2025年04月07日11時05分 / 提供:マイナビニュース
JTBは4月3日、2025年ゴールデンウィーク(4月25日~5月7日)の旅行動向見通しを発表した。調査は2025年3月6日~12日、全国15歳以上79歳までの男女10,000人を対象にインターネットで行われた。
○今年のGWのカレンダーと旅行傾向
2025年のGWは、カレンダーは、5月3日(土・祝)~6日(火・振)が4連休となっている。4月28日(月)を休みにすると、4月26日(土)~29日(火・祝)が4連休、さらに4月30日(水)、5月1日(木)、5月2日(金)を休みにすると、4月26日(土)~5月6日(火・振)が11連休になる。ここでは、2025年GW(4月25日~5月7日)の帰省を含めた旅行意向の詳細についてアンケートで聞いた。
GW期間中の旅行については、「行く("行く"と"たぶん行く"の合計)」と回答した人は調査時点で20.9%となり、前年(2024年4月25日~5月5日)と比べると5.6ポイントの減少となった。参考までに、期間が同じ2025年4月25日~5月5日では18.7%となった。
性年代別でみると、すべての世代で旅行意欲が前年よりも低下している。特に年齢の低い層ほど低下傾向が強く、男性で最も意欲の高い29歳以下は33.9%で前年から6.6ポイントの減少、女性で最も意欲の高い29歳以下は31.5%で8.2ポイントの減少となった。
旅行に行かない理由としては、「GWは混雑するから(45.9%)」が最も多いものの、前年から1.3ポイント減少した。次いで、「GWは旅行費用が高いから(34.6%)」、「家計に余裕がないので(25.9%)」と経済的な理由が続いた。
GWに旅行へ行くと答えた本調査対象者1,846人に対して、今年のGWの旅行に対する考え方を聞いた。旅行先については、「昨年のGWより遠方へ旅行したい(15.4%)」が前年よりも1.5ポイント増加しており、「昨年のGWより近場の旅行に行きたい(9.3%)」の増加幅(1.1ポイント)を上回っている。一方、旅行日数については、「昨年のGWより旅行日数を増やす」が17.5%で「昨年のGWより旅行日数を減らす(10.4%)」を上回ったものの、その差は前年よりも縮小している。旅行傾向の違いもある程度みられる。なお、「昨年より旅行にお金をかけて贅沢に過ごす予定(12.0%)」と「昨年より旅行にお金をかけず質素に過ごす予定(11.4%)」は拮抗している。
○国内旅行の動向
国内旅行者数は2,290万人(対前年92.8%)、国内旅行平均費用は36,600円(同101.4%)、総国内旅行消費額は8,381億円(同94.0%)。旅行者数は物価高騰や家計の事情、混雑を避けて旅行時期をずらす傾向もあり、前年からやや減少となった。また平均旅行費用は続く物価高の影響を踏まえ、前年並みとなる。
今年のGWの旅行に関するアンケート調査において、本調査回答者(1,846人)のうち旅行先を「日本国内」と答えた1,733人の旅行の傾向を分析した。
旅行出発日のピークは「5月3日(土・祝)(19.6%)」、次いで「4月26日(土)(11.6%)」となっており、前半の飛び石連休と後半の4連休の2つのピークがみられる。
旅行日数は、全体では「1泊2日(33.5%)」が最も多いものの前年から4.3ポイントの減少、次いで「2泊3日(32.7%)」は1.2ポイントの減少となった。一方、「3泊4日(19.8%)」は2.7ポイントの増加となるなど、3泊以上は合計で5.5ポイントの増加となっている。
旅行目的で最も多いのは「リラックスする、のんびりする(28.7%)」、次いで「家族と過ごす(28.5%)」、「食事、地域の味覚を味わう(27.5%)」となったが、いずれも減少している。最も増加したものは「趣味を楽しむ・極める(15.6%)」で、前年より2.4ポイント増加している。
旅行先は「関東(22.3%)」が最も多く、前年から2.2ポイント増加、次いで「近畿(17.1%)」、「九州(9.7%)」となった。また2024年能登半島地震の影響もあってか、前年1.1ポイント減少していた「北陸(5.1%)」は1.2ポイントの増加となった。
その旅先を選んだ理由として、「行きたい場所があるので(43.7%)」が最も多く、次いで「自家用車やレンタカーで行ける場所なので(19.0%)」、「帰省先なので(17.0%)」となった。なお、「観光客などで混雑してなさそうだから(7.9%)」は前年より0.9ポイント増加、一昨年からは5.4ポイント増加しており、オーバーツーリズムへの意識が高まる傾向がみられる。
居住地別に旅行先を見ると、旅行先と居住地が同じ地方である域内旅行の割合は、「北海道」では60%を超えている一方で、それ以外の地域では50%以下となっており、旅行先の分散化傾向がうかがえる。また前年と比較すると、域内旅行の割合は近畿地方以外のすべての地域で減少、特に東北地方、九州地方では大幅減となっており、隣接する地域へ行く傾向がみられる。
同行者については、「子供づれ(中学生まで)の家族旅行(23.0%)」が最も多く、次いで「夫婦のみ(19.7%)」、「ひとり(16.9%)」となった。「ひとり」は、新型コロナの影響を受けていた2021年の19.5%をピークに減少傾向だったが、今年は前年より1.3ポイント増加した。
1人当たりの旅行費用は、「2万円~3万円未満(18.6%)」が最も多く、次いで「1万円~2万円未満(18.3%)」、「4万円~5万円未満(17.1%)」となったが、いずれも前年から減少している。5万円以上の合計は前年に比べて4.6ポイントの増加となり、全体的に費用は増加傾向といえる。
利用交通機関は、「自家用車(50.8%)」が最も多いものの、4.5ポイントの減少となった。次いで「JR新幹線(26.7%)」、「JR在来線・私鉄(21.9%)」となった。カテゴリーごとに見ると、「鉄道」は5.1ポイントの増加、「航空機」は0.4ポイントの増加、また自家用車が減少した一方で「レンタカー(12.2%)」は2.8ポイント増加するなど、旅行の長期化に伴い、複数の交通機関を利用する様子がうかがえる。
利用宿泊施設は「ホテル(62.2%)」が最も多く、次いで「旅館(24.7%)」、「実家・親族の家(18.7%)」となった。割合は小さいものの、「キャンプ場・キャンピングカーなど、アウトドアに関する宿泊(6.9%)」は2.2ポイント増加しており、増加率が最も高くなった。
出かける場所として気になっているところでは、「自然が楽しめる場所(国立公園や花畑など)(24.5%)」が最も多く、次いで「自然が楽しめる場所(登山やアウトドアなど)(14.8%)」となった。JTBの国内旅行における人気方面は、東京ディズニーリゾートを含む東京、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンを含む関西、ジブリパークのある東海などテーマパークとなっている。また、沖縄など航空機利用の長距離方面も好調だという。
○海外旅行の動向
海外旅行者数は55万人(対前年110.0%、対19年54.8%)と推計した。国際線航空便がほぼ新型コロナ前の輸送容量に回復したことや、一部の層の収入増、需要促進のためのキャンペーンなどの影響により、前年を上回る見込みだ。なお、2019年のGWは今上天皇御即位に伴い、4月27日~5月6日が10連休となっていたため、例年に比べ海外旅行が活況を呈していた。海外旅行平均費用は268,000円(同99.6%)、総海外旅行消費額は1,474億円(同109.6%)となった。
本調査対象者1,846人のうち、今年のGWの旅行先を「海外」と答えた人は113人(6.1%)となった。出発日のピークは、「4月24日(木)以前(15.0%)」、次いで「4月25日(金)(13.3%)」、「4月26日(土)(10.6%)」と「5月3日(土・祝)(10.6%)」が同率となっている。
旅行日数は「3泊4日(29.2%)」が最も多く前年より2.1ポイント増加、次いで「4泊5日(13.3%)」が3.9ポイント増加、「2泊3日(14.2%)」と「5泊6日(14.2%)」が同率となった。前年と比較すると3泊が中心で、短期も長期も減少している。また旅行費用は「10万円~15万円未満(15.9%)」が最も多く、次いで「7万円~10万円未満(15.0%)」、「15万円~20万円未満(14.2%)」となった。行先は上位から、「韓国(25.7%)」が最も多く、前年から4.8ポイント増加した。次いで、「台湾(14.2%)」、「東南アジア(10.6%)」、「ハワイ(9.7%)」、「ヨーロッパ(9.7%)」となった。比較的近距離で安価な旅行先が人気である一方で、 遠距離のニーズも一定数あるといえそうだ。
JTBの海外旅行における人気方面は、韓国、台湾、ハワイに加えヨーロッパ、特にイタリア、スペイン・ポルトガル、フランスとなっている。
また、このGWに旅行に行かない人も含めた事前調査対象者に、今後の海外旅行に対する意向を聞いた。海外旅行の行先別の実施時期をみると、「すぐに行きたい」という回答は「ハワイ(10.1%)」が最も多く、次いで「ヨーロッパ(9.8%)」、「オーストラリア・ニュージーランド(8.4%)」となった。
○旅行やレジャー消費をとりまく経済環境と生活者意識
日本経済は、新たな局面に突入し不安定さが一層増している国際情勢、国内外における物価や金利の継続的な上昇傾向、先が見通しにくい為替相場などの影響を受け、極めて不透明な状態が続いている。日経平均株価は、年末年始に一時的に4万円台に乗せたものの、その後は下降傾向を示しており、3万円台後半で推移している。月例経済報告では、2024年8月に景気の基調判断が「一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」に引き上げられて以降、2025年3月まで据え置かれている。
個人消費についても、2024年11月に「一部に足踏みが残るものの、持ち直しの動きがみられる」となって以降、判断が維持されている。景気の先行きについては、緩やかな回復が続くことが期待される一方で、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクや、物価上昇、アメリカの政策動向、中東情勢、金融資本市場の変動等の影響が懸念されている。
物価に関して、主な品目の消費者物価指数を見ると、ここ最近は「生鮮食品」の上昇が著しくなるなど、食品全般への影響が大きくなっている。このほかの品目も引き続き上昇傾向にあり、「交通・通信」も2020年基準のライン(100)に近づきつつある。給与と消費動向については、実質賃金が2024年末にプラスとなる傾向がみられたものの、2025年1月はマイナスとなり、物価高のあおりを受けている。日本銀行の「生活意識に関するアンケート調査」の「現在の暮らし向き」については、2024年は「ゆとりが出てきた」と「ゆとりがなくなってきた」が一進一退を繰り返す状況となった。
同社が実施したアンケートで、今の自身の生活とGWの旅行について当てはまる状況を聞いたところ、「仕事や会社の業績が良化し収入が増えそうだ(7.2%)」「家計に余裕がある(4.1%)」はいずれも前年比マイナスとなり、家計の厳しい状況がうかがえる。その影響もあってか、「いつもより生活費を節約している(20.2%)」、「趣味や旅行などにかける費用を減らしている(18.1%)」、「先行きがわからないので大きな支出は控えておきたい(18.1%)」はいずれも前年から増加しており、節約志向が明確に示される結果となった。なお、今年のGWは「昨年より長く休みが取れそうだ(4.9%)」、「昨年より休みが取れそうにない(8.4%)」いずれも微増となっている。
「今後1年間の旅行に対する意識」については、「情勢や治安、衛生面の不安の少ない地域であれば、旅行をしたい(18.5%)」が「情勢や治安、衛生面などに不安があるので、旅行は行きたくない(5.9%)」を上回っており、積極的な姿勢がみられる。その一方で、「旅行先を選ぶ際に、混雑していそうな人気の旅行先は避けるようにしたい(17.4%)」は「旅行先を選ぶ際に、混雑していても人気の旅行先を優先させたい(3.8%)」を大きく上回っており、混雑を避ける傾向にある。
また、「サポートなどがなくてもいいので、自分自身で好きなように動きたい(28.7%)」、「サポートなどがなくてもいいので、とにかく低価格な旅行(個人手配を含む)を行いたい(13.2%)」の割合は前年より減少しているものの依然として高く、自由度の高い旅行や低価格な旅行を求める傾向は強いままといえる。
「今後1年間の旅行の支出に対する意向」については、「同程度(合算、47.2%)」、「支出を増やしたい(12.2%)」がいずれも前年より減少、「支出を減らしたい(40.6%)」が増加となっており、旅行予算の厳しさがうかがえる。
最後に、「今年のGWに旅行に行く」と答えた本調査対象者に対し、旅行費用の比重(支出において重視する項目)を聞いたところ、「飲食(30.6%)」が最も多く、次いで「宿泊施設(17.7%)」、「体験・アクティビティ(海や山などの自然体験・スポーツ)(6.9%)」、「土産品購入(6.9%)」の順となった。一方、「特に重視するものはない(15.2%)」との意見も多く、特段のこだわりを持たない人もある程度みられる。性年代別にみると、「飲食」「宿泊施設」は年配層、「体験・アクティビティ(海や山などの自然体験・スポーツ)」は若年層の割合が高くなっていいる。「土産品購入」は女性の割合が高くなっている。