2025年04月01日10時30分 / 提供:マイナビニュース
2025年4月と10月に施行される「育児・介護休業法」の改正。これにより、育児・介護と仕事の両立をサポートする制度がさらに充実します。子どもの看護休暇の対象が拡大されるほか、柔軟な働き方の導入が企業に義務づけられるなど、改正によって、より働きやすい環境が整えられていくでしょう。
「改正によって何が変わるの?」 「どのような働き方ができるの?」といった疑問にお答えするために、本記事では、4月1日に改正するポイントをわかりやすく解説し、育児・介護休業法を活用した働き方の事例をご紹介します。
■育児・介護休業法の改正ポイント
育児・介護休業法改正が4月から段階的に実施されます。本記事では4月の改正について、主要なポイントを解説します。
子の看護休暇の見直し
子の看護休暇とは、子を養育する労働者が申し出たときに1年間に5日間(子が2人以上の場合は10日間)与えられるものです。これまで、対象となる子どもは「小学校就学前の子ども」でしたが、改正により「小学校3年生修了まで」に拡大されます。
また、取得理由も「病気やケガの看病」「予防接種・健康診断」に加えて、「感染症に伴う学級閉鎖」「入園・卒園式の付き添い」も対象となりました。
さらに、子の看護休暇の対象から除外できる労働者は、「(1) 継続雇用期間6か月未満」、「(2) 週の所定労働日数が2日以下」の労働者でしたが、4月から(1)が撤廃されます。つまり継続雇用期間6か月未満の労働者でも子の看護等休暇を取得できるようになります。
所定外労働の制限の対象拡大
現在は「3歳未満の子どもを養育する労働者」が残業免除の対象ですが、改正後は「小学校就学前の子どもを養育する労働者」まで拡大されます。
短時間勤務の代替措置にテレワークを追加
3歳未満の子どもを養育する労働者が、短時間勤務制度を利用することができない場合の代替措置に、テレワークが追加されます。また、3歳未満の子どもを養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。
育児休業取得状況の公表義務の拡大
育児休業の取得状況については、現在「従業員1,000人以上の企業」に公表義務がありますが、改正により「従業員300人超の企業」まで対象が広がります。
介護離職防止のための措置の義務化
介護と仕事の両立を支援するための制度が強化されます。企業は、介護をする従業員が働き続けられるよう、次のような取り組みが求められます。
・介護離職防止のための雇用環境整備
・介護離職防止のための個別の周知・意向確認
・介護のためのテレワーク導入
■施行スケジュール
育児・介護休業法の改正は、2段階で施行されます。
・2025年4月1日施行
→子の看護休暇の拡大、所定外労働の制限対象の拡大など
・2025年10月1日施行
→柔軟な働き方を実現するための措置など
■育児・介護休業法改正で働き方はどう変わる?
今回の改正によってどのような働き方ができるのか、現行の制度も含めて、子育て世帯での利用事例をご紹介します。
※育児と仕事の両立方法は多様であり、あくまでも一例です。
○子どもの年齢ごとの利用方法
【0歳~1歳】
<妻>
・産後8週間まで「産前産後休業」を取得
・1歳まで「育児休業」を取得
<夫>
・産後8週間まで「産後パパ休業」を2回に分けて取得
・1歳まで「育児休業」を2回に分けて取得
・疾病時、定期健診、予防接種などに「子の看護休暇」を利用
【1歳~3歳】
<妻>
・復職前面談をして職場復帰
・「所定外労働の免除」で働きだす(1歳半まで)
・「短時間勤務」に切り替える(1歳半~3歳)
・疾病時、定期健診、予防接種などに「子の看護休暇」を利用
<夫>
・妻の職場復帰にあわせて「短時間勤務」を利用(1歳半まで)
・「所定外労働の免除」に切り替える(1歳半~3歳)
・疾病時、定期健診、予防接種などに「子の看護休暇」を利用
【3歳~小学校就学前】
<妻>
・「フレックスタイム制」を利用し、送迎時間にあわせて勤務時間を調整
・卒園式に「子の看護休暇」を利用
<夫>
・通常勤務に戻り、「テレワーク制度」を活用
・卒園式に「子の看護休暇」を利用
【小学校就学後~小学校低学年】
<妻・夫>
・入学式に「子の看護休暇」を利用
・「フレックスタイム」や「テレワーク」を引き続き利用(※)
・長期休暇(夏休み・冬休み)に対応するために「学童保育」を利用
※小学校就学後は事業主の義務ではなくなりますが、事業主には引き続き柔軟な対応が求められます
■おわりに
育児・介護休業法の改正によって、育児中、介護中の労働者が、離職することなく柔軟に働くことができる制度が盛り込まれました。働き方のバリエーションが増えることで、育児・介護と仕事の両立がしやすくなります。
一方、企業にはこれらの制度が利用しやすい環境づくりが求められます。それぞれの状況にあわせた柔軟な働き方が実現するまでには、もう少し時間がかかりそうですが、社会や企業、働く人々の意識は徐々に変化していくでしょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら