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ついに『紅白』司会へ到達 有吉弘行が各局の作り手から求められる理由と理想の“司会像”

2023年12月27日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●NHKと民放キー5局で冠番組を持つ業界トップのMC
23日、『第74回NHK紅白歌合戦』で司会を務める有吉弘行が、同番組で藤井フミヤと共演し、「白い雲のように」を歌うことが発表された。同曲は有吉がお笑いコンビ・猿岩石のときにリリースされ、藤井フミヤが作詞、弟・藤井尚之が作曲。有吉は司会に加えて歌手としても出演することになり、ますます注目度が高まっている。

有吉はNHK総合と民放主要5局で冠番組を持つ業界トップのMCでありながら、いまだに毒舌のイメージが強く、さらに音楽番組との接点も少なかったことから、これまでは「さすがに『紅白』司会はないだろう」と見られていたいた。なぜ有吉はこれほど局を超えてテレビの作り手たちから求められ、『紅白』司会にまでのぼり詰めたのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

○■「飽きた」を避けるポジショニング

まず、現在レギュラー放送されている有吉の出演番組をあげていこう。

『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』(NHK総合)、『有吉ゼミ』『有吉の壁』(日本テレビ)、『マツコ&有吉 かりそめ天国』『有吉クイズ』(テレビ朝日)、『櫻井・有吉THE夜会』『ジロジロ有吉』(TBS)、『有吉くんの正直さんぽ』(フジテレビ)、『有吉ぃぃeeeee!そうだ!今からお前んチでゲームしない?』『有吉の世界同時中継 ~今、そっちってどうなってますか?~』(テレビ東京)。すべて冠番組であり、加えて『有吉の夏休み』『有吉ダマせたら10万円』『有吉弘行の脱法TV』(フジ)などの冠特番もある。

冠番組だけで主要局を制覇している上に、昼、ゴールデン・プライム、深夜と放送時間帯も幅広く、番組のジャンルとテーマも多彩。間違いなく芸能界の最高峰なのだが、お笑いBIG3のタモリ、ビートたけし、明石家さんまや、その下のダウンタウン、とんねるず、爆笑問題らと比べると、それほど“司会者然”としたところを感じさせない。

少なくとも視聴者にそう感じさせない独自のポジショニングが「出すぎ」「飽きた」などの印象を避け、「起用したいタレント」の理由となっている。例えば、『有吉ゼミ』は企画重視、『有吉の壁』は芸人若手重視、『櫻井・有吉THE夜会』は週替わりのゲスト重視、『有吉弘行くんの正直さんぽ』は訪れる店重視で、有吉自身が前に出て目立つようなシーンは極めて少ない。

このあたりは再ブレイクのきっかけとなった『内村プロデュース』(テレ朝)のMCであり、恩人の内村光良を彷彿させるが、「どんなにMCを務めても有吉自身が消費されない最大の理由」と言っていいだろう。

また、『マツコ&有吉 かりそめ天国』『櫻井・有吉THE夜会』という番組名を見ると、「芸能界の後輩にあたるマツコ・デラックスと櫻井翔の名前を自分よりも前に出す」という配慮を超えたしたたかさも感じさせられる。いい意味で露出しすぎず、企画や出演者を前に出し、自分が出るタイミングでは短い言葉で笑わせるというスタンスが貫かれている。

●「仲間思い」「腰が低い」のバランス

有吉は『紅白歌合戦』司会の就任コメントで、「一番、尊敬している内村光良さんが以前、紅白の司会をしていたのを見ていて、いつか内村さんのようになりたいと目標にしていたので、信じられないです」と語っていた。わざわざ内村の名前を出し、さらに「今まで司会をされた方の中で一番小ぶりだと思いますが、すごく光栄だし、嬉しいです」と謙虚に語ったのは、内村への恩返しであるとともに、自身の成果に感慨深いところがあったのかもしれない。

『有吉の壁』や『オールスター後夜祭』(TBS)などで見せる若手・中堅芸人の良さを引き出す進行は、ジャンルを超えて子役から俳優、アーティスト、アスリート、文化人、大御所まで拡大。「毒舌のイメージがあっても、けっきょく笑顔で仲間思い」「どんなに売れても絶対に勘違いしない腰の低さ」が制作サイドの安心材料となっている。

もちろん、持ち味である毒舌がベースの番組もしっかり確保。より多くの人々が見るゴールデンタイムでは『マツコ&有吉 かりそめ天国』、さらに深夜帯では『有吉クイズ』『ジロジロ有吉』、特番では『オールスター後夜祭』、冠ラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN)などで毒舌を見せている。

そもそも有吉は『IPPONグランプリ』で2度も優勝したようにトップクラスのセンスを持つ芸人だけに「毒のさじ加減を番組や出演者によって変える」ことなどたやすいのだろう。さらに、もしたまたま毒のさじ加減を間違えて行き過ぎた発言をしたとしても、有吉には猿岩石でのブレイク後に「どん底を経験した」という免罪符がある。
○■今なお使える「どん底」の免罪符

すごいのは20年程度も前のイメージやエピソードをいまだに免罪符として使えること。実際、頂点から底辺までの転落を目の当たりにした人が多く、有吉自身もそれを自虐ネタとして多用しないため使い減りせず、現在まで効力を発揮している。

例えば、今年の『紅白歌合戦』で有吉が多少のミスをしても、フミヤと「白い雲のように」を歌うことで頂点から底辺に落ちたイメージが思い浮かんで緩和されるのではないか。そんな簡単には揺るがない免罪符の存在も、各局が有吉を起用しやすい理由の1つとなっている。「パワーがあるのに、視聴者にパワーを感じられにくい」ため、ハラスメントと騒がれるリスクは少ない。

『有吉くんの正直さんぽ』で一般人とふれ合う際に見せる礼儀正しさ、『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』で日直アシスタント・田牧そらに対する優しさ、その他でも妻を大切にする姿勢などを含め、さりげないところでほどよく好感度を得ているところも、起用される理由の1つなのだろう。

とはいえ今なお、業界人やコアなファンの間では、『有吉クイズ』で見せる破天荒かつ狂気の一面を称える声も少なくない。かつて『内村プロデュース』で見せた猫男爵や『アメトーーク!』(テレ朝)で見せたあだ名芸などは封印されているが、これは裏を返せば「いつ再解禁することも可能」ということ。

有吉は来年5月31日で50歳の節目を迎えるが、このままMCとしての役割をまっとうしていくのか。それとも、いつか破天荒かつ狂気の芸人という一面を濃くするときが来るのか。そんな可能性を感じさせる奥行きも、有吉の魅力なのかもしれない。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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