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自由研究にも人気! 「レモン電池」の仕組みや応用実験について解説

2023年08月11日07時47分 / 提供:マイナビニュース

●実は化学のさまざまな要素が詰まったレモン電池
身近な食品を電池の代わりに使えるレモン電池。使う食品の種類を変えるだけで実験の幅が広がり、電池の仕組みも理解できると、小中学生の自由研究でも人気の題材だ。

ところが、電池の仕組みを詳しく習うのは中学3年生になってから。インターネットで検索しても「イオン化傾向」や「電子」など難しい言葉が並んでいて、大人でも理解するのがひと苦労だ。

この記事を最後まで読めば、学校でまだ「電池の仕組み」を習っていなくても(もちろん時間が経ちすぎて忘れていても)、レモン電池を通じて身近な電池との違いや仕組みについても理解できるはず。予習としても、科学への興味を刺激するきっかけとしても良いはずだ。
そもそも「電池」とは?

まずは、電池とは何かを振り返っておこう。電池とは、平たく言うと“電気を生み出す装置”だ。

電気の流れは「電流」である。小学校で電流はプラス極からマイナス極に向かって流れていると習うだろう。その電流の正体は、マイナスの電気をもった微小な粒(=電子)の大移動だ。その移動する電子の数が多いほど、大きな電流が流れる。

今回の題材のレモン電池キットに入っているメロディIC(電子オルゴール)の場合、生まれて運ばれる電子の数が多いほど、より大きな音が鳴る。

亜鉛板と銅板を使ったレモン電池の場合、電子が生まれるのは亜鉛板だ。そこで生まれた大量の電子は、リード線を通ってメロディIC、銅板へと流れていく。これが簡単なレモン電池の仕組みだ。

レモン電池の仕組み

ここからは「なぜ銅板でなく亜鉛板から電子が生まれるか?」「銅と亜鉛でなくても良いのか?」「レモン以外でも電気が流れるのか?」といった疑問を解説していこう。
○レモン電池の化学反応

レモン電池の中で起きる変化は、大きく分けて2つ。マイナス極で亜鉛板が溶けていく変化と、プラス極付近で水素ガスが出てくる変化だ。これらの変化を、中学校で習う化学反応式を使って説明してみよう。

マイナス極の化学反応式では、亜鉛が溶けて亜鉛イオンと電子に分かれたことを表している。一方のプラス極の化学反応式は、水素イオンが電子を受け取って、水素ガスに変わることを意味している。
○レモンの役割

レモンは、電子とイオンを運んで電気を流す役割を担っている。電気を流す液体のことを「電解液」と呼ぶ。この電解液は、液体型の電池にはなくてはならない存在だ。もし純水に亜鉛板と銅板を差し込んだとしても、それは電池にはならない。

マイナス極の化学反応式で登場する水素イオンは、レモン果汁に含まれる水素イオンだ。そしてレモン電池における電解液は、レモン果汁そのものなのだ。
○金属板の役割

ここまでの内容を読んできて、マイナス極の亜鉛板に関する説明は出てきたが、プラス極の銅板はなぜ必要なのか不思議に思ったかもしれない。そんな銅板は、レモン電池のなかで表立っては活躍していないが、亜鉛板から電子を発生させるために重要な役割を果たしているのである。

もし銅板をアルミニウム板に変えたり、両方とも亜鉛板にしたりすると、レモン電池は動かなくなってしまうだろう。亜鉛とアルミニウムの組み合わせや、亜鉛同士の組み合わせでは電子が生まれないからだ。

金属は、溶けると金属イオンと電子に分かれる。高校化学で習う「金属のイオン化傾向」は、金属を溶けやすい順番に並べたもので、左にある金属ほど溶けて電子が出てきやすく、イオン化傾向が離れていればいるほど多くの電子が生まれる。

例えば、亜鉛と銅は十分に離れているから、どちらかの金属が溶けて電子が生まれるだろうと予想できる。さらに亜鉛と銅を比べると、亜鉛の方が左にあるため、溶けてイオン化しやすいことが分かる。

つまり金属のイオン化傾向を知っていれば、亜鉛と銅を組み合わせた電池の場合に、亜鉛が溶けて亜鉛イオンになり電子を生み出すことが説明できることになる。
レモン電池を使った応用実験も解説

レモン電池の仕組みを実感するためには、応用実験をしてみるのが1番だ。難しい理屈は理解できなくても、自分なりの法則を発見できれば子供も楽しめる。科学の面白さを実際に味わえる実験を2つご紹介しよう。
○材料の種類を変えてみる

まずは、先ほども話題にあがった金属の種類を変えてみよう。生まれる電子の量を変える実験だ。金属板の代わりに硬貨を使ってみても良いのだが、錆びているとうまくいかない可能性が高いため、なるべくピカピカの状態の硬貨を使うことをおすすめする。 そのほか、フォークやアルミホイルなど身近な金属で試してみても良いだろう。

また逆に、レモンをオレンジやリンゴ、豆腐に変えてみるのも面白い。電解液を変えることで、運ぶイオン・電子の量を変える実験だ。水分の多い食べ物の方がイオンや電子を運びやすいので、メロディICの音が大きくなるだろう。ジュースや炭酸水、醤油などで試してみても面白い。pHが小さい液体ほど、強い電池となるはずだ。ただしここで注意。実験に使った食材には金属が溶け出しているので、絶対に食べたり飲んだりしてはならない。
○材料の数を変える

亜鉛板、銅板、レモンの組み合わせのままでも応用実験はできる。例えば、レモンと金属板の数を増やして直列につなぐことで、メロディICの音は大きくなる。この実験だと、直列つなぎによって電池が生み出す力が大きくなったと実感できるだろう。小学4年生で習う「電流のはたらき」の予習・復習にもぴったりだ。

さらに、金属板と果肉が触れ合う面積も電池の強さに関係している。金属板を大きくしたり、より奥に差し込んだりすると、より多くの電子が生まれる環境が出来上がり、強い電池になることが実感できるだろう。

●世界初の電池もメカニズムは一緒だった?
レモン電池と普段使っている電池の違いは?

電池には大きく分けて「化学電池」と「物理電池」がある。アルカリ乾電池やボタン形電池は化学電池だ。化学電池は、化学反応によって生まれる化学エネルギーを電気エネルギーに変える。

つまりレモン電池は、化学電池の一種だ。化学電池を作るために必要な最低限の材料は、それぞれプラス極とマイナス極になる金属2種類と、電解液の3つ。レモン電池でいえば、銅板、亜鉛板、レモン果汁がそれぞれの役割にあたる。

ちなみに、プラス極とマイナス極、電解液の3種類だけで作られた世界初の化学電池は「ボルタ電池」という。レモン電池は、そのボルタ電池の亜種といえる。
○世界初の化学電池「ボルタ電池」

ボルタ電池は、1800年にイタリアのボルタ氏が発明した。ボルタ氏は、食塩水に浸した紙を2種類の金属で挟み、電気を流すことに成功したという。さらにボルタ氏は研究を重ね、食塩水の代わりに希硫酸を用い、使用する金属を銅と亜鉛にする組み合わせで、最も大きな電気が生まれることを発見した。

ボルタ電池の誕生からおよそ70年後、日本人の屋井先蔵氏とドイツ人のガスナー氏が、相次いで乾電池を発明した。乾電池はボルタ電池とは異なり、液体を使わない。持ち運びができて安全性も高い乾電池は、その後の電化製品に多く使われることとなった。

アルカリ乾電池の誕生は1947年。リチウムイオン二次電池が生まれたのは1990年代と、ごく最近のことだ。コンパクトでありながら従来品以上の電気を生み出せる安全な電池の開発は、今も進められている。
レモン電池を活用して化学を体験してみよう

レモンに亜鉛板と銅板を差し込むだけで電池を作れるレモン電池。その仕組みは、約200年前に発明されたボルタ電池と変わらない。

亜鉛板はマイナス極、銅板はプラス極、レモン果汁は電解液としての役割を担っている。金属材料を変えることで電池としての動きが変わることもある。これは、金属のイオン化傾向の違いによるものである。

レモンを他の食べ物に変えても電池として働くことが多い。イオンや電子をより多く運べる食べ物のほうが、強い電池を作れるだろう。電池としての能力の高さは、生み出す電子の量と、運べるイオン・電子の量によって決まるのだ。果たしてどんな食べ物が電池材料として優れていくのか、探ってみるのも面白い。

今回の記事では、レモン電池を活用した発展学習として、中学・高校・大学で習う内容についても解説した。電池の仕組みの基礎は、すべてレモン電池と同じだ。もし面白さを感じたら、ぜひとも身近な電池の材料やメカニズムを詳しく調べてみてほしい。

本文中に登場した化学用語のプチ解説

記事中に登場した化学用語について、少し簡単に解説する。復習などに活用していただきたい。
○電流・電子

電流の正体は電子の大移動だ。ただし、電流の向きと電子の流れる向きは逆方向になる。電流はプラスからマイナスへ流れるが、電子はマイナスからプラスへ流れるので、お間違いなく。
○亜鉛

亜鉛は金属の1種で、電池以外にも建築材や加工品に用いられることが多い。例えば真鍮は、亜鉛と銅を混ぜ合わせたものだし、トタンは鉄を亜鉛で覆ったものなのだ。
○水素

水素は無色・無臭・無毒の気体で、地球上の気体の中で最も軽い。燃焼したときに水のみを排出することから、最近では水素をエネルギーとして活用する研究開発も進められている。
○イオン

プラスまたはマイナスの電気をもっている微小な粒を、イオンと呼ぶ。粒の電子が少なすぎたり、逆に多すぎたりすると、電気をもつようになる。例えば金属は溶けると電子が出ていってしまうので、プラスの電気をもった金属イオンになる。
○純水

純水とは、不純物をほとんど含まない水のこと。水道水やミネラルウォーターは純水とは言えない。今回の実験で用いる場合には、ドラッグストアなどで精製水を購入して使ってみると良いだろう。

岸小春 きしこはる 大阪大学大学院基礎工学研究科を修了。専門は表面化学、有機デバイスの基礎研究。印刷技術を活用し、さまざまなエレクトロニクス分野を手掛ける企業にて、最先端のセンサ開発にチームの一員として従事した後、退職。現在はフリーライターとして活動している。ブラックボックスになりやすい科学技術の中身を、誰にでも分かりやすく伝えることが目標。 この著者の記事一覧はこちら

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