2025年04月26日17時00分 / 提供:ウーマンエキサイト
区内の子どもの私立進学率が高いことが特徴でもある港区。区内10校の区立中学校では、英語学習や海外体験として、海外への修学旅行に約4億円の予算を組んでいることについて賛否があるなか、公教育の役割とは何か、また港区はどのような公教育を目指しているのか、清家港区長にお聞きしました。
お話を聞いたのは…
港区 清家愛区長
1974年生まれ、港区東麻布生まれ。青山学院大学国際政治経済学部、国際政治学科卒業(現代ロシア論・袴田茂樹ゼミ)。産経新聞の記者として7年、主に社会部で事件、行政取材を担当。結婚・出産と仕事の両立に悩み、退社。フリーランスになるも、待機児童のため西麻布で子育てに専念。保育園にも幼稚園にも入れない港区の現状はおかしい!と、ブログ上で現場の声を集め、行政に提言する「港区ママの会」を発足。2011年4月、港区議会議員選挙5位初当選。3期連続トップ当選で、4期13年区議を務め、2024年6月港区長初当選。
>>港区・清家愛公式ページ
―港区は、小学校の私学進学率は約30%、中学校では65%(※1)となっています。その中で、公教育の役割については、どのようにお考えですか。
清家区長:受験そのものは、その時期一生懸命勉強するとか、親子で目標に向かって頑張るなど意味はあるのだろうと思います。でも、そうではない充実した教育環境が同時にないといけないと思うんです。みんながするからということだけで、したくもないのに受験する、というような流れはなくしたいと思っています。公立学校に求められることとしては、教育内容や教育環境の充実に取り組み、学校で友達や先生とともに学び、高め合うことだと考えます。
―その中で港区ならではの教育とは、どうお考えですか。
清家区長:多様性だと思います。幼稚園、小・中学校には様々な国籍の幼児・児童・生徒がおり、インターナショナルスクールのように国際色が豊かです。国籍だけではなく、家庭環境や障害の有無も含めて、多様な子どもが在籍しています。そういった子どもたちの声を聴き、区内の大使館や企業などと連携した取組を推進していることが、港区ならではの教育につながっていると考えています。
―逆に、多様性が豊かになって、課題はありますか。
清家区長:障害や発達、学校生活への適応について言えば、年々支援が必要なお子さんが多くなっています。学習場面や学校生活において、個に応じた支援を行う「スペシャルニーズアシスタント」を、今年度全校に配置し、多様なお子さんの状況に寄り添っていけるような体制づくりのため、約4億円の予算を計上しました。
―外国籍のお子さんについては、いかがですか。
清家区長:日本語を母語としないお子さんのための、「みなとにほんごふれあいスペース~ことばの宝箱~」という、子ども向けの日本語教室を、今年度から本格的に始めます。簡単な日本語の勉強と、あとは交流ですね。日本語学習支援ボランティアや、高輪にある東海大学国際学部の学生さんにも関わってもらいます。
―私も大学院の授業で区内小学校に、外国籍のお子さんの授業の様子を見にいったことがありますが、九九の教え方も全然違いますし、先生だけでやり切るにはとても大変だと思いました。他に、港区ならではの国際教育としては、どんなことがありますか。
清家区長:「MINATOまるごと留学」を今年度から始めます。今、円安もあって、なかなか留学ができない中で、外国の文化に触れる機会を創出していきます。
―港区の中で?
清家区長:区内在住の外国人のご自宅にホームステイをしたり、外国人とまち歩きを体験するなど、外国語とその国の文化に直接触れて国際理解を深めてもらえればと思っています。港区の新たな魅力の発見にもなったらとも思っています。
―港区は外国人居住率も高いですし、意外に身近なところに、自然と外国人と触れ合う機会があるということですね。
清家区長:港区には、全国の約半数にあたる80カ国以上もの在外公館があり、外国の方も多く住んでいるので、その国の方々と交流できることは、港区の強みだと思っています。その強みを生かしていきたいです。
(※1) 7歳児(小1) 区立小学校在籍者1,837人/全区2,588人、13歳児(中1)区内中学校在籍者738人/全区2,146人(いずれも2025年2月現在)
取材・文/政治ジャーナリスト 細川珠生
政治ジャーナリスト 細川珠生
聖心女子大学大学院文学研究科修了、人間科学修士(教育研究領域)。20代よりフリーランスのジャーナリストとして政治、教育、地方自治、エネルギーなどを取材。一男を育てながら、品川区教育委員会委員、千葉工業大学理事、三井住友建設(株)社外取締役などを歴任。現在は、内閣府男女共同参画会議議員、新しい地方経済・生活環境創生有識者会議委員、原子力発電環境整備機構評議員などを務める。Podcast「細川珠生の気になる珠手箱」に出演中。
(細川珠生)