2025年04月11日17時20分 / 提供:マイナビニュース
大手スポーツ用品メーカーのアシックスは、運動・スポーツに関わる社会課題に取り組み、より多くの⼈々の⼼⾝の健康に貢献することを⽬的に、⼀般財団法⼈ASICS Foundation(アシックスファンデーション)を4月1日に設⽴した。4⽉9⽇には本財団の設⽴記者発表会が都内で開催。ASICS Foundation理事を務める元プロ卓球選⼿の石川佳純さんと、元パラ水泳選手の⼀ノ瀬メイさんが登壇した。
○財団設立の背景にあるアシックスの創業哲学
"健全な身体に健全な精神があれかし"との創業哲学のもと、スポーツを通じて人々の健康と、より良い社会と実現に貢献することを創業以来の使命としてきたアシックス。
本会の冒頭、ASICS Foundation創設者でアシックス代表取締役会⻑・CEOの廣⽥康⼈氏は、その創業哲学のさらなる実現のため、ASICS Foundationを設立した経緯を説明した。
「先日の株主総会においても財団設立、及び活動への支援につきまして、多くの株主の皆様からご賛同いただき、正式に承認可決されたことをご報告させていただきます。この場をお借りしてアシックスは新たな取り組みをご報告できること、たいへん嬉しく思います。
我々は長期ビジョン『VISION2030』のもと、誰もが一生涯、運動・スポーツを通じて心と体が健康でいられる世界の実現に寄与することを掲げています。しかしながら現実にはさまざまな事情により、そうした機会を得られない方々が今もなお数多くいらっしゃいます。そういった方々にも前向きな力を届けたいという思いがASICS Foundation設立の出発点です」(廣⽥氏)
これまでも製品・サービス、イベントなどを通じてスポーツの魅力を広く届けきたとする一方、事業活動の枠組みだけではアプローチできない領域があることも同時に感じてきたという。
「経済的な理由や障がいの有無、ライフステージの違いなど、さまざまな背景を持つ人々にこそ、運動・スポーツを通じて少しでも気持ちが前向きになる経験や機会を届けたい。その新たな取り組みとして当財団を設立いたしました」(廣⽥氏)
ASICS Foundation理事⻑でアシックス常務執⾏役員の甲⽥知⼦氏は、財団の活動内容について紹介。初年度は助成事業を主な活動とし、社会的・経済的困窮者のスポーツ活動を促進するプログラムの実施団体などに対して、助成金を給付するという。
「スポーツ文化自体が未成熟な地域で、スポーツへのアクセスできない方々や社会的な繋がりが持てていない方々などを対象に、その障壁を取り除くための支援をしてきたいと考えています」(甲⽥氏)
また、よりグローバルな視点で人々の運動・スポーツへの参加機会を向上させ、豊かなスポーツ文化を創造していくことを目指し、助成事業に取り組んでいくとも語った。
「当面は日本国内の障がい者、ベトナム・インドネシア・インドなどでは青少年や女性をターゲットとする取り組みを予定しています。地域に関しては、我々が事業所や生産拠点を持つ国・地域から優先的にまずは取り組むこととしました。
助成を通じ、ソフト面ではスポーツ大会やイベントといったプログラムの実施と指導者の育成。実際の活動にあたって必要なグラウンドやスポーツ施設といった場の整備、スポーツ用品の提供といったハード面での取り組みを両輪で行なっていきます」(甲⽥氏)
○一ノ瀬メイが語った「スポーツの価値」
その後はASICS Foundation理事を務める⽯川佳純さんと⼀ノ瀬メイさんが登壇し、甲⽥氏との3名によるトークセッションが行われた。
現役引退後、「47都道府県サンクスツアー」で全国各地を訪ね、卓球の魅力やスポーツの楽しさを伝えている元プロ卓球選手の石川さん。そこで多くの子どもたちと触れ合いを通じて、スポーツの力の大きさを改めて実感していると語った。
「最初はみんな緊張していても、卓球のゲームなどを通じて最後はとても盛り上がってくれて、私自身のライフワークにもなっています。私は両親が卓球をやっていてスポーツに触れるきっかけには恵まれた環境でしたが、スポーツの魅力をたくさんの方と一緒に経験していけたらといった思いもあり、こうした活動を始めました。スポーツで人生が豊かになるきっかけをASICS Foundationの活動でも届けていきたいです」(石川さん)
今年2月にアシックスのブランドアンバサダーに就任し、モデルなど幅広い分野で活動している一ノ瀬さんも、障がい者スポーツの普及のための活動などを精力的に続けている。
「私が一番に感じているスポーツの価値は、自分自身との繋がりや社会との繋がりができることだと思います。私は13歳から日本代表で活動し、日々、目標に向かって自分の弱みや強みと向き合うなかで、自分のことをたくさん知ることができました。そうした経験がスポーツ以外の分野でも自信を与えてくれたように思います。競技スポーツはもちろん、人生を豊かにしてくれる自分のためのスポーツを同時に広げていきたいです」(一ノ瀬さん)
パラスポーツに出会い、日々のいろんな苦労などをシェアできるコミュニティや先輩と繋がりを得たことも自身の人生を豊かにしてくれたという一ノ瀬さん。アスリートとして競技に打ち込む上では、さまざまな障壁も同時に感じてきたと振り返った。
「スイミングスクールになかなか入れなかったり、世界ランキングが20番以内で日本記録を5つ持っていても大学でスポーツ推薦をなかなかもらえなかったり。競技に専念する環境を整える部分ではハードルを感じてきました。国・地域によって文化的背景や障壁は変わってくると思うので、これから財団の活動でその一つひとつを学びながら、解決策を一緒に考えていきたいです」(一ノ瀬さん)
ASICS Foundationでは、評議と理事による議論をもとにガイドラインを設定し、5月中旬には助成先の公募を開始。7月・8月に現地視察などを行いながら、9月の理事会で助成先を確定して、10月から助成を開始する予定とのことだ。
伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら