2025年04月17日20時00分 / 提供:ウーマンエキサイト
塾代や習い事の費用など、毎月出ていく教育費の支出。「子どもが大きくなるまでに、これから一体いくら教育費がかかるのだろう……」と不安になる瞬間はありませんか? そんなママやパパに役立つアドバイスを与えてくれる書籍を紹介します!
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2025年2月の衆議院予算委員会で集中審議されていた「高校授業料無償化」。近年は大学授業料も一部無償化になってきているとはいえ、自分たちに適用になるのかを含めて教育費の先行きは見通しづらいもの。「これから一体いくら教育費がかかるのだろう」と漠然とした不安を感じている家庭は少なくないと思います。
そんなママやパパに役立つアドバイスを与えてくれるのが、前野彩さんの『教育費の不安にこたえる本』(日経BP)です。今回はこの書籍を参考に、教育費との向き合い方について特に役立つポイントをまとめました。
※本記事で紹介する情報は、2025年4月時点のものです。
独立系ファイナンシャル・プランナーとしてテレビでも大活躍の前野彩さんのこの著書では「教育費についてどう考え、どう準備していけばいいか」がわかりやすく解説されています。公的支援や制度の併用によって支出を抑える裏ワザなども紹介されており、教育費に不安を感じているママ・パパ必見の一冊です!
本記事では、その一部を紹介します。
■前野彩(まえの あや)さん プロフィール
ファイナンシャル・プランナー・CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
2001年に中学校・高校の養護教諭からFPに転身。「お金の安心と可能性をかたちに」を理念に、「知れば得トク、知らなきゃソンするお金の知恵」を伝える。『日経クロスウーマン(DUAL)』では2013年の創刊から2018年末まで連載を担当。金融商品の販売を行わない独立系FPとして個人相談を中心に活動するほか、講演やテレビでも活躍。
■1人2〜3,000万円なんて払えるの!?
「教育費の不安にこたえる本」(日経BP)より イラスト:エイイチ
一説によれば、大学まで通わせた場合、子ども一人にかかる教育費は2〜3千万円との試算も。総額で考えると「そんなに用意できるだろうか」と不安に駆られますよね。
しかし教育費の大事なポイントは、今すぐ一度にお金が必要になるわけではない点。「毎月これくらいの額なら乗り切れる」と具体的な数字をざっくり知って、前向きに考えていきましょう、と前野さんはアドバイスします。
・ 「総額」ではなく「毎月かかるお金」で考える
・ 「正確な金額」ではなく「ざっくり」をつかむ
・ 「いくらかかる?」ではなく「いくらかける?」で準備する
また教育費は、病気などの予測できない支出に比べ、「いつ」「いくら」必要になるか大体の目安を立てられる「予想ができる支出」といえます。
▼「積立」「やりくり」2つの柱で考える!そこで前野さんが提案するのが、下の図のように「三角形+四角形」で教育費を考える方法です。
「三角形」とは、毎月の児童手当を積み立てて大学資金を作る貯蓄のこと。「四角形」とは、学校関係費用と塾や習い事などの学校外費用で、毎月の家計からやりくりして支出していくものを指します。
「教育費の不安にこたえる本」(日経BP)P21より
『金額をざっくり押さえて「コツコツ準備&コツコツ支払い」で乗り切りましょう!』と前野さんはアドバイスします。
Point:必要となる教育費はコツコツ貯めて、コツコツ支払えばいい!
教育資金に組み込める「支援制度」とは?
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近年は子どもの出産や教育に対してさまざまな支援制度があり、この金額感を掴んでおくことが、教育費を考える上で非常に重要です。
なかでも、教育資金にしっかりと組み込みたいのが「児童手当」。児童手当は、住んでいる地域や勤めている会社に関係なく、かつ所得制限がなく、子どもがいる世帯全員が受け取れることが特徴です。
▼「児童手当」で国立大学費用がまかなえる!?現行制度において、ひと月あたり1.5万円〜1万円、第三子以降は3万円となります。第三子とは「22歳の年度末まで」に該当するきょうだいのうち3番目の子を指します。子ども一人ならばざっくり240万円、年齢差が2歳の3人きょうだいなら総額で1150万円になる試算です。児童手当を使わずに積み立てていけば、国立大学4年間にかかるお金の合計243万円をほぼまかなえる金額です。
「教育費の不安にこたえる本」(日経BP)P17より
児童手当を受け取るためには、子どもが生まれてから15日以内に市区町村役場での手続きが必要です。「手続きが遅れた分は支給されないため、出生届と同時に行いましょう」と前野さんはアドバイスします。
Point:児童手当を積み立てるだけで、国立大学費用がまかなえる!
3回の「貯めどき」っていつのこと?
続いてさきほど「四角形」で表した「毎月の支出」。この支出額は、子どもの年齢によって変動します。前野さんは、子どもの成長に連動する「貯めどき」を意識してコツコツと貯蓄を、とアドバイスします。
どの時期にどのような点を意識すれば良いのか、学校別に紹介します。
「教育費の不安にこたえる本」(日経BP)P25より
▼貯めどき(1)【幼稚園・保育園時代】
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現在、3〜5歳児クラスの保育園・幼稚園の利用料は完全無償化されています。きょうだいが同時に通う場合の保育料は2人目半額、3人目無料になり、さらに自治体によっては独自の給付をしているところもあります(バス代や給食費、行事費などは別途必要)。
保育園の場合は「3〜5歳の3年間、無償化で浮いた分を貯蓄に回す」、幼稚園の場合は「入園前0〜2歳の3年間に貯めておく」ことを前野さんは推奨しています。
また、この時期は「習い事費のかけすぎには気をつけましょう」と前野さんはアドバイスします。
「教育費の不安にこたえる本」(日経BP)P39より イラスト:エイイチ
習い事費用にひと月1万円前後をかけている家庭が約半数を占めています。また4万円以上かけている家庭も3割以上。しかし幼稚園の時期は「貯めどき」です。かけ過ぎは将来の教育費負担に影響しかねないので、長期的な目線で「うちは、これくらい」と決めましょう、と前野さんはアドバイスします。
▼貯めどき(2)【小学生時代】収入アップのチャンス!
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公立の小学校にかかる費用は月1万円弱。給食費や習い事を含めても月3万円前後。ただし、私立小学校となると公立の4.5倍以上、月14万円程度かかります。「この金額を6年間、払い続けられるかは、夫婦で確認して」と前野さん。
共働き家庭の場合、子どもが3歳になるまでは育児時短勤務制度が適用になりますが、その手厚さは会社によってさまざまです。小学校3年生まで、6年生までと延長する企業も増えていますが、「小学校入学まで」としている会社が多いようです。
ママが帰宅できるまでの学童保育や習い事に行くことになり、「小一の壁」と呼ばれる時期にはそれまでになかった費用がかかることがありますが、「長い人生の中での必要経費と割り切りましょう」と前野さん。小学校に入学後は、ママのフルタイム復帰やパート勤務の開始などで収入を増やしていける時期なので、この収入分をコツコツ貯めていくことを、前野さんはすすめています。
そしてもっとも注意したいのは、中学受験。小4〜小6まで有名塾にフルコースで通う場合なんと約300万円かかることも。塾代を「聖域」にせず、他のきょうだいのことも考えて、月々の塾代と臨時の講習費のバランスを考えるようにしましょう、と前野さんはアドバイスします。
▼【中学生時代】ひと月5万円がおおよその目安
続いて中学時代。公立に通う場合でも、教材やクラブ活動、学習塾などの学校外費用が小学校よりは増えるのが一般的です。子ども同士の付き合いにもお金がかかり始める時期ですよね。公立中学校は月約5万円、私立中学校は月約12万円がおおよその目安となるようです。
「ひと月5万円あれば、塾代も含めて子どもに十分な教育環境を用意できる」と前向きに考えてやりくりしていきましょう、と前野さんはアドバイスします。
▼【高校生時代】中学より支出は減る!?
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高校時代は「授業料の無償化制度」があり、公立高校は月約4万円、私立高校は月約9万円(無償化対象世帯なら月5万円)と、中学校よりも家計の支出が減る傾向があります。
しかし高校生の場合、公立受験の結果次第で私立に行くことになった場合のため、前野さんは、公立・私立の2パターンの「ざっくり費用感」をつかんでおくと良いとアドバイスしています。
▼貯めどき(3)【大学生時代】積立てた児童手当の出番!
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大学進学にかかる費用は、公立か私立か、学部や専攻、また仕送りの必要があるか、奨学金を利用するか等で大きく変わってきます。さらに留学や大学院進学をする場合など本書には詳しく説明されています。
大学生となると、子ども本人もアルバイトでやりくりする力も付くのに加え、前述の通り、児童手当をすべて積み立てていれば、国立大学の進学に必要な費用は準備できている試算になります。大学入学後は「老後資金(を準備する)のラストスパート」と前野さんはアドバイスします。
Point:「貯めどき」は3回ある! 計画的に貯蓄を進めよう
「夫婦別財布」で将来の教育費は大丈夫!?
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また、前野さんが指摘するのが、共働きの家計管理の難しさです。「子どもの教育費に備えて家計を管理したいけど、夫(妻)側のお金の出入りがよくわからず、困っている」という家庭は、意外と少なくないのではないでしょうか。
▼夫婦の財布の管理が大事ってどういうこと?共働きが当たり前になった現代ですが、収入源が2つあることが支出入を把握する難しさを引き起こしており、家計管理において「ありがたくも悩ましい」状況を生んでいます。
本書では、そんな共働き家庭の家計管理方法を「支出分担派」「金額分担派」「一人分の収入で生活派」の3つに分類し、それぞれの特徴と改善策を紹介しています。
「教育費の不安にこたえる本」(日経BP)P125より
(1)【支出分担派】
夫は住居費と水道光熱費、妻は食費と教育費、などと支出を大まかに分けているこのタイプは、実は合計支出を把握しにくく、3タイプの中で一番、お金が貯まりにくい傾向あり!
このタイプは支出口座をそれぞれ1つずつに整理し、2つで管理していくのがおすすめ。「通帳を見るだけで確認できる状態を作ると、家計管理のストレスがなくなり節約効果大ですよ」と前野さんはアドバイスします。
(2)【金額分担派】
夫婦それぞれの収入額に応じて負担金額を決め、共通の家計口座に入れる管理方法。「それぞれ収入の6割を入れる」といった方法で、自由度が確保できて不公平感が少なく、ストレスが溜まりにくいのがメリット。
一方で、貯蓄が手薄になりがちなリスクも。しっかり「将来」に向けて積み立てられるような金額設定をすることが肝心です。
(3)【一人分の収入で生活派】
夫(妻)の収入で生活し、妻(夫)の収入は全て貯蓄に回す、といった家計管理の方法。一人分の収入が確実に貯まるので、もっとも貯蓄額が増えやすいタイプ。
ただし、家計の管理が夫婦のどちらかに偏りやすいリスクも。二人が納得できるよう「見える化」し、「年に1回、二人の財産を整理して振り替えましょう」と前野さんは提案しています。
Point:夫婦の財布をどう管理するかは、教育資金を考える上でも重要です!
iDeCoを活用し教育費を捻出する裏ワザ
さらに本書では、iDeCoを活用して教育費を捻出する裏ワザやNISAの活用法、生命保険や医療保険の考え方、住宅ローンとのバランスの取り方、ひとり親やフリーランスの場合など、一般論ではなく「わが家の教育資金」を考えるために必要な情報が懇切丁寧に紹介されています。
本書を読んで大学までの教育費を掴んでおき、ざっくりとわが家の貯蓄プランを立てれば、漠然とした不安は払拭できるはず。子どもの教育費について少しでも気になることがあるママは、この機会にぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか。
※本記事で紹介する情報は、2025年4月時点のものです。
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(外山ゆひら)