、万太郎にとっての恩人でもある。宮野の再登板の理由を、脚本を手掛けた長田育恵氏が語った。
○■逸馬の生存や再登場の可能性を尋ねる声が「とても多かった」
幕末から明治、大正、昭和と激動の時代に、植物を愛し、その研究に情熱を注いだ高知県出身の植物学者・牧野富太郎をモデルにした槙野万太郎と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く『らんまん』。NHKのドラ『群青領域』(21)や『旅屋おかえり』(22)などを手掛けた脚本の長田氏は、初の長編ドラマにして初の朝ドラ『らんまん』を実に見応えのある作品に仕上げた。
SNSでも毎朝放送後に熱い感想が飛び交い、非常に高い評価を得ている『らんまん』。長田氏によると、視聴者の反応を受けて、キャラクターや物語を変更することはほとんどないと言うが、唯一、早川逸馬だけは、その反響の大きさから再登場させたと言う。
長田氏はその経緯について「逸馬さんは、いずれ何らかの形で、その後も関わるかもしれないなとは思っていたのですが、いなくなったあとで、逸馬さんが生きているのか、また出てくるのかを知りたいという声がとても多かったんです。それで、ちゃんと生存を確認していただこうという気持ちが働きました」と語る。
ちなみに、宮野は初の朝ドラ出演となったが、前半で行われたインタビューにて「自分の役者人生においても大事なステップをもらったと思っています。現場ではすてきな出会いがあって、役者としてこういうことができるということをいろいろと感じさせてもらえましたし、自分にとって『らんまん』はかけがえのない作品になっています」と言葉をかみしめていた。
早川は、寿恵子が始めた待合茶屋を訪れたことから、万太郎と再会し、お互いに感激し合う。さらに中川大志演じる資産家の青年・永守徹を万太郎に紹介するという重要な役どころを担う。この永守こそ、万太郎の救世主となりそうなキーマンらしいので、今後も注目していきたい。
○■映像を見てからキャラクターのイメージを膨らませることも
もちろん宮野だけではなく、長田氏は完成した映像を見て、様々な役者陣が織りなす演技に心を躍らせているそうだ。「やはりキャラクターは、俳優さんによってどんどん肉付けされるので、私自身も出来上がった映像を見て、どんなふうにキャラクターが描かれたかを初めて把握するんです。だから、映像を見てから、私自身も具体的に肉付けすることが日々増えていっている感じがします」
例えば、前原瑞樹演じる、万太郎の盟友・藤丸次郎のキャラクターもその1人だ。
「藤丸は最初に『ウサギ小屋でウサギを可愛がっている』と、私がト書きに書いたので、ウサギと藤丸をペアで出してもらいました。でも、映像を観たら、藤丸がめちゃくちゃウサギを抱きしめたり、頬ずりしたりしていて、私が想定していた藤丸とウサギとの距離感よりもっと近かったんです。しかもウサギが思ったよりも大きくて。ウサギを愛する気持ちだけではなく、藤丸の体温や優しさ、傷つきやすさも具体的に見えてきました」
その結果、藤丸のキャラクターがより一層ふくらんだという長田氏。「だから、寿恵子がつわりに苦しんでいた時に『揚げ芋がいいんだよ。義理のお姉さん、こればっかり食べてたんだよ』と、万太郎に教えてあげたんです。そういうシーンは最初から決まっていたわけではなく、そうやって藤丸くんと共に歩いていくに従い、きっと彼ならばそういうふうな行動をとるだろうと思って入れました。そういうことが全キャラクターにおいて発生しています」と明かした。
終盤でも、次から次へと魅力的な新キャラクターが登場している『らんまん』。万太郎と寿恵子の冒険がどんな結末を迎えるのか、大いに期待したい。
■長田育恵(おさだ・いくえ)
1977年生まれ、東京都出身の劇作家、脚本家。劇団「てがみ座」主宰。井上ひさしに師事後、2009年に「てがみ座」を旗揚げ。2016年に戯曲『蜜柑とユウウツ-茨木のり子異聞-』で第19回鶴屋南北戯曲賞を受賞。2020年『現代能楽集X~能「道成寺」「隅田川」より』にて第28回読売演劇大賞選考委員特別賞、PARCOプロデュース『ゲルニカ』にて同優秀作品賞。テレビドラマの近作は、『マンゴーの樹の下で ~ルソン島、戦火の約束~』(19)、『すぐ死ぬんだから』(20)、『流行感冒』(21)、『群青領域』(21)、『旅屋おかえり』(22、23)など。
(C)NHK