2023年06月28日22時40分 / 提供:マイナビニュース
●国内参考価格は52,800円、RTX 4060無印のスペックをおさらい
2023年6月29日22時、NVIDIAの新ミドルレンジGPU「GeForce RTX 4060」の発売がスタートする。それに先駆けてパフォーマンス情報が解禁となったのでさっそくレビューをお届けしよう。比較対象として一つ上のグレードとなるRTX 4060 Ti(8GB版)、前世代のRTX 3060、AMDのRadeon RX 7600を用意。パフォーマンスや消費電力をチェックしていく。
GeForce RTX 4060は、2023年5月にRTX 4060 Tiと同時に発表済み。7月発売予定としていたが、前倒しになった。ターゲットはフルHDでのゲームプレイ。NVIDIAでは多くの人気ゲームをフルHDで快適に楽しめるとしている。まずは、スペックをおさらいしておこう。
一つ上のRTX 4060 Ti(8GB版)からCUDAコア数を減らしたもの、と言ってよいだろう。ビデオメモリはGDDR6 8GB、メモリバス幅128bitと共通点は多い。コア数が減ったことでカード電力は115WとRTX 40シリーズでもっとも消費電力が少ないGPUになっているのもポイントだ。5.3万円からの価格で、低消費電力、それでDLSS 3が利用できる、というのがスペックから見えるRTX 4060の強みと言える。
24MBの大容量2次キャッシュを備えることで、ビデオメモリへのアクセス頻度を減らし、性能とワットパフォーマンスを向上させている点はRTX 40シリーズ共通の特徴だ(RTX 4060 Tiは32MB)。前世代で同じグレードに当たるRTX 3060は、2次キャッシュはわずか4MBでカード電力は170Wとなっている。
なお、ハードウェアエンコーダーのNVENCはほかのRTX 40シリーズと同じく第8世代なのでAV1のエンコードに対応する。1基だけしか搭載していないので、2基備えるRTX 4090/4080/4070 Tiの同時使用することでエンコード速度を高める「デュアルエンコード」には非対応である点は注意したい。
そのほか、Ada Lovelaceアーキテクチャの採用など基本的な特徴はRTX 4090/4080/RTX 4070 Tiと同じだ。詳しく知りたい方はRTX 4090のレビュー「「GeForce RTX 4090」の恐るべき性能をテストする - 4K+レイトレで高fpsも余裕のモンスターGPU」で確認してほしい。
性能テスト前にMSIの「GeForce RTX 4060 VENTUS 2X BLACK 8G OC」を見ていこう。ファクトリーOCモデルで、ブーストクロックを定格の2,460MHzから2,490MHzに向上させている。カード電力は定格と同じ115Wだった。
○RTX 3060より約4割の性能アップで消費電力は20~30W低下
さて、性能チェックに移ろう。テスト環境は以下の通りだ。Resizable BARは有効にした状態でテストしている。比較対象としてGeForce RTX 4060 Ti Founders Edition、GeForce RTX 3060(8GB版)、Radeon RX 7600(リファレンス)を用意した。CPUのパワーリミットは無制限に設定。ドライバに関しては、RTX 4060はレビュワー向けに配布された「Game Ready 536.20」、RTX 4060 TiおよびRTX 3060は「Game Ready 536.23」、RX 7600は「Adrenalin 23.5.1」を使用している。
今回はビデオカードの消費電力を実測できるNVIDIAの専用キット「PCAT」を導入しているので、ゲーム系のベンチマークではカード単体の消費電力も合わせて掲載する。
まずは、3D性能を測定する定番ベンチマークの「3DMark」から見ていこう。
RTX 4060は、一つグレードが上のRTX 4060 Tiに比べて2~3割のスコアダウンだ。その一方で、RTX 3060のFire StrikeやTime Spyのスコアと比べると約4割アップと前世代からは大幅に性能向上したと言ってよいだろう。価格的にはRTX 4060より安くなるRX 7600に対しては、レイトレーシングがからむPort RoyalとSpeed Way以外ではいい勝負となっているのは気になるところ。実ゲームではどうだろうか。
●RTX 3060より約4割の性能アップで消費電力は20~30W低下
まずは、レイトレーシングやDLSSに対応しないゲームとして「レインボーシックス シージ」、「Apex Legends」、「オーバーウォッチ 2」を用意した。レインボーシックス シージはゲーム内のベンチマーク機能を実行、Apex Legendsはトレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレート、オーバーウォッチ 2はBotマッチを実行した際のフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。
レインボーシックス シージは、RTX 4060 Tiに対して約2割減、RTX 3070に対して約4割アップと3DMarkと同じ傾向だ。カード電力を見ると、フルHDではRTX 4060 Tiとほぼ同じ。RTX 40シリーズはグレードが下がるごとに消費電力も大きく下がって、優れたワットパフォーマンスを見せてきたが、RTX 4060ではそこまでのインパクトはない。それでも、RTX 3060より大きく性能向上しながら消費電力が20~30W少なくなっている点はさすがと言える。
Apex Legendはフレームレート制限を解除するコマンドを使っても最大300fpsまでのゲーム。ここも3DMarkと同傾向だ。フルHDターゲットのGPUだが、軽めのゲームなら4Kでも楽しめるフレームレートを出せる。
オーバーウォッチ 2もこれまでと同じ傾向だ。ただ、レインボーシックス シージやApex LegendsではRX 7600よりRTX 4060が上だったが、このゲームはRadeonが優位なようで逆転している。ゲームによっては、力関係が入れ替わることがあるということだろう。
続いて、2023年6月2日に発売された「ストリートファイター6」も試しておこう。CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「FrameView」で測定している。
ストリートファイター6は120fpsまで設定できるが、対戦時は最大60fpsまで。RTX 4060はWQHDまでならほぼ平均60fpsで動作、4Kでも平均56fpsなので十分プレイできるレベルにある。注目は消費電力だろう。フルHDではRTX 4060 Tiがわずか48.5Wと一番低い。今回の中で基本性能に一番優れているため、フルHDならわずかな消費電力で平均60fpsに到達できるということだろう。
●DLSS 3対応ゲームならレイトレ&高画質でも快適
○DLSS 3対応ゲームならレイトレ&高画質でも快適
ここからはレイトレーシングやDLSS 3に対応したゲームを試していこう。まずは、DLSSなどアップスケーラー機能を持たずにレイトレーシングに対応するゲームとして「エルデンリング」を実行する。リムグレイブ周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。
このゲームは最大60fpsだが、さすがにレイトレーシングを利用すると描画負荷は重く、フルHDでもRTX 4060で平均51fps、RTX 4060 Tiでも平均56fpsだ。なお、レイトレーシングをオフにすれば、RTX 4060はWQHDまで平均60fpsに到達が可能と、快適にプレイできる(4Kは平均36fps)。
続いて、レイトレーシングに対応、アップスケーラーはDLSSには非対応だが、FSR 2には対応する「STAR WARS ジェダイ:サバイバー」を試す。ゲーム開始直後のシーンを約60秒移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。
アップスケーラーのFSR 2を有効にしてもレイトレーシングを使うと描画負荷はかなり重い。RTX 4060ではフルHDでようやく快適なゲームプレイの目安である平均60fpsを超えられる。このゲームのフルHDに関しては、RTX 4060/4060 Ti/3060で消費電力があまり変わらなかった。消費電力もゲームによる部分がある。
次は、RTX 40シリーズの強みである「DLSS 3」を含めたテストを実行しよう。DLSS 3は、従来からの低解像度でレンダリングした映像を本来の解像度までアップスケールする「DLSS Super Resolution」に、AIでフレームを生成する「DLSS Frame Generation」を追加し、よりフレームレートを高められるようになったもの。フレーム生成はGPU側で行うため、CPUがボトルネックになるシーンでもフレームレートを向上できるのが強みだ。なお、DLSS 3はRTX 40シリーズだけで使える技術で、それ以外のRTXシリーズではDLSS 2(DLSS Super Resolution)までの対応になる。
まずは「Microsoft Flight Simulator」、「サイバーパンク2077」を試そう。Microsoft Flight Simulatorはアクティビティの着陸チャレンジから「シドニー」を選び、60秒フライトしたときのフレームレート、ゲーム内のベンチマーク機能を実行したときのフレームレートをそれぞれ「FrameView」で測定している。RX 7600はDLSSに対応していないので、FSR 2を使用した。
フレーム生成が加わったDLSS 3の威力がよく分かる結果だ。Microsoft Flight SimulatorのフルHD解像度に注目すると、RTX 4060は平均50fpsから平均119fpsを2倍以上フレームレートが向上している。それに対してRTX 3060はフレーム生成に対応していないこともあり、わずか14fpsアップしただけ。約1.35倍の向上にとどまった。
サイバーパンク2077だと、描画負荷がより高いこともあってDLSS 3の効果がより高くなる。RTX 4060のフルHDは、DLSSを有効にするとフレームレートが約3.2倍もアップ。WQHDまで平均60fps以上に到達できており、重量級ゲームも快適にプレイできる。RTX 3060もDLSSを有効にすることでフレームレートは向上しているが、それでもフルHDで平均60fpsには届かない。ちなみに、DLSS無効時だとRTX 4060やRTX 4060 Tiの4K解像度の消費電力が異常に低いのは、描画負荷が高すぎてまともに動作していないためだ。
続いて、大ヒットとなった「ディアブロIV」を実行しよう。レイトレーシングには対応していないが、DLSSやFSRといったアップスケーラーを利用可能になっている。キヨヴァシャド周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「FrameView」で測定した。
それほど描画負荷が高いゲームではないので、DLSSを使わなくてもRTX 4060はフルHDで平均147fps、WQHDで平均100fpsと快適にプレイできるフレームレートを出せている。DLSSを有効にすれば、4Kで平均83fpsに到達できるのがポイント。4Kで遊びたい場合にDLSSを活用するのがよいだろう。DLSSを有効にすると描画負荷が下がって、消費電力も下がるのもポイントと言える。
●エンコード性能はRTX 4060 Tiと同等、動作温度は?
○エンコード性能はRTX 4060 Tiと変わらず
ここからはクリエイティブ系の処理をテストする。まずは、3DCGアプリの「Blender」を使ってGPUによるレンダリング性能を測定する「Blender Open Data Benchmark」を実行しよう。
一定時間内にどれほどレンダリングできるのかをスコアとして出すベンチマーク。すべてのテストでRTX 3060を上回った。そして、RX 7600より2.5倍以上のスコアを出している。
次はベンチマークアプリの「Procyon」に追加された「AI Inference Benchmark」を実行しよう。これは、GPUを使ってさまざまなAI処理を行いスコア化するもの。Windows上で機械学習を行うためのAPIである「Windows ML」とNVIDIAの機械学習を高速に実行するためにSDKである「TensorRT」の両方で試した。なお、RX 7600はTensorRTに対応していないので、Windows MLだけ実行している。
このテストでもRTX 3060に対して約1.4~1.5倍のスコアを出しており、AI処理についても最新世代のGPUのほうが強いのが分かる。
続いて、GPUのハードウェアエンコーダーによる動画エンコード性能をチェックしてみたい。動画編集アプリの「DaVinci Resolve STUDIO 18」でApple ProResの4K素材を使ったプロジェクト(約2分)をそれぞれH.264、H.265、AV1に変換する速度を測定してみた。RTX 4060/4060 Ti/3060は品質:80Mbps/Rate Control:固定ビットレート/Preset:速度優先の設定で、RX 7600は品質:80Mbps/Rate Control:固定ビットレート/Preset:Prefer Speedの設定でエンコードを実行している。
RTX 4060とRTX 4060 Tiは第8世代のNVENCが1基だけなので、エンコード速度もほぼ同じだった。その一方で、RTX 3060のNVENCは1世代古いのでH.264/H.265のエンコード速度はかなり遅くなり、AV1のエンコードには対応していない。RX 7600はハードウェア的にはAV1のエンコードに対応しているが、DaVinci Resolve側がまだ未対応となっている(ベータ版では対応)。
○「xxx60」シリーズとしては優秀だが、価格は高め
最後に温度とクロックの推移をチェックしよう。サイバーパンク2077を10分間プレイした際の温度と動作クロックの推移を「HWiNFO Pro」で測定している。GPU温度は「GPU Temperature」、クロックは「GPU Clock」の値だ。室温は24度。バラック状態で動作させている。
ブーストクロックは2,685MHz前後で推移。仕様上のブーストクロック2,490MHzなので、ゲーム中はそれよりも高クロックで動作していた。温度は最大69度、67度前後で推移と2スロット厚のクーラーとしては十分な冷却力だ。
と、ここまでがGeForce RTX 4060のテスト結果となる。軽~中量級のゲームならフルHDで高いフレームレートが出せて、重量級ゲームもDLSS 3に対応していればレイトレーシング有効&高画質でも快適に遊べるだけのパワーがある。GTX 1060、RTX 2060、RTX 3060と歴代人気GPUとなっている「xx60」シリーズの最新モデルとして優秀な性能だが、52,800円スタートという価格は高いと言わざるを得ない。海外では299ドルなので、もう5,000円安ければと思うところ。DLSS 3がより身近になったのはうれしいが、フルHD解像度での消費電力がほとんど変わらず、より高いフレームレートを出せるRTX 4060 Tiがもう7,000円プラスで買えるという状態を考えると非常に悩ましい。RTX 3060/3060 Tiがまだまだ市場にあり、人気が高いことを考えると、普及するにはちょっと時間はかかりそうだ。