2025年04月14日10時45分 / 提供:マイナビニュース
画像生成AIが登場した時「これで漫画家やイラストレーターはいらなくなる」と真っ先に言われたが、今思えば格付けチェックが始まった時点で「悲報!今年すでに18時間終了」と騒ぐぐらい早計であった。
確かに商業的にもAIが生成したと思しき画像を目にすることは増えたが、漫画業界にAIが食い込んできているかというと、そうでもなく、少なくとも私の連載が終わった後にAI作の巨弾108ページ新連載がはじまったという現象はまだない。
しかしAIに仕事を奪われるのではないかという危惧と同時に、逆にAIが背景を描いてくれたりとアシスタント業務を担ってくれるのではないか、という期待もあった。
だが現時点では、相変わらず人間が手作業でやっている部分が多いというのが現状であり、「どうした早く奪いに来いよ」と、大して守っているわけではない童貞の守護神みたいになっている。
それ以前に、今のところAIは画業の脅威になり得る敵として忌諱される傾向にある。
これは単純に己の仕事が奪われるという危機感からではなく、自分の絵がAIの学習元にされてしまうという権利侵害や、倫理的問題によるところも大きく、私が安易にAIに描かせればいいんじゃないかと言ってしまうのも、その問題を正しく理解していないからであり、いかにAIがどれだけ危険で己の権利を脅かすものか説明されれば手の平トリプルアクセルすると思う。
心配しなくても自分の絵ごときがAIの学習元にされることはないかもしれないし、逆にせっかく伸びたAIの学力を下げる獅子身中の虫として大暴れできる可能性を秘めている。
だが「AI学習禁止」の処置をしてあるイラストなどに対し「誰もお前の絵なんかで学習しねえよ」と嘲笑してくるのはAIではなく人間である。このAI論争もよく見ればAI対人間ではなく、AI賛成の人間対AI反対の人間なのだ。
しかし、今後あらゆる技術面でAIが人間を上回ったとしても、性格の悪さだけは人間を超越できないだろう、という頼もしさを感じるし、この邪悪さがない時点で「創作」はAIの得意分野ではないと言える。
このように思ったよりは奪われてないように見える我々の仕事だが、それでもグラフィックやシナリオの仕事は一部AIが担うようになっており、創作業は比較的奪われ傾向にある分野なのだ。
それよりも、真っ先にAIに奪われるだろうと言われていたのに全然奪われていない職業も多数存在する。
実際、10年前に大手シンクタンクから出された「この仕事はAIに奪われる」という予想が現在大ハズレしていると話題になっていたそうだ。
○たぶん最終的に人類はみんな電池とかになる
10年前に、この仕事はAIに代替えされると予想されていた職業は、介護職、保育士などだが、現在それらは「AIに代替えは難しい職業」とされており、逆にAIには無理だろうと言われていた、グラフィックやシナリオ、プログラミングの方がAIに移行しつつあるという。
今見れば、介護や保育と言った物理労働かつ、頭と性格が悪すぎて逆にAIを超える行動をとりがちな対人間の仕事より、グラフィックやプログラムのようなデータ労働の方がどう見えてもAIに向いてそうなのだが、この現状と真逆とも言える予想はクリエイター業が難しいというより、介護や保育業が軽く見られていたせいで起こったのかもしれない。
「AIに代替えは難しい」というのは単純に「技術的にAIには無理」という意味でもない。
商業的にAIを使うとしたら「AIを使った方が利益がでる」の状態にまでならなければAIを使う意味がないからだ。
私が通っているスーパーは客自らが専用端末を持って商品のバーコードを読みながら会計する万引き放題システムなのだが、実は素人目にはわからない防犯システムがある、もしくは「万引き額よりもその分削減できる人件費の方が安いからOK」という、トータルで勝てれば試合内容は問わない戦法、なのかもしれない。
よって技術的にはAIに可能だったとしても、AI使用コストで赤字になるような仕事は、AIにさせられないのである。AIをつくるのにも使うのにも金がかかるのである。
「AIに代替え不可」というのは「この仕事はまだ人間様にしか無理」という意味ではなく、「まだ人間を使った方が安い」という意味の場合もあるということだ。
10年前に出されたこの予想はAIに代替えされる職業としては大ハズレだったかもしれないが、「労働に対し給与が安すぎる職業選抜」としてはノストラダムス級の慧眼であったのかもしれない。実際介護職や保育士などは現在「不可欠かつ重労働なのに給与が安すぎる職業」として必ず筆頭に挙がってきている。
つまり「AIに奪われる仕事」というのは隠語であり、正確には「労働と対価が見合ってない仕事ランキング」と言えるので、ある意味職業選択や労働対価見直しの参考にはなっている。
そもそも、その仕事AIに奪われるからと不安を煽るような情報を鵜呑みにしすぎてもいけない。
不安を煽る理由は単純に、人の顔が作画楳図かずおになる様を見たいだけの場合もあるが、不安を煽った方が不安を払拭する何かを売りつけやすいからでもある。
ただ、無駄な不安は不要だが、危機感というのも大事である。
AIに漫画は無理と言っている間に私の連載は終わり、次週からチャット沢GPT先生の新連載が始まってしまうのかもしれない。