2023年07月24日10時00分 / 提供:マイナビニュース
●実際のホストクラブを訪れて役作り
幼少期から中国武術を習い、類まれなる身体能力で、映画初出演となった『太秦ライムライト』をはじめ、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での暗殺者・トウ、Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2のリサなど、アクション女優として着実に実績を重ねてきている山本千尋。そんな彼女が、傾きかけている埼玉のホストクラブを立て直す超敏腕コンサルタント役として、連続ドラマ主演を務めるのが『埼玉のホスト』(7月25日スタート、TBS系 毎週火曜25:00~25:30)だ。山本にとって女優活動10年目となる節目に挑んだラブストーリー&青春コメディ。「アクションと同じくらいコメディは難しい」と語っていたが、おじけづかずに度胸を持って臨めたのは、ある経験があったからだという――。
『埼玉のホスト』は、何をやっても中途半端だった埼玉のホストクラブ「エーイチ」を舞台に、買収危機にあるホストクラブを立て直すためにやってきた超優秀コンサルタント・荒牧ゆりか(山本)が、自身でスカウトしたちょっと変わったホストたちと、クラブを立て直そうと奮闘する物語。山本演じるゆりかは、超優秀ながら「人を信用するより、数字を信じる」というドライで冷徹な女性だ。
「ゆりかは、しっかりと正論を言う女性。その言葉に説得力を持たせるためにどうしたらいいのかは悩みました。立っているだけで優秀なバリキャリだと分かってもらえるような佇まいも研究しました。自分史上最もセリフが多く、一つ一つの言葉が浮かないようにするためには、しっかりと理解しなければいけないというところから始めました」
慣れない言葉を“覚える”だけではなく、体から湧き出るように発すること。さらにはホストクラブという題材のため、リアルにホストクラブに出向き、現場体験もした。
「実際行ってみると、皆さんすごく丁寧で、嫌な気持ちには絶対させられない。本当に素敵に接客していただいたので、この作品を良いものにしたいという気持ちが強くなりました」
山本と言えば、これまでアクション女優としての認知度が高かった。実際大河ドラマ『鎌倉殿の13人』やNetflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2で魅せたアクションシーンは、キレキレで圧倒的な画力を見せた。今回もそういった動きのあるシーンはあるのかもしれないが、基本は真逆の文科系女子だ。
「とてもありがたいことで、もちろんアクションは私にとってとても大切なものですが、これまでアクションありきの配役が多かったんです。そんななか、このような役柄、しかも膨大なセリフを言うなど、いままで経験したことがなかったような役柄で、主演として参加させていただけたことはとてもうれしかったです」
さらにもう一つ山本にとって大きな挑戦だったのが、同世代や年齢の下の人たちとの現場での立ち振る舞い。これまでは年下と接する機会が少なかったという。しかし、ゆりかがスカウトとするホスト・岩槻キセキを演じる関西ジャニーズJr.・Aぇ! groupの福本大晴は年下、歌舞伎町の人気ホストクラブ「ラブ2000」のNo.1ホスト赤坂ゲンジを演じる楽駆は同い年だったという。
「これまでどちらかと言うと、素敵な大人の先輩方に巡り合えて甘えさせていただいていたのですが、今作はとても若い人が多く、自分以上に『みんな楽しく現場に入れているのかな』とか『心配なことはないかな』という思いを撮影終わりの帰り道で考えていました。よりみんなで一緒に作品を作れているという気持ちを抱けたのは大きな学びでした」
●コメディは「アクションと同じくらい難しい」
デビューから10年目という節目の年に巡ってきた連続ドラマ主演。バリキャリというキャラクターでありながら、恋愛模様やコミカルな作風など、これまでの山本とは違う面を観ることができる。
「コメディって、すごく相手との間が大切だなと感じますし、アクションと同じくらい難しいと思うんです。今回は芸人の守谷日和さんなどもいらっしゃって、本当に1行のト書きでびっくりするぐらい場面を膨らませていて、笑いをこらえるのが大変でした」
山本自身、難易度が高いと感じているコミカルな場面でも、予想以上に思い切り演じることができた。そこには2020年に三谷幸喜氏が作・演出を務めたシットコム『誰かが、見ている』出演の経験が大きく活きているというのだ。
「『誰かが、見ている』はとにかく三谷さんを含め共演の方々も、みんな遊び心がすごくて、臨機応変に対応していかないと、とてもついて行けない。あの現場ではすごく鍛えられました。今回思った以上に、ここぞという場面で怖気づかないで、躊躇なくふざけることができたのは、『誰かが、見ている』の現場を経験していたからだと思います。しかも、度胸を持って演じた部分に対してOKを出してくださることが多かったんです(笑)」
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』で演じた羌象、『鎌倉殿の13人』での暗殺者・トウ、『今際の国のアリス』シーズン2のリサなど、ファンタジックで印象的な役柄を演じつつ、さらに本作では、日常にいるキャラクターで喜怒哀楽を表現し、また新たな山本の魅力が垣間見える。充実一途と言っても過言ではない活躍だ。
「俳優を始めて10年経ちますが、まだまだうまくいかないことだらけです。いまでもその感覚は強く、やっぱり難しい世界だなと強く思っています」と意外にも感じる言葉を発するが「でもだからこそ、俳優業は楽しいです。難しいからこそ、一つでも思いが叶うと、この上ない幸せなんです。とてもやりがいがあります」と目を輝かせる。
「成長できる機会を与えてくださるからこそ、頑張れるんです」と語った山本。「私の唯一の長所は、人に恵まれていること。これまでたくさんの素敵な先輩に巡り合えました。そして20代後半に差し掛かった今年、今度は『この子たちのために』と純粋に思える年下の子たちと作品を共にできました。年齢を重ね一つ新しい環境になったのかなと思うと、とてもうれしいです」と今後さらなるステージへの飛躍に思いを馳せていた。
■山本千尋
1996年8月29日生まれ、兵庫県出身。3歳から中国武術を習い、数々の世界大会で優勝。JOCジュニアオリンピックカップでは「長拳」「剣術」「槍術」の3種目3連覇の実績を持つ。女優をはじめてからは、持ち前の身体能力を活かし、多くの作品でアクションシーンを演じ、2015年に映画『太秦ライムライト』でベストアクション女優優秀賞を受賞。2022年、テレビ朝日系ドラマ『未来への10カウント』では、プロボクサーライセンスを活かした最強のライバル役を演じ、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』トウ役も話題に。映画『キングダム2 遥かなる大地へ』では羌象役、Netflixシリーズ『今際の国のアリス』シーズン2』ではリサ役を務めた。