2023年09月28日14時22分 / 提供:マイナビニュース
●3D V-CacheなRyzen 9を載せたゲーミングノートPC
ついにノートPCでも3D V-Cache搭載Ryzenが利用可能になった。今回試すのは「AMD Ryzen 9 7945HX3D」を搭載するゲーミングノートPCのASUSTeK「ROG Strix Scar 17 X3D」。3D V-Cacheがもっとも効くのがゲーミング。GPUには「GeForce RTX 4090 Laptop GPU」を搭載するROG Strix Scar 17 X3Dは、現時点でトップクラスのパフォーマンスを持つゲーミングノートPCと言えるだろう。
ゲーミングノートPCにもL3キャッシュ128MB搭載Ryzenが来た
最初に説明しておくと、ROG Strix Scar 17の既存モデルに搭載されていたのはRyzen 9 7945HX。「3D」がつかないこちらは3D V-Cacheなしモデルだ。もちろんそれでもPコアが16基、合計32スレッドの強力なパフォーマンスである。以下の表で、Ryzen 9 7945HXとRyzen 9 7945HX3Dの違いをまとめておこう。
仕様はある程度共通しているので、特に異なる部分をピックアップしよう。まず3D V-Cacheの部分でL3キャッシュ容量がRyzen 9 7945HX3Dは128MBで、Ryzen 9 7945HXの倍量になっている。まあ、Ryzen 9 7945HX自体64MBとかなり大容量ではあるが、倍になることでより多くのデータをキャッシュしておくことができるようになり、ヒット率も高くなるというのがポイントだ。そして最大温度が89℃と少し低く設定されているのも3D V-Cacheに関連するところだろう。もう一つ温度を抑えるものとして、ベースクロックを200MHzほど落としている。おそらくマルチスレッド時はRyzen 9 7945HXよりも若干クロックが低いと思われる。一方で3D V-Cacheでキャッシュヒット率が上がる。つまり目的のアプリケーションがどのような性格なのかが肝心だ。キャッシュが効くならRyzen 9 7945HX3D、クロックが有効に効くならRyzen 9 7945HXのほうが高性能ということになる。本製品のようにゲーミング用途に関しては、3D V-Cacheが効くためRyzen 9 7945HX3Dのほうが適していると言えるだろう。現在のゲームタイトルで16コアも求められるか……という点はあるが、多い分には問題ない。ただ、どちらかと言えばギガスレッド用途、プレイしながらの配信や録画といった用途が適しているのだろう。
ASUSTeK「ROG Strix Scar 17 X3D」を隅々まで見てみる
ROG Strix Scar 17 X3Dは、ROGらしいデザイン性の高さに加え、17.3型の大画面、高いゲーミング性能を備えている。サイズは305×282×23.4~28.3mm。重量は約3.0kg。自宅プライベートルームに置いて、ゲーミングをメインにプライベート全般をこなすことができる。もちろん高性能なのでビジネスやコンテンツ制作も視野に入る。とくにゲーム+配信のような使い方なら、本製品の高いマルチスレッド性能が生かせるだろう。
背面は左右に通気孔、中央にインターフェース。天板のROGエンブレムはフチの部分が発光(反射!?)する
ゲーミングノートPCなりではあるがスリムな側面。左側面にはインターフェースがあるが、右側面は通気孔意外なにもない
ディスプレイ解像度は2,560×1,440ドット。4Kを目指さなかった代わりにリフレッシュレートは240Hzと高い設定なので、搭載するGeForce RTX 4090 Laptop GPUのパフォーマンスと合わせ、重いゲームタイトルでも高フレームレート、軽いeスポーツタイトルでは240Hzパネルの性能を引き出して余りあるほどの超高フレームレートを実現する。応答速度は3ms。また、NVIDIA G-Syncにも対応している。
パネルの発色、視野角はよい
評価機のキーボードは英語版。Ryzen 9 7945HX3D版は未発表モデルなので国内販売モデルがあるかどうかは不明だが、日本語配列とは異なると思われる。ROGなのでゲーミングキーボード仕様が特徴で、スイッチは2,000万回の押下に耐える高耐久のものと言う。また、ROG独自と言うオーバーストローク・テクノロジーを採用。キーストロークは2mm確保されているが、キーストロークが浅い位置で反応することで高レスポンス、快適さを実現すると言う。また、キートップもわずかな傾斜を設けてフィット感を高めている。イルミネーションでは個別にLEDバックライトを搭載。Aura Syncで制御ができる。
インターフェースを見てみよう。左側面にはUSB 3.2 Gen1 Type-A×2基、マイク/ヘッドホンコンボジャック1基。背面にはHDMI×1基、USB 3.2 Gen2 Type-C×2(1基はUSB PD対応、もう1基は映像出力対応)、2.5GbE×1。そのほかWi-Fi 6EおよびBluetooth 5.1をサポートしている。
インターフェースは背面と左側面に集約。背面は着脱機会の少ない端子、左側面はUSBとオーディオのみなのでキーボード・マウスやヘッドセットなどに
ACアダプタは出力330Wのものが付属している。大きな、いわゆるゲーミングノートPC向けのACアダプタサイズだ。本体バッテリー容量は90Whとされるが、この330W ACアダプタで急速充電すれば30分でバッテリー残量ゼロの状態から50%まで充電できると言う。加えて、USB PD(100W)による充電も可能とされる。たとえば本製品をビジネス用として職場に持ち込むような場合は、こうしたUSB PD充電も検討できるだろう。
CPU+GPUで最大240W! 冷却機構も強力
CPUは先ほど説明したとおり。cTDPの最大はマニュアルモードで65W、ターボモードで55W。GPUもNVIDIA GeForce RTX 4090 Laptop GPU。ROG Strix Scar 17 X3DではTGP 175W(Dynamic Boost対応)までで運用できると言う。グラフィックスメモリは16GB。CPUとGPUのトータルでは、マニュアル時240W、ターボ時230W+そのほかの消費電力となるので、330Wアダプタをバンドルするのもうなずける。
NVIDIA GeForce RTX 4090 Laptop GPUに加え、CPUに統合されているAMD Radeon 610Mも認識されている
熱源であるCPUやGPUのいわゆるサーマルペーストについては、Thermal Grizzlyの液体金属のものを採用していると言う。通常のグリスと比較して最大15℃冷えるそうだ。冷却機構にはベイパーチャンバーを採用。ディスプレイ裏上部から吸気、背面左右と両側面の4つの排気孔を設けたエアフローを行なう。左右に配置するファンは84のブレードを持つ「Arc Flow Fans」と銘打ち、冷却性能をうたっている。
メモリはDDR5-4800 16GB×2枚を採用しており、標準で32GBという大容量だ。CPU-Zからもどのスロットに搭載されているかが表示できるため、SO-DIMMで搭載されていると見られる。
評価機のストレージはSK hynix PC801「HFS001TEJ9X101N」が搭載されていた。容量が1TB、PCI Express 4.0 x4接続のM.2 NVMe対応SSDだ。転送速度はシーケンシャルリードで7367.15MB/s、同ライトで6409.9MB/sとPCI Express 4.0 x4の帯域上限に迫る高速モデルだ。
●ベンチマークテストでRyzen 9 7945HX3Dの性能をチェック
ベンチマークの結果はゲーミングノートPCのトップクラス
それでは16コア32スレッドかつ大容量L3キャッシュを搭載するRyzen 9 7945HX3D、モバイル最上位GPUのGeForce RTX 4090 Laptop GPUを搭載するROG Strix Scar 17 X3Dを、実際にベンチマークにかけてパフォーマンスを見てみよう。電源モードについては、統合ユーティリティのROG Armoury CrateからTurbo(デフォルトはPerformance)とし、合わせてGPUモードをUltimate(デフォルトはStandard)として計測を行なった。
まずはCINEBENCH 2024。登場間もないベンチマークなので比較データが揃っていないが、CPU Multi Coreで1,766、CPU Single Coreで114といったポイントだ。新たに追加されたGPUスコアは22,729。今後CINEBENCH 2024を使ったベンチマークが出てきた際、比較してみるとよいだろう。
続いてCINEBENCH R23。こちらはCPU Multi Coreが33,483と16コア32スレッドの圧倒的なパフォーマンスを目の当たりにすることができる。また、CPU Single Coreも1,951と2,000に迫るスコアを叩き出している。Multi、Singleともに高いスコアで、デスクトップPCでもミドルレンジを軽く凌駕、ハイエンドでもかなり高スペックでなければ超えられないだろうパフォーマンスを示している。
PCMark 10でアプリケーション性能を見てみたが、こちらもなかなかのスコアだ。Overallは9,177と10,000ポイントに届かなかったが、各シナリオスコアは10,000点を超えてきている。CPU性能の高さでProductivityシナリオはSpreadsheet、Writing両テストで高スコア。Digital Content Creationシナリオの各テストもCPU、GPU両性能により高いスコアを示している。
続いて3DMark。GPUのGeForce RTX 4090 Laptop GPUはデスクトップ版GeForce RTX 4090からはいくつか制限のあるGPUだが、スコアとしてはデスクトップ版のGeForce RTX 4070 Tiに比肩するくらいだろうか。
実ゲームタイトルでのベンチマークを見ていこう。まずはファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク。今や軽い部類のベンチマークで、2,560×1,440ドット、最高品質でも5桁のスコアだった。次に現在でもまだ比較的重い部類のFINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク。こちらは2,560×1,440ドットパネルの本機でも3,840×2,160ドットまで計測できたのでそちらのスコアも添える。3,840×2,160ドット、高品質の場合は8,926ポイントで快適評価。いちおうプレイ可能な範囲である。本機パネル解像度の2,560×1,440ドット、高品質の場合は15,216ポイントで、最上級の評価である非常に快適まで上がる。
続いてCyberpunk 2077。2,560×1,440ドット、レイトレーシング:ウルトラでも94.55fpsを記録しておりプレイは快適だ。同タイトルは「アップデート2.0」が登場予定で、これが重くなると噂されている。本製品のパフォーマンスがあれば引き続き問題ないと思われるが動向に注視したい。
次にForza Horizon 5。2,560×1,440ドット、Extreme画質で145fpsという結果だった。120fpsを軽く超えているので、パネルスペックの240Hzにまでは届かないものの映像はなめらかだ。
最後にTom Clancy's Rainbow Six Siege。eスポーツタイトルで軽量のため、2,560×1,440ドット、最高画質でも496fpsだった。最高の画質設定でも本機のパネル上限を軽く超えている。240Hzパネルは、プロゲーマーでもまずまず十分なリフレッシュレートと言える。そのパネルスペックを引き出す描画が可能なのだから、プレイは有利なはずだ。
最強CPUでさらに強化された至高のゲーミングノートPC
Ryzen 9 7945HX3Dを搭載するゲーミングノートPC、ROG Strix Scar 17 X3Dを紹介してきた。3D V-Cacheはとくにゲーミングで有効と言われる。アプリケーションによる有利不利はあるだろうが、ここまでのパフォーマンスを見るかぎり、ゲーミング性能では現行ゲーミングノートPCの中でも間違いなくトップクラスだと言えるだろう。
ROG Strix Scar 17 X3D自体もパフォーマンスとデザイン性を両立したゲーマー好みのゲーミングノートPCと言えるだろう。17.3型の大型きょう体は窮屈感がなく迫力あるゲームプレイが楽しめる。至高のゲーミングノートPCを求める方は要チェックだ。