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『水ダウ』『酒のツマミ』『アメトーーク!』『夜ふかし』…見えてきたTVerで再生されるバラエティの傾向

2023年06月21日11時00分 / 提供:マイナビニュース

●ドラマ中心の中でバライティもジワジワ伸長
民放公式テレビ番組配信サービス・TVerの再生数が右肩上がりで伸び続けている。3月に月間動画再生数が初めて3億回を突破したことが報じられたばかりだったが、翌々月の5月には3億5,877万回を記録。これは前年同月比の約1.8倍にあたる数値であり、月間ユニークブラウザ数も過去最高の2,800万を超えたという。

その中心を担っているのはドラマで、先日発表された今年1~3月期の番組再生数ランキング(上位20位)でも、1~9位と11位~14位を独占。しかし、このところ全体再生数の増加とともにバラエティの数値もジワジワと伸び始めている。

どんなバラエティがどんな理由からランクインしているのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。

○■「人より企画」だからこその期待感

1~3月期の番組再生数でドラマの中に唯一食い込んでいるのが、10位の『水曜日のダウンタウン』(TBS)。2年連続で「TVerアワード バラエティ大賞」を受賞しているだけに、頭1つ抜けた存在であることは間違いないだろう。

それ以外では15~20位にそれぞれ、『King & Princeる。』(日本テレビ)、『人志松本の酒のツマミになる話』(フジテレビ)、『アメトーーク!』(テレビ朝日)、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)、『上田と女が吠える夜』(同)、『ラヴィット!』(TBS)がランクインした。

『水曜日のダウンタウン』『アメトーーク!』『月曜から夜ふかし』の3番組は、「今週は何をやるのかな」という企画に対する期待感が高い番組として知られている。だからこそ、いつでも見られる配信であるにもかかわらず「リアルタイムかそれに近いタイミングで見る」という人が多く、TwitterなどSNSの動きも活発。つまり、予告映像を見て期待感をつぶやき、放送中に反応のツイートが飛び交い、終了後もリツイートやネットメディアの記事があがるため、後追い視聴をうながせる。

多くの人々にとって必ずしも、『水曜日のダウンタウン』は「ダウンタウンの番組だから見ている」、『月曜から夜ふかし』は「マツコ・デラックスの番組だから見ている」というわけではないだろう。「配信では“人”より“企画”重視で選んで見る人が多い」と言われるが、その代表格がこの3番組なのではないか。特に『水曜日のダウンタウン』は、「配信でありながら、ルーティーンのように毎週同じ時間帯に見てもらえる」という異次元の存在に見える。

次に、『人志松本の酒のツマミになる話』と『上田と女が吠える夜』は、「好きなタイミングで見られる」という配信の強みを生かし、視聴者のライフスタイルに寄り添えることが大きい。どちらもグループのトークバラエティだが、たとえば前者は放送日の金曜夜から日曜夜の間で、自分が酒を飲むタイミングに合わせて見る。後者は放送日の水曜夜から金曜夜にかけて、平日のストレスを解消したいタイミングに見る。

自分のタイミングに合わせて楽しみやすいコンセプトの上に、トークの多くが他番組では言わないものに限定され、さらに「どんな話題でも最後は笑い飛ばす」という明るさが配信でウケているのだろう。

ちなみに、メンバーの脱退が絡んだ『King & Princeる。』と、平日午前の帯番組である『ラヴィット!』は、背景や条件が違いすぎるため参考外としておきたい。

●“個”で信頼を集める千鳥とマツコ

続いて、前述した1~3月の結果には入っていなかったが、日ごろTVer内のバラエティランキング上位常連の主な番組を挙げていこう。

タレント別に見たとき最も目立つのは、千鳥とマツコ・デラックス。千鳥は『テレビ千鳥』(テレ朝)、『千鳥かまいたちアワー』(日テレ)、『千鳥の鬼レンチャン』(フジ)、マツコ・デラックスは『月曜から夜ふかし』に加えて、『マツコ会議』(日テレ)、『マツコの知らない世界』(TBS)らがランキング常連となっている。

上に書いた通り、「配信では“人”より“企画”重視で選んで見る人が多い」のは確かだが、この2組は別格ということかもしれない。現在、千鳥の2人は43歳、マツコは50歳だが、彼らよりずっと若い世代が「千鳥やマツコの番組なら笑えるだろう」と信頼しているのではないか。しかもネット上のコメントを見る限り、売れっ子MCとしての華や重みではなく、「プレイヤーの1人として面白い人だから見る」という認識が感じられる。

そして“個”の力で1つ挙げておかなければいけないのは、今春ゴールデンタイムでのレギュラー化された『それSnow Manにやらせて下さい』(TBS)。「今最もアクティブなファンの数が多い」と言われるグループだけあって、番組が配信された際のアクションはどの芸能人よりも速く、数も多い。ただSnow Manほど突き抜けたグループでなければ、これほど再生数を稼ぐことは難しく、趣味嗜好の細分化が進む中、今後このパターンはあまり生まれないのではないか。

同じ今春にゴールデンタイムでレギュラー化された番組では『まつもtoなかい』(フジ)も、常にトップクラスの再生数を叩き出している。他番組とは一線を画すゲストの人選と、長尺のトークはそれだけで特別。YouTubeや有料動画配信サービスでは見られないという意味もあり、テレビとネット両方のコンテンツに対して差別化できている。

ただ、やはりSnow Manと同様で、この番組と同等レベルをそろえるのは難しく、似た番組は生まれづらいだろう。
○■笑いと楽しさ重視で情報性は不要

“個の力”という点でわずかに新たな兆しが見えるのは、『ゴッドタン』(テレビ東京)と『あちこちオードリー』(同)。どちらもTVerのバラエティランキングに入ることが多く、深夜番組だが着実に熱心なファンをつかんでいるのは間違いない。この両番組は企画や構成・演出など番組自体の面白さを求めて見る人が多く、ひいては「佐久間宣行が手がける番組だから」というファン層の広がりを感じさせられる。

ドラマにおける脚本家、演出家、プロデューサーがそうであるように、今後はバラエティも「○○さんの手がける番組だから見る」という作り手のファンがジワジワと増えていくのではないか。もしそうなら視聴の中心は配信になりそうだ。

ここまで多くの番組名を挙げてきたが、その大半に共通しているのは、「番組全体が笑いや楽しさ」で貫かれていること。また、裏を返せば、笑いや楽しさを重視する一方で、「ためになる」「知って得する」ような情報性がほとんどないことに気づかされる。

たとえば、長年“バラエティの鉄板テーマ”と言われてきた、グルメ、動物、子ども絡みの企画。あるいは、定番のクイズ番組や大規模な海外ロケ番組などは、あまりランキングに登場しない。これらは配信で見られやすいバラエティではないのだろう。

挙げなかった番組の中では、『あざとくて何が悪いの?』(テレ朝)、『トークィーンズ』(フジ)などのトークバラエティも再生数を稼いでいる。やはりどちらも「ためになる」「知って得する」ような情報性は薄く、あくまで良い意味で「大したことは話していない」のだが、その楽しげなムードがウケているのではないか。

とはいえ、まだまだバラエティには「放送収入を得るために視聴率を獲らなければいけない」という現実がある。ここまで挙げてきた「今週は何をやるのか」という期待感、ライフスタイルに合わせやすいタイミングでの配信、笑いと楽しさ重視で情報性なしの3つを優先させたら、視聴率が獲れなくなるリスクは高くなるのかもしれない。

それでも、TVer再生数の伸びを見る限り、重要な視聴者ニーズの1つとして、作り手たちはこの3つにもっと目を向けていくべきだろう。

木村隆志 きむらたかし コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月30本のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』など。 この著者の記事一覧はこちら

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