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AI活用からPeppolまでトレンドにも迅速に対応する、花王ビジネスアソシエの経理DX

2023年08月30日09時00分 / 提供:マイナビニュース

デジタルの進歩はあらゆる業務に影響を与えてきた。それは経理業務においても例外ではない。請求書や納品書といった紙類のデジタル化、AI-OCRによる文字の自動認識、さまざまなクラウドサービスの登場など、経理の世界にもDXによる大きな変化の波が着実に訪れているのだ。

とは言え、デジタル化に要するコストやリソースへの懸念から、デジタル化に踏み切れない企業も少なくない。そうした企業が今後デジタル化に取り組む際には、何かしらの指針が必要だろう。

7月21日に開催された「TECH+セミナー 経理業務変革 Day 2023 Jul.法令改正に適した経理DX」に花王ビジネスアソシエ ビジネスサポートセンター会計サービスグループ 部長 上野篤氏が登壇。グループを挙げて取り組む経理DXについて語った。
AIやシチズン・デベロッパーで経理DXを推進

花王ビジネスアソシエは花王グループのシェアードサービス企業だ。国内17社の経理業務を事業として行っており、設立は1940年と長い歴史を誇る。

その歴史の中で、花王グループの会計財務部門は幾度となく変革を繰り返してきた。例えば、1980年代にはすでにキャッシュレスや手形レスを導入し、2009年には経理業務をBPO化して内部統制の充実を図ってきた。近年ではアウトソーシングしていた業務を再び内製化し、AI業務を拡大するなど、絶え間ないデジタル変革を続けている。

そんな花王グループの特徴として、グループ各社が支払い能力を持たないことが挙げられる。親会社の花王に資金を集約しており、グループ各社の取引先に対しての支払いを親会社が代行しているのだ。このやり方には、グループ間における資金融通などの効率化や、内部統制を図るなどの目的があるという。

このように、花王グループは経理業務に対して強いこだわりを持ち、これまで歩んできた。上野氏は「こうした諸先輩方による変革を絶やすことなく、後輩メンバーにも引き継いでいかなければならない」と想いを語る。

一方で近年、花王グループにおける経理業務の歴史の中でも稀に見るほどの大変革が起きているという。

例えば、AIの登場だ。

花王グループは問い合わせ業務の自動応答にAIによるチャットボットを活用しており、すでに6~7割の質問を自動処理することが可能になっている。その際、重要なのはいきなり全体導入することではなく、スモールスタートで部分最適させることだと上野氏は話す。

その理由は、部分最適により部門や業務固有の問題解決率が上がりやすく、現場のモチベーションが上がって横展開しやすくなるという好循環が生まれるからだ。また、エンジニアと開発現場をつなげることも重要であり、相互理解を促進することで活用のスピードアップにもつながるという。

また、花王グループはシチズン・デベロッパーの育成にも力を入れている。これは、エンジニアではない一般の従業員がノーコードツールやローコードツールを活用してアプリケーションを開発することを指す。

2023年5月現在ですでに700人近いシチズン・デベロッパーが誕生しており、3,000件近いアプリケーションが開発されているそうだ。

「電子帳簿保存法対応のモニター送付支援システムをノーコードで開発した社員もいます。このアプリは納品書や見積書が紙で送付された場合にOCRで内容を読み取り、必要な書類一式を提出して支払処理を進められるというもの。法令対応と業務効率化を同時に進めるため、ユーザーが自らアプリをつくり上げた好例と言えます」(上野氏)
積極的なトレンドへの対応 上野氏「一朝一夕にはいきませんが……」

さらに近年、話題になっているインボイス制度についても花王ビジネスアソシエはいち早く対応を進めている。

具体的には、課税請求書がインボイス制度に準拠しているかの確認や、免税事業者の請求書を正しい税区分で処理することなどの対応を行うほか、登録番号が架空の番号ではないか、あるいは課税事業者として登録されている番号かといった項目を調査し、正しい課税処理を実現しているのだ。

同社ではこうしたチェックを、スクラッチシステムによる会計システムとクラウドサービスによる会計システムの両方に対して実施していくという。

また、固有の業務に特化したAIの育成も進行中だ。例えば、文字認識のAI-OCRを用いた経理承認業務の自動化を目指している。もちろん、人の目による確認と修正作業が完全になくなるわけではないが、「自動化することで業務が可視化され、属人化していた業務品質を揃えられる」(上野氏)ことのメリットは大きい。

「これはまさにトランスフォーメーションの入り口と言えます。一朝一夕にとはいきませんが、イレギュラーをつぶしながら日々精度を向上させていきたいと考えています。(経理業務の効率化は)まだまだ人間の叡智や工夫が生かせる領域だと思っています」(上野氏)
○花王ビジネスアソシエが推進するPeppolのメリットとは

続いて上野氏が解説するのが「Peppol」である。

Peppolとは請求書などの電子文書をネットワーク上でやりとりするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様だ。欧州各国から利用が始まり、現在ではオーストラリアやニュージランド、シンガポールなど30カ国以上で用いられている。

このPeppolを効果的に活用していきたいと上野氏は語る。

「データのやりとりを行うフォーマットをルール化した『EDI』という仕組みがあります。現在は各社がオリジナルのEDIを用いていたり、業界で共通したEDIを用いていたりしますが、私たちはそうした業界共通EDIを尊重しつつ、Peppolも上手く使っていきたいと考えています」(上野氏)

同氏によると、Peppolは従来のEDIにはないメリットを備えているという。例えば、これまでのEDIは年間でかなりのコストがかかっていたが、Peppolなら請求書1通あたり100円程度でやりとりが可能だ。また、従来のEDIを使いこなすにはシステム部門などのサポートが必須だが、Peppolであれば少ない知識と経験で扱える。また、従来EDIは業界や企業規模が壁になっていたが、Peppolならそうした障壁も少なく汎用性が高いのだ。こうした事情を踏まえて、上野氏は「なんとかPeppolを盛り上げていきたい」と想いを語った。
「倫理的な企業としての成長」を追求する

もっとも、花王ビジネスアソシエもまだ紙の請求書でのやりとりが全体の4割を占めているとのことで、ここには課題が残る。特に紙が主流なのは物流や広告・販促関係などの業種だ。この点は今後、デジタル化の価値を拡大することで対応したいと上野氏は考えている。

そもそも、デジタルに対する抵抗感は中小企業を中心にいまだ根強く残っている。その理由としては「外部パートナーが見つからない」や「自社の技術ノウハウの流出への懸念」などがある。

「外部パートナーについてはデジタル化をビジネスマッチングの機会として捉え、情報流出についてはベンチマークできることに価値があると考えれば、チャンスとも置き換えられるはずです」(上野氏)

こうした取り組みに加えて、花王ビジネスアソシエではさまざまなツールやプラットフォームの導入も進めている。

例としては、勘定照合やタスク管理、仕訳入力などの決算プロセスをデジタル化する「BLACKLINE」、インフォマート社のBtoBプラットフォーム、AI-OCRの「Remota」、経費精算ソリューション「SAPPHIRE」などである。

こうした取り組みを率先して行っているのは、「倫理的な企業として、これからも成長していきたいから」(上野氏)だ。

花王ビジネスアソシエが取り組む経理業務の変革は、いずれ大きなうねりとなって各業界へと拡大するだろう。そのときに備えて準備を進める意味でも、同社の事例は参考になるに違いない。

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