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『はじめてのおつかい』受け継がれる「家族にとっていい1日に」の思い 時代の変化がもたらす影響とは

2024年01月03日07時00分 / 提供:マイナビニュース

●挑戦家族の募集告知をしない理由
日本テレビ系ドキュメントバラエティ特番『はじめてのおつかい』が、3日(18:00~) 放送の『新春 小さな大冒険3時間スペシャル!』で34年目を迎える。時代を経て、町や買い物のシステムは進化したが、大切な人のために冒険に挑む子どもたちの勇気は変わらず、そこで起こる思いがけないドラマが、見守る大人たちを感動させる長寿シリーズに。その人気は、Netflixで配信されたことで世界にも広がっている。

長年にわたり“はじめてのおつかい”を撮影してきた熟練のチームは、どんな思いで家族の挑戦を記録しているのか。演出を務める日本テレビの徳永清孝氏に、番組に受け継がれる精神や撮影の裏側などを聞いた――。

○“お子さん実験番組”ではない

“はじめてのおつかい”の撮影に向けて最初に行うのは、おつかいに行く子どものことについて、両親など家族への取材。そこで最も重視するのは、“本人が本当におつかいをやりたいと思っているか”という点だ。

「親御さんからしたら、“うちの子がどこまでできるかを知りたい”という欲求もあると思うんですけど、この番組は成長を検証する“お子さん実験番組”ではないというのが、大きな裏テーマとしてあるんです。“はじめてのおつかい”の日を、その子にとって、お母さんとお父さんにとって、いい1日にしてあげたい。その1日にカメラがついて行っているという精神なので、本当に自分がおつかいに行きたいと言ってくれるお子さんや、おつかいに行かせて良かったと思ってくれる親御さんと出会いたい。そこで、“おつかいに出したいご家族大募集”みたいに告知してしまうと、ベースにある精神がブレてしまうから、スタッフがリサーチして挑戦してくれるご家族を探しています」(徳永氏、以下同)

こうして挑戦する家族が決まると、担当スタッフが密に連絡を取り合い、“おつかいに行かなければいけない理由”を決めていく。

「分かりやすい例は、お父さんの誕生日にプレゼントを買いに行くというストーリーなんですけど、撮影予定日とピンポイントに合うことはなかなかないので、大体は“今夜のカレーのジャガイモがない”といった話になりますね。そこで、その家族にとって“ジャガイモが入ってないとカレーじゃない”と言い切れるくらい、ジャガイモが大事なのかというところも確認します」と、リアリティを重視する。

そこから、いつもジャガイモを買う店が、子ども1人で行ける場所なのかをヒアリングし、今度はスタッフがロケハンしてシミュレーション。そしていよいよ、撮影当日を迎える。

家族と最初にコンタクトを取ってから撮影まで、数カ月かけて入念に準備を進めるが、「お子さん本人を入れてリハーサルができるわけじゃないので、本当に想像でしか準備できないんです。ご家族とは本当に密に会話をするのですが、本番当日も“今日はすぐ出発できるかどうか心配です”くらいしか情報がない状態で臨みます」という緊張感の中で撮影が始まる。

●出発まで6時間待ったことも

これまで長きにわたり“はじめてのおつかい”を撮影してきた熟練のチーム。カメラマンは、1人がその町の一番高い建物から俯瞰(ふかん)のショットを。1人が、工事現場の職人に扮してカメラを仕込んだ工具箱を持って並走し、至近距離のショットを。そして、子どもに先回りして遠くからしゃがんでカメラを構え、追い抜かれたら別のカメラが待ち構える…というのを数人で繰り返し、まるで馬跳び競争のような要領で正面からのショットを狙う部隊がいる。

地上担当のカメラマンは、互いのカメラがどこを向いているのかを確認し、目配せをしながら役割をローテーションしていく「鉄壁のチームワーク」を発揮する。しかし、子どもがシミュレーション通りの動きをしてくれるわけには当然いかず、突然走り出したり、違う道に逸れてしまったりと、翻ろうされることもしばしば。きつい登り坂を、子どもがひょいひょい進む一方、ベテランのカメラマンが息を切らしながら追いかける構図は、今や番組の1つの名物に。それでも、番組開始当初に比べると機材の小型化やテープレス化が進み、負担軽減の恩恵を受けているそうだ。

子どもがなかなか家を出発しない場面もよく見られるが、過去には6時間待ったケースも。そんなときは、いつ急に動き出すか分からないため、スタンバイしながら「ひたすら待つ」という体力勝負の現場になっている。

○放送ペースは年2回が限界

1つの“おつかい”に、これだけの準備と手間をかけているが、すべてが放送されるわけではない。例えば、すんなり行って何事もなく帰宅したり、周囲の人の優しさで子どもが一言もしゃべらずに達成したりするといった場合は、放送することが難しい。

「ここまで番組が長く続いてきたのは、“奇跡”が放送され続けているからというところが大きいので、子どもの頑張りと放送するかの判断は、すみ分けて考えています」というだけに、番組の放送ペースは年2回が限界だという。

それでも担当スタッフは、どの家族とも撮影後も交流が続いており、その後の様子を撮影したり、過去の放送素材を使用したりする際も、スムースに連絡が取れるそうだ。

●番組ロケへの反発やおつかい先NGも
34年目を迎えた『はじめておつかい』。時代の変化は、撮影にどんな影響を与えているのか。

「特に東京23区がそうなのですが、撮影が日常に入ってくるということに対するアレルギーの強い方が多くて、“何撮ってるんですか?”と言われることがよくあります。地方だと、“『はじめておつかい』です”と伝えると“頑張ってください”と言ってくれるのですが、東京だと“警察に許可取ってるんですか?”と聞かれることもありますね。それと、東京はチェーン店が多いので、本部に確認を取って撮影許可が下りなかったり、広報担当の方を現場に派遣できないということで断られることもあります」

また、『はじめておつかい』のロケだと気づいて、スマホで撮られることも。そんなときは、「撮影風景を撮られたくないというより、お子さんの写真を勝手にSNSで公開されると当然、親御さんもいい気はしないので、“すみません、撮影はご遠慮ください”とお願いしています」という。

別の側面の変化では、父親がおつかいに出すというケースが多くなっているのだそう。「普段はつい甘やかしてしまうけど、子どもに何かをお願いするという一つの試練に立ち向かおうとするお父さんが増えているのは、時代の変化の一つかもしれないですね」と捉えている。

○“はじめて”には親目線の意味も

2022年からNetflixで世界配信されると、海外から大きな反響が寄せられ、「宮島(広島県)でロケをすると、外国の方に“Netflix?”とすごく聞かれました」と肌で実感。多くあった感想は、小さな子ども1人で外を歩かせることができる日本の治安の良さへの驚きだったが、それに加え、おつかいを子どもの成長を実感するイベントとして位置づけているのが日本独自の文化であることを知ったという。

“はじめてのおつかい”という概念は、元々日本にあったと思われるが、これを言語化し、文化の一つとして昇華させたのは、番組の影響が大きい。23年10月に埼玉県議会で、子どもだけの留守番やおつかいに行かせることを禁止する条例案が炎上して撤回されたのは、おつかいが日本の文化として根付いていることを裏付ける出来事だった。

Netflix版の英語タイトルは『Old Enough!』。日本語訳すると「もう十分大人だよ!」と、子ども目線のタイトルになっているが、「『はじめてのおつかい』の“はじめて”は、おつかいに出すお母さんやお父さんにとってもそうなんですよね。私にも子どもがいますが、最後に帰ってきたとき、親御さんが泣いていて、お子さんが“何で泣いてるの?”と聞くのが、いつもグッとくるんです。改めてすごくよくできたタイトルだと思いました」と感心する。

海外の反応を受けて、ロケをする町の紹介をするという、元々あったテーマの優先順位が高くなったという。「例えば、牡蠣の養殖をしている町だったら、牡蠣にまつわるおつかいをしてもらったりします。日本という国をこの番組を通じて見る人がいるというのを考えたときに、そこがどういう町なのか、そこに住む人がどんなふうに育ってきたのかというのが色濃く出るといいのではと、少し意識しているかもしれません」といい、よりVTRに奥行きが出るようになった。

●一言で丸く収める魔力を持つ所ジョージ

最新作では、Netflixで『はじめてのおつかい』を見たカナダの女性が、日本に住む息子に「絶対にやったほうがいい」と推奨し、孫がおつかいに行く挑戦が登場。Netflixがきっかけになり、父親がおつかいに出すという、時代の流れを象徴するケースだ。

また、大相撲・宮城野部屋に所属する間垣親方が、3人の子どもたちをおつかいに出す挑戦も。「お相撲さんの部屋で育ったお子さんたちと若い衆との関係性が、『はじめてのおつかい』という番組でなければ見られないようなシーンになっています。これは『サンクチュアリ』(Netflix)でも見られないですし、なかなか狙って撮れるものではないので、新鮮で面白いです」と見どころを語る。

子どもや親たちの姿を、長年にわたりMCとして見守る所ジョージの存在も大きい。

「所さんって、短い一言で丸く収める魔力を持っている方なんです。“素敵な子だったね”、“お父さんも頑張ったね”と言うと、すべてが救われる言葉のすごさがあるんですよね。それに、“所さんが言うなら許される”みたいな言葉の免罪符も持ってらっしゃるので、“泣いちゃったんだから、お父さんもやめさせてやりゃいいのにね”って言うと、表面上は番組が悪者になるかのような発言なんですけど、全然そうはならなくて、みんなが薄々感じてたからつい笑っちゃう。そういう絶妙なことを言える人は本当に稀有なので、こちらもありがたいです」

●徳永清孝1973年生まれ、大阪府出身。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、96年コーエー(現・コーエーテクモ)に入社し、00年に日本テレビ放送網入社。『THE夜もヒッパレ』『しゃべくり007』『ものまねグランプリ』『THE MUSIC DAY』『1億人の大質問!? 笑ってコラえて!』などを担当し、『はじめてのおつかい』『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』の演出を務める。

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