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中国版スターリンク「千帆星座」、最初の衛星が打ち上げ成功 - 将来は1万5000機に

2024年08月26日10時02分 / 提供:マイナビニュース

中国は2024年8月6日、衛星インターネット「千帆星座」の、最初の衛星18機の打ち上げに成功した。

今後、2027年までに地球低軌道に1296機、さらに将来的には1万5000機もの衛星を配備し、全世界にインターネット・サービスを提供することを目指している。

衛星インターネット「千帆星座」

千帆星座は、上海市にある上海垣信衛星科技が開発している衛星インターネット・システムである。米宇宙企業スペースXが運用している「スターリンク(Starlink)」と同じように、地球低軌道に多数の衛星を配備する「コンステレーション」によって、全世界にインターネットを提供することを目的としている。

上海垣信衛星科技は2018年3月に設立された企業で、「国際的、商業的な、衛星開発と衛星通信サービスのプロバイダーとなることを目指す」としている。

2021年には、上海市など長江デルタに面する9都市が共同で取り組むプロジェクト「長江デルタG60科学技術革新回廊」において、千帆星座計画が発表され、上海垣信衛星科技が運営者として選ばれた。

こうした経緯もあり、また上海垣信衛星科技は民間企業ではあるものの、上海市からの出資を受けていることもあって、千帆星座は半官半民のプロジェクトという要素が強い。

千帆星座は2段階に分けて構築される。まず第1段階では、2025年末までに高度約1000kmの軌道に648機の第1世代衛星を配備し、一部地域でのネットワーク・サービスを提供する。その後、2027年までに第2世代衛星を648機打ち上げ、全世界でのネットワーク・サービスを提供する。

この計 1296機の衛星は、36の軌道面にそれぞれ36機の衛星を投入する形でコンステレーションが構成される。

そして、続く第2段階では、第1段階よりも低い高度300~500kmの軌道に、最大1万5000機の衛星を打ち上げる。これにより、ネットワークが強化されるとともに、携帯電話やIoT機器へのブロードバンドおよびナローバンドの直接接続を提供できるようになるという。これにより、山や砂漠、海にいても、携帯電話があれば、切断の心配なく、いつでもインターネットにアクセスできるようになるとしている。

今回打ち上げられたのは、第1世代の衛星の、最初の18機にあたる。打ち上げには中国の国有企業、上海航天技術研究院の「長征六号甲」ロケットが使われた。

ミッション名は「千帆極軌01組」で、その名のとおり、高度800km×800km、軌道傾斜角89.0度の極軌道に投入されている。

衛星の開発は、中国科学院の傘下にある微小衛星革新研究院が担当した。衛星1機あたりの質量は約300kgで、スターリンクのように平べったい形をしており、積み重ねるようにしてロケットに搭載できる。これにより、打ち上げの準備作業や、打ち上げ時のロケットからの分離、展開を容易にしている。

太陽電池は一翼式で、推進システムにはクリプトンを推進剤とするホール・スラスターを搭載している。一般的に、電気推進エンジンの推進剤にはキセノンが用いられるが、高価なうえに入手が難しいという欠点がある。同研究院によると、クリプトンを使うことで、コストを10%~20%に削減することができたという。

通信機器はKu、Q、Vバンドに対応している。

設計寿命は7年が予定されている。また、衛星には自律的な状態管理とトラブルシューティング機能があり、さらに回復不可能な問題が発生した場合には、衛星が自ら軌道から外れるようになっているという。

平べったい衛星の形状、クリプトンを使った電気推進、自律的な運用システムなどは、スターリンクの、とくに第1世代機に似ており、ベンチマークとして参考にしたことがうかがえる。

微小衛星革新研究院は、第1段階において半分の324機の衛星を開発する。残り半分は、上海格思航空宇宙技術という別のメーカーが担当するという。

衛星インターネットの大競争時代へ

低軌道コンステレーションによる衛星インターネットをめぐっては、前述のようにスペースXのスターリンクが先行している。すでに6000機以上の衛星が稼働中で、日本を含む世界中でサービスが始まっている。衛星数は、将来的には1万2000機、あるいは3万機以上にまで増える可能性がある。

また、英国ロンドンに拠点を置く「ワンウェブ(OneWeb)」も、600機超の衛星が稼働中で、主に政府機関向けにインターネット・サービスを提供している。

さらに、米Amazonも独自の衛星インターネット「プロジェクト・カイパー」の開発を進めており、試験衛星を使った試験や、実運用機の製造が続いている。

中国国内に限っても、中国政府が旗振り役となって「国網」と呼ばれる衛星インターネットの開発が進んでいる。半官半民の千帆星座とは違い、完全に国策である点が特徴である。すでに何機かの試験衛星が打ち上げられており、まもなく実運用機の打ち上げも始まるものとみられる。完成時には、衛星数は1万3000機にもなるという。

今年6月には、鴻擎科技が1万機の衛星インターネットの開発構想を明らかにしたほか、通信機器大手のファーウェイ(Huawei)も開発の意向を示している。

○参考文献

・https://www.microsate.com/xwzx/mtsm/202408/t20240812_7261668.html
・https://www.shanghai.gov.cn/nw4411/20240807/33adc2bff9fe465196edb40d0afd435f.html
・https://mp.weixin.qq.com/s/UdQiZ1ggLWTXzXB7iCbQFw
・Shanghai Spacecom Satellite Technology Ltd. | MWC Shanghai 2024

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら

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