2025年04月23日15時39分 / 提供:マイナビニュース
カシオ計算機と子会社のLibryは4月10日、「学校向け新サービス発表会」を開催し、試験問題や補助教材を作成できる「Libryプリント作成ツール Q.Bank」を2026年3月より提供開始することを発表した。発表会では、Libry 代表取締役CEOの後藤巧氏らが登壇し、「Q.Bank」のコンセプトなどを説明した。
○教育現場の変革期に向けて「Q.Bank」を開発
Libryは中高生向けのデジタル教材プラットフォーム「Libry」を運営するスタートアップ企業。教科書会社を含む19の出版社と提携し、理数科目を中心に教科書や問題集、参考書をデジタル化することで、生徒一人ひとりの学習履歴に基づいた個別最適化学習を可能にしている。現在、「Libry」は日本全国700超の高校に導入されているそうで、この数は10校に1校以上の割合に当たる。
そんな教科書・問題集に強いLibryと、計算機能や辞書・参考書に強いカシオ計算機が手を組み、Libryは2024年5月にカシオの子会社となった。今回の「Q.Bank」は同社がグループ入りして初めての共同事業となる。
現在、教育現場では「GIGAスクール構想」やICT化が進む。2月には文部科学省が2030年から正式な教科書としてデジタル教科書を採用する方針を掲げるなど、学びはテクノロジーやAIを前提にした社会を見据え、大きな変革期を迎えている。
そんな時代背景から、このたび出版社を横断して自由に問題を選んで編集できるプリント作成ツール「Q.Bank」を開発。名称の「Q」はQuestionの「Q」を意味する。
Libryの後藤氏は、「Q.Bankのコンセプトはオープン。子どもたちにより良い学習環境を提供するために、日本中の先生や様々な企業が力を合わせる体制が必要です」と言う。
そのためQ.Bankでは複数の出版社の提供により巨大な問題データベースを作成。そこから自由に問題を選んで編集できるなど、個別学習に最適な学びができるようになっており、先生の働き方改革にも貢献する。また先生がイチから作成したオリジナルの問題については、先生同士でシェアできるなど、学校や地域の垣根を越えて連携できる取り組みも行う。
問題提供を行う出版社は実教出版/新興出版社啓林館/第一学習社/東京書籍の4社で、教科書を含む200冊以上の教材をデータベース化し、クラウド上で選択・編集できるようにする。複数の出版社の問題が横断的に利用できるプリント作成ツールは「Q.Bank」が初めてとのこと。サービス開始時に収録される問題数は8万問を超える予定で、その後も継続的に問題が追加される。
学校現場では今でも紙のプリントを配布するところが多いことから、作成後は紙で印刷することを前提とした造り。だが将来的には「Q.Bank」で作成した問題を「Libry」の教員用ツール「Libry for Teacher」に連携させ、そのまま生徒にオンライン教材として配信していくことも視野に入れる。
Q.Bankの画面イメージ(画像は開発中のもの)
○ICT学習アプリで培った知見を「Q.Bank」に投入
カシオ計算機の教育事業は同社の売上高の約23%を占めており、電卓や関数電卓を含む数学ツールは世界年間2,200万台を販売。電子辞書などの語学ツールは日本で20年連続販売台数No.1の実績を誇る。今では世界100カ国以上の教育現場に学びのテクノロジーを提供しており、生徒用学習ツールのNo.1メーカーとして世界の教育にも貢献している。
教育事業のブランドステートメントは「Boost Your Curiosity」。日本語にすると、「『学び』の支援を行い、あなたの学びへの『好奇心』を高めます」という意味だ。カシオ計算機 教育BU 事業部長の佐藤智昭氏は、「我々の製品やアプリを通じて、好奇心を持って学んでもらえる。子どもたちの夢を叶える支援として、こんなに嬉しい世界はありません」と語る。
教育商品の開発では、開発者が世界の教育現場に出向き、先生と直接対話し、徹底的に議論を行うなど、こだわった商品作りがモットー。その知見やノウハウをICT学習アプリ「ClassPad.net」に組み込み、2018年より数学ツールとして提供している。「ClassPad.net」は現在は全教科に対応しており、ユーザー数は世界で約40万人にも及ぶ。
今回の「Q.Bank」の事業にも、ClassPad.netで培った知見を投入しており、数学や理科の問題作成や編集が直感的にできる数式エディタを搭載する。「極めて使い勝手のいい数学ツールである数式エディタを準備できたと自負しています」と佐藤氏は言う。
今後は「ClassPad.net」に実装済みのグラフや図形の作図も含めて、自由に作問できる機能を「Q.Bank」にも搭載する予定。将来的にはコンピュータベースのテストであるCBTにも対応できるツールの開発を行なうなど、未来に向けた対応を予定している。
「Q.Bank」は前述のとおり、2026年3月に提供開始を予定しており、その後に提携出版社の拡大や科目や問題の拡充を行っていくという。佐藤氏は「今後のLibryとカシオ計算機の教育商品の進化にご期待ください」と、発表会を締め括った。
綿谷禎子 わたたにさちこ 情報誌の編集部から編集プロダクションを経てフリーランスのライターに。現在は小学館発行のビジネス情報誌「DIME」を中心に、企業のオウンドメディアや情報サイトなどで幅広く執筆。生活情報サイト「All About」のガイドも務める。自称、キャッシュレスクイーン。スマホ決済や電子マネー、クレジットカード、ポイント、通信費節約などのジャンルのほか、趣味の文具や手帳の記事も手がける。 この著者の記事一覧はこちら