2024年07月01日20時40分 / 提供:マイナビニュース
前回のシンガポールと同時期に訪問した台北。こちらはCOMPUTEX TAIPEI 2024に合わせての訪台です。ということで、今回は台湾のキャッシュレス事情についてざっくりチェックしたいと思います。なお、今回は訪れたのが台北のみだったので、以下の記述はすべて台北の話と考えてください。
○5,000元の電子マネーをゲット!
実のところ、今回の台湾では少し特殊事情がありました。2023年5月1日から2025年6月30日まで、台湾では「遊・台湾で金運も開運も狙っちゃおう!TAIWAN the Lucky Land」というキャンペーンが実施されているのです。
このキャンペーンは、台湾以外のパスポートを所持する、台湾滞在期間3~90日の個人旅行で、特定のツアーでの参加ではない旅行者に対して、抽選で5,000元(約25,000円)の電子マネーや宿泊割引クーポンを提供するというものです。
台湾到着1日前までに登録をして、台湾の4つの空港(松山/桃園/台中/高雄)で抽選に参加できます。期間も長く金額もなかなか大きいこのキャンペーン、意外に当たっている人を見かけます。筆者がCOMPUTEX 2024の参加者に聞いた限りでは、3分の1から半分ぐらいの当選率でしょうか。
いずれにしても、こうした抽選には当たらないことが多い筆者ですが、今回はたまたま当選してしまいました。そのまま指示に従ってカウンターで電子マネーと交換しました。ここで筆者はちょっと気付かなかったのですが、交換されたのは「iCash2.0」でした。特になにかの指定をしたわけでもなくiCashとの交換になったのですが、別の機会に当選した人に聞くと、「夜の到着だと、その日のEasyCardがなくなっていてiCashになった」ということで、筆者の場合もEasyCardがすでになくなっていたのかもしれません。
いずれにしても、EasyCardだと思いながら受け取った電子マネーの物理カードを持って、空港から台北の街に移動します。本来であれば、ここからキャッシュレスの旅が始まるのですが、今回はすでに電子マネーをゲットした状態でのスタートとなりました。
空港から台北中心部には鉄道移動で、そのままゲットした電子マネーで乗車します。
台北の桃園空港からは桃園空港MRTで一気に台北駅まで移動できます。今回は台北駅そばのホテルだったので、これを使うのが最も効率的。改札にはICカードのリーダーに加え、クレジットカードのタッチ決済のリーダーも設置されていました。つまり、空港に到着したらそのままクレジットカードですぐに台北駅までは移動できるということです。
ただ、後述するとおり、その後は公共交通機関でクレジットカードは使えなかったため、余裕があればここで早めに電子マネーを購入しておくといいでしょう。
台北では、電子マネーとしてEasyCard(悠遊卡)が普及しています。台北市政府や台北捷運公司(台北の交通事業者)などが運営会社の株を保有しており、台北で最も普及した電子マネーです。交通系ICカードとしても利用でき、Suicaと同様に街中での買い物にも使えます。
運営会社は2000年3月の設立で、2022年の段階で会員数は200万人、決済対応スポットは約15万カ所。すっかり社会インフラ化していて、今さら語ることもないのですが、意外に海外旅行客に優しくないところが難点です。スマートフォンへの搭載に関しては、基本的にモバイルの定期契約が必要だったり、記名式EasyCardが必要だったり、旅行者向けではないのです。
EasyCardは電子マネーなので事前にチャージが必要ですが、これも現金チャージのみで、駅の券売機などで現金が必要になります。そのため、空港では最初にEasyCardをゲットするために両替をしなければなりません。
いずれにしてもEasyCardをゲットすると、その後の台北キャッシュレス生活は楽になります。何しろ使える範囲が広いので、公共交通機関からコンビニエンスストアや街の飲食店、お土産店などで利用できます。大きなスーパーや百貨店にも導入されており、その中にある店舗でも同様に使えるので、多くの店舗で使えます。
ただ、小規模の屋台的な個人店では使える例が少ないようです。特に飲食店の対応が遅れています。結果として、キャンペーンで5,000元の電子マネーが当たったものの、台北を満喫するには現金も同時に必要ということになりました。
こういったあたり、台湾が日本的だという感覚を持ちます。要所要所で現金が必要だったり、交通系ICカードにチャージが必要だったり、下りエスカレーターがなく上りエスカーレーターばかりで階段が多いといったところも似ています。
キャンペーンで獲得した5,000元は現金化ができず、90日後に消えてしまうので、どうせなら使い切りたいと思いました。今回は、EasyCardよりもさらに使える場所が少ないiCash2.0だったため、使い切るのに苦労しました。
結局、台北の市政府駅の百貨店である統一時代百貨が館内で利用できたため、パイナップルケーキをお土産に買ったり、無印良品でトラベルグッズを買ったりしました。意外なところでは、観光地の九份で、お土産を買う際に1軒だけ使えるところがありました(他にもあったかもしれませんが見つけられませんでした)。お茶屋さんだったので台湾のお茶を購入できたのはよかったところです。
ちなみに、iCash2.0の運営母体は、共通ポイントのOPEN POINTと同じ。結果として、本連載の第45回で紹介したように、統一時代百貨でPontaアプリからOPEN POINTを貯めて、最後にPontaに変換することができました。
○夜市のキャッシュレスではLINE Pay終了の余波が
さて、そんな台北ですが、観光地として夜市も有名です。通りに屋台や小規模飲食店などが並んで低価格の地元料理を楽しめるというのが特徴ですが、今回訪問した寧夏夜市は、とんでもない人出で、歩くのも一苦労。「オーバーツーリズム」の一語が思い浮かびましたが、この夜市のキャッシュレスが進化していました。
今回、寧夏夜市しか訪問していないので他の夜市の状況は分かりませんが、台湾の統一QRコード「TWQR」が利用できるようでした。ただ、このあたりは日本人だと使えないのだろうと思われます。
本連載の第54回で紹介したシンガポールや第50回のタイでも登場しましたが、東南アジアでは各国で統一QRコードが盛んです。複数のQRコード決済のQRコードを1つにまとめて、それぞれの決済アプリで支払いができるというもので、日本でも細々と「JPQR」が続けられています。
多かったのが「Scan2Pay」というサービスにも対応している例です。これは、店頭のQRコードを読み込んでWebサービスにアクセスし、オンライン経由で決済を行う仕組みです。TWQRやクレジットカードでの支払いも可能です。クレジットカードは日本発行カードも対応しているので問題ありません。
Apple Payだとそのまま登録しているカードでの支払いもできるので楽ちん。Googleウォレットにも対応してほしいところですが、現時点ではAndroid端末の場合は手動でクレジットカードを指定する必要があります。
一番楽なのはクレジットカードのタッチ(次点でEasyCardのタッチ)なのですが、カードで支払いができるだけでもありがたいところ。TWQRで直接決済できるというのも将来的には期待したいところですが、現在のJPQRの海外対応で台湾はターゲットに入っていないため、当面はQRコード決済の対応は期待薄でしょう。
そうしたなか、タイでも使われているLINE Payが台湾ではさらに広く使われています。LINE Payは統一QRコードには参加していないのか、別枠でQRコードが張られていて、日本のLINE Payユーザーは利用個所を台湾に設定することで、登録したクレジットカードからの支払いができます。
LINE Payの対応店舗はそれなりに広がっているので便利……だったのですが、2025年4月末で日本ユーザー向けのLINE Payは提供を終了することがアナウンスされました。同時に台湾/タイでのクレジットカードを登録した利用もできなくなると告知されているので、完全に利用ができなくなるようです。
海外のLINE Payは運営が別会社なので、現地の人は変わらず利用できると思われますが、日本人が日本のLINEアプリから利用することはできなくなる、ということになります。
Scan2Payもどこまで広がるのか未知数ですし、TWQRの利用も難しそう。やはり、日本と同様に台湾でも現金/電子マネー/クレジットカードの3つを駆使することで乗り切るしかないようです。
小山安博 こやまやすひろ マイナビニュースの編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。最近は決済に関する取材に力を入れる。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、PC、スマートフォン……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 この著者の記事一覧はこちら