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TBS『どうなの会』は中京テレビ『どうなの課』のパクリか移籍か――逆らえない時代の流れ

2024年06月05日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●異例の早期復活に歓迎の声も
TBSの特番『巷のウワサ大検証! それって実際どうなの会』の放送が発表されたとき、ネット上に驚きや戸惑いの声があがり、「パクリなのか、パクリではないのか」のちょっとした論争になった。

そして3日夜、実際に放送されると、「チャンネルが違う」「これってアリなの?」「復活うれしい」などのさまざまな声があがり、「実際どうなの会」「チャンありがとう」「高カカオチョコ」などの関連ワードがX(Twitter)のトレンドにランクイン。

これらは『どうなの会』が今春まで日本テレビ系列で放送されていた『それって!? 実際どうなの課』(中京テレビ制作)のコンセプト、企画、演出、出演者、セットなどのすべてが似ていたことへの反響だろう。

同番組は深夜帯で根強い人気を得ていたほか、一定の視聴率を獲得していたこともあって、局を変えた早期復活に注目が集まるのは当然かもしれない。では、異例と言える早期復活をどう捉えればいいのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

○「似ている」のではなく「ほぼ同じ」

今回の局を変えた早期復活について、民放の番組を手がける3人のテレビマンに「『あり』か『なし』か」を聞いてみた。

すると3人とも歯切れの悪い返事に終始。「あまりいいことではないけど、仕方がない気もする」「『あり』とは言いたくないけど、『なし』とも言いづらいギリギリの話」「局としてはキツいと思うけど、時代的にこれから『あり』になっていくのかな」などと複雑な心境を語っていた。

取材したところで両局の関係者は本音を明かさないだろうが、『どうなの課』が終了した理由は、編成上の問題(今春から日テレ系深夜枠『プラチナイト』の月~水曜が2枠体制に変更)、制作費・時間・人員のかかる番組構成などが挙げられている。また、キー局の日テレと中京テレビの関係性による背景も多少関係しているのかもしれない。

もし別のスタッフが別のキャストを使い、企画・演出の似ている番組を作ったら「パクリ」と疑いの目を向けられても仕方がないが、今回は放送局が変わっただけ。『どうなの課』のスタッフや制作会社はほぼ同じであり、これだけ確信犯的にほぼ同じ内容であれば、もはや「パクリかどうか」の範ちゅうではなく、「番組の移籍」「放送局の変更」というイメージが妥当に見える。

契約などの詳細こそ分からないが、終了してからの「移籍」「変更」であり、制作していた中京テレビや日テレ系列が「明らかな損害を被った」という様子もない。また、少なくとも視聴者を裏切るという形にはなっておらず、逆に歓迎の声が上回っている。

『どうなの課』は最後までネット上の反応がよく、昨年ゴールデン特番が2回も放送されていた。中京テレビ制作では『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』に続く「ゴールデン・プライムタイムでのレギュラー化もありうるのでは?」なんて声もあがっていたのだから、まさかの終了から早期復活に歓迎の声があがるのは当然かもしれない。

ネット上に「プロ野球の自由契約と似ている」という声もあがっていた。確かに「戦力外通告を受けた選手(=番組が終了)が別チーム(=他局)に移籍して同じプレースタイルで出場(=同じ内容で放送)する」ことと似ている感もある。

●「移籍」が受け入れられてきた歴史

『どうなの会』の放送を聞いたとき、瞬間的に「過去に似たケースはなかったかな」と考えて、いくつかの番組が頭に浮かんだ。

現在シーズン25が放送中の『東野・岡村の旅猿 プライベートでごめんなさい…』(日テレ)は当初TBSの正月特番として放送されたが、続行されなかったため、2度目の放送以降は日テレに移る形で現在に至っている。

今春30周年を迎えた長寿番組『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京)は、『EXテレビ』(読売テレビ制作・日テレ系)の「家宝鑑定ショー」がベース。同番組の最終回で行われた「企画オークションでテレ東が買い取る」という形でスタートした。

その他で印象深かったのは、『ウルトラ』(TBS)。この番組は『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日テレ)が終了する際、同番組で誕生したユニット・ウルトラキャッツに活躍の場を作る形で局を変えて放送された。

また、アニメでは『進撃の巨人』(MBS制作・TBS系→NHK)、『僕のヒーローアカデミア』(MBS制作・TBS系→読売テレビ制作・日テレ系)、『弱虫ペダル』(テレ東→NHK)、『HUNTER×HUNTER』(フジ→日テレ)など、シリーズ途中で放送局が変わるケースがしばしばあり、ドラマでも『マジすか学園』(テレビ東京→日テレ)の変更を覚えている人もいるだろう。

これら以外では、『「ぷっ」すま』(テレ朝→Amazonプライム・ビデオ『なぎスケ!』)、『やべっちF.C.』(テレ朝→DAZN『やべっちスタジアム』)のように「地上波での放送終了後、動画配信サービスで復活」というケースも見られ始めている。

編成、スタッフ、キャスト、制作会社、視聴者など、それぞれ背景や事情は異なるものの、これらの番組に違和感の声は少なく視聴者に受け入れられてきた。視聴者にとって大切なのはコンテンツであり、それを手がけるクリエイター。しかもクリエイターの業界内移動が活発化する現在、もはやこれくらいの「移籍」「変更」はあり得ることとして受け止めるほうが自然なのかもしれない。

逆に、もし放送をめぐって両局が対立するようなら、視聴者からあきれられて共倒れに終わるリスクがありそうだ。実際、中京テレビもTBSも具体的なコメントを出していないが、そのスタンスは賢明に見える。
○コンテンツ・ファーストの時代へ

ちなみに、1日に『タモリステーション』(テレ朝)でタモリがアナウンサーらと盛岡を訪れたロケが放送されると、「『ブラタモリ』(NHK)に見える」という賛否の声があがり、ネットメディアもこれを報じていた。

『ブラタモリ』も『どうなの課』と同様に今春でレギュラー放送を終え、特番化も決まっていないのだから、ある意味これくらいのことは当然なのかもしれない。むしろ制作サイドには「『ブラタモリ』がない今、タモリのロケ番組を見たい視聴者ニーズに応えた」という大義名分があり、そもそもテレ朝は『タモリ倶楽部』を放送していた実績もある。

今後は今回のようなケースで「パクリかどうか」という声をあげる人が減っていくのではないか。やはり「コンテンツ・ファースト」「クリエイター・ファースト」の流れは止まりそうになく、放送局にはこれまで以上に取捨選択の判断力が問われていくのだろう。

オープニングでMCの生瀬勝久が「ここまでご覧になってザワついていると思います」と意味深に語り、企画レギュラーのチャンカワイが「まさかこんなに早く出会えるとはね……スゴイことが起こってんだよ本当は」と感極まるなど、他局での早期復活に自らふれるシーンがあった。また、画面右上に常時表示された「TBS」の文字も、あえて違和感を強調しているように見えてしまった。

これらはスタッフや出演者による中京テレビと日本テレビへの恨み節ではないかもしれない。しかし、「納得がいかない形で終わってしまった」という不本意さや、「それでも復活できた」といううれしさを感じられるリスタートとなった。

『どうなの課』は時間も人も手間もかかるタイプの番組だからこそ関係者の熱は高く、「新しいものを作りたい」というクリエイターの性を超えるほどの強い思いがあるのかもしれない。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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