旬のトピック、最新ニュースのマピオンニュース。地図の確認も。

ヨーロッパ企画・上田誠氏が語るテレビでの戦い方 “味方”を増やして劇団のチーム力が発揮できる作品に

2023年07月07日06時00分 / 提供:マイナビニュース

●自分たちの面白さを理解してくれる風土があるテレビ局
注目を集めるテレビ番組のディレクター、プロデューサー、放送作家、脚本家たちを、プロフェッショナルとしての尊敬の念を込めて“テレビ屋”と呼び、作り手の素顔を通して、番組の面白さを探っていく連載インタビュー「テレビ屋の声」。今回の“テレビ屋”は、劇団「ヨーロッパ企画」代表の上田誠氏だ。

劇団の活動だけでなく、近年では『魔法のリノベ』(カンテレ)などテレビドラマの脚本も手がける上田氏。演劇と違い、マスに向けたテレビというメディアに、どのような意識で臨んでいるのか。さらに、原案・脚本を担当する映画『リバー、流れないでよ』(公開中)で感じた“信頼関係”の果てにある景色とは――。

○■テレビ進出初期の悩みは…

――当連載に前回登場したオークラさんが、上田さんについて、「劇団での自由なノリのままテレビでもやっている印象で、自分のやりたいことに実直な感じが好きですね」とおっしゃっていました。

そういうことがかなう現場でお仕事できるように、持っていっているようなところはありますね。

――オークラさんとお仕事をされたことはあるのですか?

数カ月前にニッポン放送の廊下でお会いしたのが初めてで、ご一緒したことはなかったんです。東京03さんとか、おぎやはぎさんとかとお仕事をするたび、やはりオークラさんとずっとお付き合いされてきているので、その方々を通じて存在を感じていました。

――上田さんは劇団の活動から、どのような形でテレビのお仕事もするようになったのですか?

最初は関西のバラエティ番組などに(構成)作家として呼んでいただくようになったんです。バラエティには専門の作家さんがいて基本的に入る余地はないんですけど、ヨーロッパ企画を見てくださっているテレビ局の方々に見いだされて、ドラマの要素も含んだちょっと変わった企画に呼んでもらうようになりました。

――それから、本格的にテレビドラマの脚本も担当されるようになりました。

だんだん関東でも呼んでもらえるようになって。僕は脚本家として、劇団の役者も俳優として誘ってもらえるようになっていったんですけど、やっぱり劇団として作るものをそのままテレビでやれるのが理想だったんです。だけどテレビってわりとセクションで分かれているんで、バラエティの企画で呼ばれるとその中でドラマ的なことをやるのはなかなか難しいし、逆にドラマで呼ばれたらお笑い的なことができなくなるし、劇団を紹介するドキュメンタリー企画に呼ばれてもそれは作品を見せることとは違うから、テレビでは部分部分でしかできないなと悩んでいたのが、初期の頃でしたね。
○■「苦しい状況の中で解を出す」面白さ

――「劇団として作るものをそのまま」という理想がかなった作品は何ですか?

『ヨーロッパ企画の26世紀フォックス』(14年)というのをフジテレビでやらせてもらったんです。上野樹里さんをお迎えして、実験的な映像作品を撮って、それを作った制作会社のシチュエーションコメディをやるという番組だったんですけど、それがキー局で一番最初にやらせてもらった劇団らしい番組ですね。そこから「番組募集」という形で声がかかるようになってきて、自分たちで企画を作って劇団の役者が出演もして、という形が増えていきました。

――なかなかテレビでパッケージのように制作に携われる劇団は当時なかったですよね。とは言え、テレビというマス向けのメディアでは、演劇の世界とは作り方もだいぶ違うのではないかと思います。

演劇はニッチだけどそれを好きな熱狂的な人が集まるという場所であるのに対して、テレビは特に時間帯が上がれば上がるほど広く楽しんでもらえるものを作らなきゃいけない。でも、僕らはそもそもマイナーから始まっているから、地元の局なら低予算で番組を作らせてもらえるんじゃないかと思って、KBS京都さんに持ちかけて始まったのが『ヨーロッパ企画の暗い旅』(2011年~)です。そこから局や時間帯によって自分たちがやりやすい場所を探してやっていくという戦い方に変わっていきました。

――フジテレビの深夜で、実験的な作品に精力的に取り組んでいる印象がありますが、そういうものづくりがやりやすい局なのでしょうか?

そうですね。フジテレビさんとは相性がいいというか、自分たちのような面白さを理解してくださる風土があるような気がします。でも、番組が成立する過程って一通りじゃなくて、「たまたま枠が空いたからお願いします」ということもあれば、「ここで情報番組を作らなきゃいけないけれど、これさえクリアすれば何やってもいいです」「予算は非常にないけれど、何かやって良さそうです」「主役はこのタレントさんで決まってますが、あとは楽しいことやりましょう」とか、いろんな依頼が来るんです。僕らのやり方に共感してくださる方は、「これができればこの枠、行けそうです」みたいな感じで投げてくださるから、何もないまっさらな状態から番組を考えましょうということがあんまりなくて、隙間狙いですね。

――制約の中でいかに面白いものを作るかというところで、燃えるんですね。

整合性を合わせて、苦しい状況の中で何か解を出すというところだけは、ちょっと天才的なところがあるかもしれないです(笑)。その代わり自由演技はめっちゃ苦手なんで、そこが悩みですね。

●『魔法のリノベ』でニッチ×マスの課題に手応え
――個人の脚本家としては『魔法のリノベ』(22年、カンテレ)で、プライムタイムのドラマも担当されています。

ヨーロッパ企画の作品を劇場とかで見てくださって、そこで共鳴してオファーしてくださる方が、ありがたいことにいらっしゃるんです。僕が脚本家として呼ばれつつ、メンバーもレギュラーキャストに入れていただいたりして、劇団ぐるみで作っているようなカラーに持っていってくださいます。テレビドラマは、制作期間にバッと集まって作るものですけど、やっぱりチーム感を出したい。そういうときに劇団というのは一役買っていると個人的に思ってるんです。もちろん、僕個人で呼ばれて戦わなきゃいけないことが多いんですけど、ヨーロッパ企画というチームを面白がってくださる方々と組んでやっているうちに、そういう場所が増えてきた感じですね。

――ご自身の色を作品に出すのと、テレビ局のプロデューサーからの「こういうほうがテレビではウケるんです」といった意向と戦うような場面はあるのですか?

僕はあんまりないですね。結局、視聴率が著しく低いと全体の士気にも関わるし、最近はお客さんが視聴率の記事とかを気にするような時代にもなってるので、そこはプロデューサーさんをはじめテレビ業界の方の知恵を借りていくという感じです。

『魔法のリノベ』でいうと、誘っていただけたのはうれしいし、気概を持ってやってましたけど、「リノベーションをテーマにしたドラマ」というのは、上田以外でも書ける作品だと思うんです。そこに、いかにして自分の色を入れていくかというふうに考えたくなってしまうけど、必ずしもそれをやる必要はなかったりするから、いつも悩ましいです。表現者としては自分たちが作りたい色を入れたいけど、マスになればなるほど色を消さなければいけなくなってきますから。

――でも、『魔法のリノベ』での、まるふく工務店の社員たちのやり取りのシーンは演劇っぽくて、上田さんの色を入れているように感じました。

あそこはすごく意識しました。それはチームの皆さんがそうさせてくださったんです。以前やった『ドラゴン青年団』(MBS)というドラマでは、東京タワーにドラゴンが現れ、静岡の街では銭湯の壁画が魔物を倒すためのアイテムを探す地図になっているという、現実がファンタジーになるドラマを書いたんです。自分では死ぬほど面白いと思ってたんですけど、ぼんやりテレビをつけた人が出会ったときに、そこでチャンネルを止めるということになったかは微妙で、視聴率をとらなきゃいけないという役割が果たせたのだろうかと悩ましくて、『魔法のリノベ』をやるときは遠慮してたんです。

しかも、これまでやったことのない浅い時間帯だから、まずはそこのしきたりを知らなきゃと思って、この枠ならどういうことが喜ばれるかということに全部従おうと思ってたんですけど、むしろ「どんどん(上田さんの色を)入れてください」って言ってくださって。ファンタジーシーンを入れたら、うっかりキョトンとされることもあったんですけど(笑)

――制作陣の信頼を得て、執筆に臨めたんですね。

長年やっていると、少しずつ“味方”が増えてくるんです。出演者もそうで、波瑠さんとは以前『ノーコン・キッド』(テレビ東京)というゲームドラマでご一緒して、深夜だから尖ったことができてたんですけど、プライム帯で改めてご一緒するときに、当時のことが少しでも残ってるから「あれを書いてた人ね」っていう感じで入ってくださったと思います。だから、時間帯が浅くても「結構これ書いても通じるかも」というのが増えた感じがありました。

――『魔法のリノベ』で、次につながる手応えをつかんだ感じでしょうか。

あの枠で放送されるドラマとして、今できる最善のものを作れた気が自分としてはしています。SNSもすごく盛り上がってくださって、良いものを作れた手応えがあるし、「同じチームでまたやりましょう」と言ってくださるのは、ちゃんと求められていることができたのかなと。演劇においても自分のやりたい面白いことは結構ニッチな感覚があって、それをどうやってより多くの人が楽しんでもらえる形にするかがずっと自分の課題でもあるから、『魔法のリノベ』はうれしかったですね。

○■テレビを経験して舞台は「もっとフルスイングしていこうと」

――テレビも最近は「世帯視聴率」一辺倒だったところから、コア層やTVerの再生回数なども評価指標になってきた中で、劇団との親和性が高まってきている感覚はありますか?

最近は視聴率も昔に比べたら高くないという中で、SNSで盛り上がるとか、熱を持って見てくれるとか、そういうことが評価につながってきている部分があると思います。テレビ局の収益構造も変わってきて、例えば映画と結びつけたり、舞台と結びつけたりして、ターゲットを絞って商売を成り立たせるというスタイルになってきているので、僕らとしてもちょっとやりようはでてきたかもしれません。

――これまでテレビのお仕事をされてきて、印象的な制作者はどんな方ですか?

僕は、ドラマやバラエティなどいろんな要素が混ざったものが作れたらうれしいんですけど、そういうことって普通にしてると起こらないんです。だから、ドラマの世界で素晴らしい方はたくさんいて、バラエティでも面白いなあという人たちがいっぱいいるんですけど、そのジャンルを越境しようと頑張っている方々に、ほれぼれしますね。

その点でいうと、直接一緒に番組を作ったことはないんですけど、佐久間(宣行)さんはバラエティから始まって、ドラマや音楽の領域でも力を使って、バラエティの人たちだけじゃできないことをやっている印象があります。オークラさんもそうですよね。越境されている。こういうのって、NHKのEテレとかだと「教育」というジャンルを超えた目的があるから、ドラマとバラエティと人形劇の間みたいなものを作りやすかったりするんですけど、それを色んな局や場所でされているイメージですね。

――Eテレだとヨーロッパ企画さんで、紙人形劇の『タクシードライバー祗園太郎』とか『趣味の園芸 京も一日 陽だまり屋』みたいな番組をやってらっしゃいますね。

そうです、ああした番組は劇団の総合力を使えて面白いです。あと、『しくじり先生』を手がけられたテレビ朝日の北野(貴章)さんは、ドラマとか物語が好きな方で、時々誘っていただくんですけど、それで『澤部パパと心配ちゃん』という情報番組の枠を借りた“舞台劇バラエティドラマ”みたいなことをやらせてもらいました。北野さんのやろうとすることはそういうチャレンジングなことが多い印象です。

――テレビのお仕事をされて、舞台に生きることはどんな点があるでしょうか?

「テレビでここまでできるなら、舞台はもっと変わったことやっていいかも」と思うようになりました。テレビはタダで見られるけど、舞台はわざわざお金を払って見に来てくださるくらいコンテンツへの意識が高く、何か面白いものを見に来るのが好きな人たちだから、そういう熱い客席にはもっとフルスイングしていこうと考えるようになったかもしれないですね。

――テレビによって舞台にお客さんを呼んでくるという効果はありますか?

どれくらい表れているか分からないけど、あるような気はします。ただ、テレビを見る作業と舞台を見に行く作業は全然違う気がして。映画と舞台だったらチケットを買ってみるという行為が近いからそういうのは感じますけどね。それでも、テレビを見た人がSNSや動画を見てくれるんだとか、ちょっとずつ分かってきた感じですね。

●波瑠がセリフ一言一言に表情を付けてくれた

――テレビドラマのお仕事をしてきて、特に印象に残る俳優さんを挙げるとすると、どなたになりますか?

『魔法のリノベ』で、波瑠さんがすごく良かったですね。あのドラマが難しかったのは、クライマックスがプレゼンのシーンになるんですよ。例えば、離婚もののドラマだったら、クライマックスでケンカしたり感情のぶつけ合いになるから、生っぽい言葉が書きやすいと思うんですけど、営業ってやっぱりフォーマルな場所なので、あんまり言葉で遊べないんですよね。波瑠さんが演じた小梅というキャラクターは職業意識が高くて、お客さん向けの言葉をちゃんと言う人だから、そこが結構悩ましかったんですけど、ある種崩せなかったセリフの一言一言に表情を付けてくださったから、一見平坦に聞こえるセリフでも「そういう色の付け方があるんだ!」って感動したんです。

――コメディの勘といったところは、いかがでしたか?

笑わそうとするんじゃなくて、必死でそれをやるとか、全力で向かってるとか、マジでやってることが角度を変えると非常に間抜けに見えるっていうのがコメディだと思うんですけど、そこの肌感も備えてらっしゃいました。コメディシーンをコメディっぽくやる人はいっぱいいるし、それはそれで1つの方法なんですけど、波瑠さんはどのシーンも一貫して「小梅」というキャラクターを真摯(しんし)に演じていらした印象で、プレゼンの場面のシリアスなシーンとコメディシーンも自然とつながるし、コメディシーンではとてもチャーミングに見えるというのがありました。
○■『リバー、流れないでよ』貴船一帯で撮影できた理由

――原案・脚本を手がけた映画『リバー、流れないでよ』が公開中ですが、「2分間のループから抜け出せなくなってしまった人々の混乱を描く」というユニークな構成はどのように発想されたのでしょうか?

わざわざ映画館に足を運んでもらってまでお客さんに何かを見せるときに、僕らは演劇でもそうしているんですけど、“奇襲攻撃”を仕掛けるという作戦がありまして。(ヨーロッパ企画長編映画第1弾の)『ドロステのはてで僕ら』とか、今回の『リバー~』は、“知らない人たちが何か極端なものを作ってて、珍しいけど面白いらしいぞ”という風にして興味をひこうと、なるべく企画性が尖ったものをやるようにしてるんです。

そんな中、『26世紀フォックス』で誘ってくれたフジテレビの野崎(理)さんという方がずっと僕らと仕事をしてくださっていて、最近では『サマータイムマシン・ハズ・ゴーン』(21年)という時間モノの短編集を作らせてもらったんですけど、テレビの場を使って実験的な作品作りをしてきた中で、時間モノを映画にすることは自分たちに向いてるかもしれないと思ったんです。僕らの劇団の拠点でもある京都はいい風景が撮れるし、映画だから海外に出品することを考えてもいい場所だなと。それと劇団なので、群像で芝居をするとか、カットを細かく割るより長く芝居をするというほうが僕らの得意技でもあるとか、いろんなことを考えてこの形になりました。

――ロケ地である京都の貴船はすごく良いロケーションですよね。

貴船は主演の藤谷(理子)さんの地元でもあるんです。彼女が所属してる劇団ということで、なんとなくヨーロッパ企画を知ってくださったりしたご縁もあって、料理旅館や神社をお借りできて、周りの建物や道沿いも撮影で使わせていただけることになったりと、全面協力いただきました。夏は繁忙期だから冬に撮影させてもらってたんですけど、コロナ明けでインバウンドのお客さんが結構いらっしゃって、なかなか大変でした。

――貴船一帯が大規模に撮影協力してくれた事例は、ないのではないでしょうか。

見たことないですよね。あそこまで協力していただけたのはすごいことだと思いますし、関係性によってカメラが入っていける、というのはテレビも同じかもしれないなと思いました。撮影隊って基本的には“招かれざる客”というか、なかなか打ち解けないとカメラが入れない場所っていっぱいあるんです。場所じゃなくても、例えば芸人さんが慣れたディレクターさんや作家さん、共演者じゃないと見せないノリがあったりして、コミュニケーションでたどり着ける奥の奥が出てる番組のほうがやっぱり面白いじゃないですか。それは映画も一緒で、この風景を撮るとか、この俳優さんにこういう表情を見せてもらうというのは、やっぱり信頼関係の果てにある景色なんですよ。京都の貴船っていうのは直感的に選んだんですけど、他のチームだったらもしかしたらここまでいい画は撮れなかったのかなと思いますね。

●いろんなところを“劇場”にして活動する劇団に
――今後テレビでこんな作品を作ってみたいというものはありますか?

関西出身なのもあって、もともとお笑いが好きなんですよ。学生の頃は吉本の劇場に見に行ったりとか、今でもドラマよりバラエティばっかり見てるくらい好きで、劇作家にしては芸人さんとの接点があるほうだと思います。そんな芸人さんのパワーってすごいから、そこと物語を掛け算することで何かできる気がするんです。そこにはいろんな人が挑戦してて、コントをドラマ風に撮ってみたり、ドラマに芸人さんを出すというのをやっていたりしていますよね。

――それこそ佐久間さんとか、上田さんと『あいつが上手で下手が僕で』を一緒にやっている元日テレの橋本和明さんとか。

そうですね。「キス我慢選手権」を映画にしたりとか、橋本さんとも新しいことをしようとしています。そうやって芸人さんというポテンシャルの高い社会集団と物語をうまく接続して何かやりたいというのが、すごくありますね。

――テレビの制作者の方と話していると、最近の芸人さんは演技力がすごいと、口をそろえておっしゃいます。

やっぱり熱いジャンルに才能が集まってくると思うんですよ。熱いものは時代によって変わるんですけど、それが今芸人さんの世界だと思うんです。才能のある人って何でもできるから、演技だってできるし、海外で評価される人もいるし、小説で芥川賞を獲る人もいるんですよね。

それと夢としてあるのは、劇団が舞台だけじゃなく、スクリーンとかテレビ画面とかいろんなところを“劇場”にして活動できるというのがいいなと思うんです。関西でよしもと新喜劇というチームが毎週新作をテレビで放映している、かつてはドリフターズが『8時だヨ!全員集合』(TBS)で毎週舞台作品を生放送していた。そんなことが人類にとって不可能ではないなら、自分たちにもできるんじゃないかと思ってやっています。

――最近はYouTubeやサブスクのネット配信が勢いを増す中で、テレビはオワコンとも言われますが、そんな中でもテレビの魅力というのはどのように捉えていらっしゃいますか?

やっぱり“出会い”ですよね。僕らにとって舞台だけやってたら出会えない人たちに出会えるし、動画も実は広いようで狭い感じがするんですよ。お薦めされたものの中から選んだりはするけど、全く知らないものに出会うということがない中で、テレビは本当に偶然のお茶の間での出会いがある。視聴率1%でも全国放送だったら100万人というケタでお客さんと出会えるというのは、ちょっと類を見ないですよね。

その規模がすごいから、当然コードも厳しいわけで、知らない人のお家にお邪魔するわけだから、振る舞いや見た目には気を付けないといけない。でもそんなマナーを踏まえながら、濃いところを出せている作り手の人たちは本当にすごいなと思います。志村けんさんって、毎週1時間、日本中に“志村けん”を見せ続ける時間があったわけじゃないですか。それってなかなかすごいことだなと思うんですよね。

○■ドラマが勢いで成立した、かつてのテレビ

――ご自身が影響を受けたテレビ番組は何ですか?

『風雲!たけし城』(TBS)ですね。あれも1人の人が作った狂気の産物というか、出ている人たちがみんな素人で、「たけし城を攻略する」という壮大な企画性の中、あんなに大きな規模でバカげたことをやろうって、普通じゃなかなか通らないと思うんですよ。それと、『アメリカ横断ウルトラクイズ』(日本テレビ)も好きだったので、素人の人が活躍するのが好きかもしれないですね。『SASUKE』(TBS)は超人が出てくるからちょっとシンパシーからは遠くて、ヨーロッパ企画もあんまり超人がいない世界なんです。それでも、エンタテインメントですごいものができるというのが醍醐味で。

――どれもドキュメンタリー性がありますよね。

そうですね。『ほこ×たて』(フジテレビ)も好きで、一般の方がある角度を変えたらヒーローになるって、すごいなあと思います。

――ドラマはあまりご覧になっていなかったのですか?

ドラマはドラマで見てましたよ。今は戦略が細かくなっている感じがしますが、昔は「これ、勢いでやったんだろうな」みたいな感じがあったのが面白かったですよね。

――今ふと、「ストーカー」という言葉が出だした頃に、2局が同じクールにストーカーを題材にしたドラマを放送していたのを思い出しました(笑)

ありました! たまげましたよね(笑)。ああいうの、すごく面白いと思うんですよ。「ストーカーが出てきたから、ストーカーのドラマ作っちゃおう!」みたいな。そんな勢いもテレビの良さですよね。

――小さい頃からかなりテレビ好きだったことがうかがえるのですが、テレビの世界に行こうと考えたことはなかったのですか?

そこは成り行きで、大学時代に劇団を作って、どっかで続かなくなるだろうなと思って、そしたら放送作家を目指そうかなとか、勝手に人生を考えてたんですよ。でも劇団が続いちゃって、続いたら続いたで面白くて。劇団って1回解散したらもう組めないと思うんです。明日から劇団解散して小説家をやろうというのはできるかもしれないけど、その逆は難しくて。だから、この場は大切にしようと思って、劇団があるうちは劇団ファーストでやってますね。あまりにももったいない気がして。

――いろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…

関西テレビの岡光寛子さんです。『魔法のリノベ』でご一緒しましたが、底知れない方です。プロデューサーってキャスティングから予算管理、俳優さんのケア、進行管理、クオリティの担保、監督のお尻叩き、脚本家の手綱を持つとか、本当にいろいろな業務がある中で、「こんなところまで手が回ってるのか」「ここまで気を配られているのか」というのを、すごいレベルでやっている方。僕の変わった試みにも付き合ってくださるし、また一緒にやりましょうという話もしています。

次回の“テレビ屋”は…
カンテレ『ウソ婚』岡光寛子プロデューサー

続きを読む ]

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ネタ・コラムカテゴリのその他の記事

地図を探す

今すぐ地図を見る

地図サービス

コンテンツ

電話帳

マピオンニュース ページ上部へ戻る