2023年07月25日11時00分 / 提供:マイナビニュース
●「本気を出したら誰も笑わない」 手を抜いたら笑うように
1993年にNSC大阪第11期を卒業し、お笑い芸人になってから30年の歳月が流れたケンドーコバヤシ。ピン芸人として独自の路線を突き進むケンコバだが「アクセルを全開に踏んだら誰も笑わない。こんな言い方をするとお叱りを受けるかもしれませんが、めちゃめちゃ手を抜いているんです。本気を出すことは30年前に捨てました」と語る――その真意とは?
2021年にケンコバが主催して行われたお笑いライブ「地獄寄席」。おどろおどろしい名の通り、地下で這いつくばっているがケンコバが「面白い」と思う芸人を、日の目に浴びさせたいというコンセプトのもと行われた。2年後、第2弾「地獄寄席LEVELII」(8月17日 座・高円寺2)を開催するということは、前回大きな反響があったということだろうか。
「前回はコロナ真っただ中で、みんなライブが終わったら足早に帰ったので、お客さんの反応も、メンバーたちの手ごたえも全くなかった。僕自身もまったく(笑)。まあ、手ごたえを感じるようなキャリアでもなく、やる前からこのぐらい受けて、このぐらいの満足感かなと思っている通りだったんですよね」
それでも第2弾が開催される。そこにはケンコバ自身も何か期待があるのだろうと思ったが、「全くないです(笑)」と否定する。
「単なる安請け合い。マネージャーが異動になると思っていたので『いいよ、やりますか』と答えたら、マネージャーが異動にならず、やることに(笑)。もうやらない前提でしたが、地獄というのは5層あるみたいなので、2番目の地獄をやるのもいいのかなと思います」
とはいえ、ケンコバチョイスの芸人。そこには、なにか浮上するきっかけを――という親心もきっとあるはずだ。
「ないですね。まあ、行きつくところがないだろうなという意味で引っかかったメンバーたち。ここで選ばれたというのは恥じるべきことなんです。ある意味でこの寄席で引導を渡すというか(笑)」
ケンコバらしい叱咤激励のように感じるが、独特の物言いと芸人としての立ち位置は、類を見ないほど個性的だ。それでもケンコバは「全然アクセルを踏んでいない」と語る。
「僕がアクセル踏んだらとんでもないことになってしまう。常人だと理解できない。その現実はデビューした時に突きつけられているんです。本気を出していたら誰も笑わない。むしろ怖いと思われていて。いろいろな人にお叱りを受けるかもしれませんが、そこから手を抜くようになりました。そうしたらお客さんが笑い出した。出力を絞ったら笑ってもらえたんです」
●アクセル全開のお笑いはもうやらない「仕事がなくなる」
本気を出さない方がウケるとわかり、全力を出すことをやめたケンコバ。それ以来、究極の笑いを追求しようという思いはないという。
「そんなことしたら仕事なくなりますから(笑)。だから全開にアクセル踏むことはないし、本気を出すことは30年前に捨てました」
それでも“お笑い”は大好きであり、芸人という仕事についていることには大きな感謝があるという。“お笑い”に対して非常にピュアである。
「この世界にいられてよかったなと思っています。この3年間、コロナ禍でお客さんがいなかったじゃないですか。でも僕は若手というカテゴリーにいたとき、客が全然入っていない劇場の方がやっていて楽しかったんです。純度が高いんですよね。だんだんファンができると、無垢じゃなくなるんです。簡単に言うと、客と交際できるのではないかとか、そういうことを考え出すヤツが出てくる」
お客さんがいないこと=純度が高いという考え。だからこそ、コロナ禍での観客のいないライブも楽しめたという。
「本気を出すことを捨てた」というケンコバだが、その結果生み出した笑いが支持され、芸人としての地位を確立した。そんな今だからこそ、また自身が「アクセル全開」で提示する“お笑い”に挑んでもいいのでは――と思うが、「そんな恥知らずなことはできません。僕は30年前に捨てると決めたんだから。でもそれはウケないのが嫌なのでない。僕は自分が面白いと思ってやったことが全くウケなくても何のダメージもないので」と言い切っていた。
■ケンドーコバヤシ
1972年7月4日生まれ、大阪府出身。1992年に大阪NSCに11期生として入学。1993年にデビュー。コンビでの活動を経て2000年にピン芸人としての活動を開始。『にけつッ!!』(読売テレビ・日本テレビ系)をはじめとする数々のバラエティ番組で活躍している。また、俳優として映画『パッチギ!』(2005)やドラマ『BOSS』シリーズなどにも出演している。
■ケンドーコバヤシ主催「地獄寄席LEVELII」
【日時】8月17日18:30開場/19:00開演 【会場】座・高円寺2 【チケット】前売5000円/当日5500円 ※配信チケット2000円も販売(配信チケットの販売は8月10日~19日12:00、見逃し視聴8月19日19:00まで)