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味の素が「音でみる」レシピサイトを開始 - 視覚障害者が開発に協力、料理する楽しさ伝える

2025年02月21日15時51分 / 提供:マイナビニュース

味の素は「音でみるレシピ SOUNDFUL RECIPE」を2月19日に公開した。これに伴い、メディア向け発表会・体験会が開催され、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティに勤務し、大の料理好きという全盲のみきさんらが登壇。「SOUNDFUL RECIPE」の特徴や、五感と想像力をはたらかせて料理をすることの魅力を語った。

○見えない人も見える人も、さらに料理を楽しめる

視覚障害者も晴眼者(視覚に障害のない人)も、より料理を楽しめるレシピサイトを目指して、このほどローンチされたSOUNDFUL RECIPE。味の素のマーケティングデザインセンター コミュニケーションデザイン部の赤坂由美子氏は発表会の冒頭、その開発背景について説明した。

「日本に暮らす視覚に障害のある全盲者の中には、晴眼者と同様に料理を日常的に行う方も多くいらっしゃいます。普段、そうした方々はスマホなどの音声読み上げ機能を使い、WEBサイトのテキスト情報を音声で聞き取っています。本プロジェクトは、そんな『視覚障害者の方々にとって、既存のレシピサイトはやさしい設計になっているのか?』という問いから始まりました」(赤坂氏)。

1万2,000件(※2025年2月時点)を超えるレシピをWEB上で公開している味の素は、一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティの協力のもと、2024年秋にリサーチを開始。視覚障害者との対話を通じ、レシピサイトにおけるアクセシビリティの課題を洗い出した。

その中で視覚を使わずに料理をおいしく作るコツが、「音」に秘められていることを発見したという。

「写真や動画など視覚情報に依存した内容で構成されたレシピは、視覚障害者にとっては不便であること。また、料理の見栄えや彩りも意識されていること、できるだけシンプルなサイトを必要とされていることなど、さまざまなご意見を頂戴しました。

そして、本日ゲストでもある全盲のみきさんが研ぎ澄ませて料理する様子を実際に見学させていただきました。率直にとても驚いたのと同時に、視覚以外の感覚を研ぎ澄ませることで普段のお料理がもっと楽しくなるということを、多くの方々にお届けしたいと思います」(赤坂氏)。
○音声読み上げを前提としたUI/UX設計

SOUNDFUL RECIPEには大きく、「音声読み上げ機能に最適化されたUIUX設計」「視覚に依存する表現の変換」「料理大好きな全盲のみきさんによる音声コラム」の3つの特徴があるという。

「スマホなどの音声読み上げの妨げになってしまう画像や映像を排除し、必要な情報に最短でアクセスできる、テキストベースのシンプルなレシピサイトにしました。また、読み間違いが発生してしまう表記は正しく読み上げられるように変換しています」(赤坂氏)。

さらに、一般的なレシピに多く含まれている「きつね色になったら」「焦げ目がついたら」といった視覚情報に依存した表現を、ビジュアルに頼らずに理解できる表現に変換。結果的に晴眼者にもわかりやすいレシピへとアップデートされたという。

サイトは弱視の人にもやさしい、ダークトーンのシンプルなデザインにしたほか、一部のレシピは写真を見なくても理解できる盛り付け方法も紹介。料理のおいしさが伝わる工夫を随所に施している。

「3つ目の特徴は、みきさんに解説いただき、料理のおいしさを左右する『音』の変化に関するサウンドコラムを収録している点です。音に着目しておいしい料理を作るためのコツを、サイト内の現在10レシピで紹介しています」(赤坂氏)。

視覚を使わずに料理を長年続けてきたみきさん独自の視点によるサウンドコラムでは、「天ぷらがおいしく揚がった時の音」「シチューがちょうどよく煮詰まったときの音」など、つくり方のポイントを紹介する。

「晴眼者の皆さんにとっても新鮮な気づきや発見のある情報が満載のコラムです。料理の楽しさを一人でも多くの人に届けるために、障害の有無や個々人のできる/できないを超え、一人でも多くの方が料理の楽しさに触れられる体験をお届けしたいと思います」(赤坂氏)。
○視覚以外の感覚を研ぎ澄ませる料理術

プレゼン後は、ソーシャルエンターテイメント・プログラムを提供する一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事の志村季世恵さん、同団体に勤める料理大好きな全盲のみきさんが登壇。

SOUNDFUL RECIPEの特徴について、みきさんは「通常のレシピサイトには広告なども多く、いつの間にか他のレシピに飛んでしまうなど、迷子になることもあります。SOUNDFUL RECIPEはわかりやすくて、非常に使いやすいです」とトーク。

みきさんが野菜炒めを調理するデモンストレーションが実施された。みきさんは包丁で手際良くニンジンの皮むきと短冊切りを済ませ、熱したフライパンにニンニクと豚肉、野菜を投入。調味料で味付けして、軽快にフライパンを振り、最後はお皿へきれいに盛り付けた。

同じ種類の野菜でも火加減や火にかける時間は、切る際の水分や硬さの感触からおおよその見当をつけているそうだ。火の通り具合などは音や香り、菜箸などの調理器具から伝わる感覚などでわかるという。

「今日は皆さんの前で緊張しましたが、昔、父に「失敗からわかったことを発見して、成功につなげていくことが、いろんなことに取り組むことの楽しさだよ」と言われたことを、料理しながら思い出しました。(料理が苦手な方は)「失敗が怖い」とよく言いますが、自分が思ったものができなくても、別のレシピに応用して新しい料理ができることも料理の楽しさだと思います」とコメント。

今回のプロジェクトについて、「私たちは「火や包丁を扱うのは危なくないんですか?」というように、どうしても「できないこと」が注目されがちで、「できないこと」に対する素晴らしい支援もたくさんあります。でも、今回は「できること」に注目していただき、"よりお料理を楽しむ"という方向性になったということは、画期的で素敵なことだと思っています」と、改めて語っていた。

SOUNDFUL RECIPEはプロトタイプ版・第一弾として、「AJINOMOTO PARK」に掲載されているレシピのうち100レシピを変換し、3月中に公開する(※2月19日時点ではサウンドコラム付きレシピを含む30レシピを公開)。

伊藤綾 いとうりょう 1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催 @tsuitachiii この著者の記事一覧はこちら

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