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再現ドラマをアニメ化、深夜の制約に苦心「門前払いも」 情報番組Dがバラエティで挑む「人が知らないことを番組に」

2023年06月16日06時00分 / 提供:マイナビニュース

●「深夜のバラエティでかける予算のアニメじゃない!」
きょう16日に放送されるフジテレビのバラエティ特番『オケカゼ~桶屋が儲かったのはその風が吹いたからだ~』(24:55~ ※関東ローカル)。「風が吹けば桶屋が儲かる」のように、「今我々の生活になくてはならないモノ・コト、そして当たり前のように行われている“アレ”は、実は意外なキッカケから始まっていた」という歴史上のストーリーを完全アニメ化で紹介する番組だ。

企画・演出を手がけるのは、『Mr.サンデー』(毎週日曜22:00~)を担当するフジテレビ入社7年目の山本将寛ディレクター。情報番組のスタッフがなぜバラエティを作るのか。そして、深夜の単発バラエティとしては異例の制作期間となった今回の番組における狙いやこだわりなどを聞いた――。

○■田中邦衛さんの取材がきっかけに

「首都高ができたのは、徳川家康がビビりだったからだ」「皇居ランが生まれたのは、銀座のホステスがバチバチしていたからだ」など、一見全くつながっていなさそうなリアルな物語に迫る同番組。企画の発想のきっかけは、現在担当する『Mr.サンデー』だった。

「『Mr.サンデー』では、ニュースに限らず“映像として残っていないけれど話としては面白いもの”を再現ドラマとして演出することが多く、そういう話はとてもたくさんあるな、と日頃から思っていました。“風が吹けば桶屋が儲かる”という言葉のストーリーを紹介するのでは、さらっと流れてしまい新しくないのですが、ちょっと見方を変えて“桶屋が儲かったのは風が吹いたからだ”という風にすることで、ドラマチック感が増して“なぜそうなったのか?”という引っかかりができるなと思いました」(山本D、以下同)

『Mr.サンデー』で、亡くなった田中邦衛さんの秘話を2カ月ほど取材し、再現ドラマを制作すると、「田中さんの人生そのものがドラマだなと感じて、それが映像になったらどれだけ面白いだろう」と発見があり、そこから再現ドラマを使った番組企画を提出。『めちゃ×2イケてるッ!』『はねるのトびら』などのバラエティ番組を演出し、現在は情報制作局に所属する近藤真広氏(今回の番組では制作統括)の知恵を借り、番組化に至った。
○■アニメなら“壁”を簡単に越えられる

再現ドラマをアニメにしたのは、よりドラマチックに描くため。また、「実写だと時代背景を描くためにもセットを変えたり、人を変えたり、と結構大変な作業になってしまうんです。低予算でやろうとすると安っぽく見えて違和感満載になってしまいますし。そこでアニメにすることで、今回ですと家康の時代からハリー・ポッターなどの海外ものを扱っても、違和感なく作ることができると思いました。時代や国も、本来ならば“壁”になるところをアニメなら簡単に越えられる」という考えからだった。

番組内では、宮田俊哉(Kis-My-Ft2)が「深夜のバラエティでかける予算のアニメじゃない!」と驚いているが、その通りアニメだからと言って予算がかからないわけではない。実現のために、「本当に苦労しました(笑)」と吐露する。

「人気のアニメ制作会社さんは予定が埋まっていてこのような単発番組のために稼働していただくのは難しく、門前払いもありました。しかし、YouTubeやTikTokにもハイクオリティなものがたくさんあることが分かり、過去の作品なども拝見し、今回担当してくださったアニメーターや制作会社に声をかけさせていただきました。皆さん本当に前向きにやってくださり感謝しています。見ていただくと分かるのですが、各エピソードが違うテイストになっています。本来ならば1社にお願いすると思いますが、予算のこともあり今回は全部で9つのクリエーターチームに制作していただいたんです」

一般的なアニメよりはだいぶ短尺だが、1つの作品が完成するまでには4カ月を要したそう。企画が通ってから、単発のバラエティとしては異例の約半年という期間をもらえたことで間に合ったが、それに加えて「1社にお願いしていたら間に合いませんでしたが、9つのチームがそれぞれ動いてくれたことで、なんとか完成できたと思います」と、放送にこぎつけた。

●第一線の声優が参加「こんなに多くの役をやることはない」

声優には、話題作で主役を務める小野賢章、雨宮天、小林裕介、戸谷菊之介といった第一線のプロが出演しているが、この4人だけでは到底人手が足りず、予算対策も含め、フジテレビのアナウンサー陣が参加。「同期の安宅晃樹アナは声がきれいだし、宮澤智アナは別の特番のナレーションを聞いていつか一緒に仕事をしたいと思っていました。田淵裕章アナは、ボイスサンプルを聞いて『ハマる!』と思い、今回お願いしました」と、起用に応えてくれた。

今回の企画に対する、アニメーターや制作会社の反応を聞くと、「皆さんは、基本的にリアルな話を題材としないので、事実に基づいたアニメ作りに興味を持って楽しんでやってくれました。僕たちからも絵を1枚1枚、『ここにこういう描写を』など、かなりディテールにこだわって発注させてもらいましたが、逆にアニメーターさん側がさらにディテールを載せてくれることも。面白がってちょっとした遊びを入れてくれることで、良いシナジーができた感じはありました」とのこと。

一方の声優たちは、「『1つの作品でこんなに多くの役をやることはないよ』と面白がってくださいました。アニメを本職としてない未経験の僕が第一線で活躍する声優さんたちと向き合って演出させてもらうなんて、すごく失礼なんじゃないかと不安だったのですが、役柄が多いことも含め本当に楽しんでやってくださって。こちらのイメージをどんどん超えてくるので、改めて『すげーな!』と感激しました」といい、「収録現場も和気あいあいと笑いがあふれる感じで、ありがたいことに僕自身も作品に自信が持てた瞬間でした」と、充実感を持って仕事ができたようだ。
○■オープニングアニメはテーマ曲もオリジナル

オープニングもオリジナルのアニメで、「風が吹けば桶屋が儲かる」を説明する映像を制作。ここは、アニメのオープニング風にしようと曲を探したが、このテーマにマッチする曲が見つからなかった。

そこで、若い層に見てもらいたいという思いから、YouTuber・ずま(虹色侍)に、オリジナルのテーマ曲の制作を依頼。オープニングの放送尺は30秒だが、「本人が面白がってくれて、最終的には1曲フルで完成させてくれました」といい、この楽曲「パラレル」が各種サイトで配信されている。

スタジオ背景もアニメとの親和性を考えてイラストにし、テロップもすべて手書き風にそろえ、一部は本当の手書きになっているという。

こうして手間ひまをかけて制作した今回の番組の見どころを聞くと、「1時間を通して見ると情報量がたくさん詰まった番組なのですが、アニメ化したことによって情報でおなかいっぱいにならない、気づいたら雑学を知れている番組になっていると思います。アニメ好きも雑学好きも出演者と一緒に見ている気持ちで楽しんでいただければと思います」と呼びかけた。

●“知らない”を“知っている”に変えたい

番組作りにおいて、「“知らない”を“知っている”に変える」ことに、常にこだわっているという山本D。その背景には、「『ウォーターボーイズ』を見て、男子シンクロのモデルになった高校で3年間シンクロに没頭しましたし、海外ロケ番組を見ていたら、“世界って本当知らないことばっかりだなぁ”と、今では世界を旅するのが大好きになっています」という自身の経験がある。

情報番組を制作する部署に所属しながら、2年前にもバラエティの特番『エモろん ~この論文、エモくない!?~』を演出するなど、ジャンルの壁を越えて取り組むのは、そのこだわりが反映された結果だ。

「情報番組は、今世の中に起きていること・ニュース性のあるものを紹介するものだと思うのですが、ニュース性がなくても『“知らない”が“知っている”に変わる』ことは驚きやワクワクがあります。『エモろん』は、知らなくても生きていけるけど、知っていたらなんか面白いよね!と思うことを扱った番組だったのですが、ニュースの枠を超えて『“知らない”を“知っている”に変えたい』を共有したいということで、バラエティ番組として企画しました」

また、「特に『Mr.サンデー』は、ディテール取材にこだわる番組なので、どれくらいそこで培ったものがあるか分かりませんが、今回の番組でもその取材力を生かすことができたと思います」と、情報番組でのスキルが発揮されている。

○■“遠いもの”が見せられるのがテレビの魅力

現在29歳で、“テレビ離れ”とも言われる世代の山本D。その中で、テレビの世界を志望したのは、「学生時代、スイスの大学に留学していたときに、物価が高くてお金がなかったので、ロケのコーディネーターのアルバイトをしてたんです。テレビ番組の仕事ももらって、普段見られない場所に行ったり、普通の人が聞けないような情報を聞いたり。実際にディレクターさんと1週間くらい過ごすのですが、テレビを見てくれる人のために分かりやすく伝えようとするその姿に、素敵な仕事だなと思いました」という経験があった。

それを踏まえ、「“テレビジョン”のテレは“遠い”、ビジョンは“見る”で、遠くを見せるのがテレビですが、物理的な意味だけではなく、いろんなハードルによってなかなか見られないようなものまで、テレビならば届けられるという意味でも“遠いもの”が見せられる、というのがテレビの魅力だと思います」と、力強く語ってくれた。

そんな山本Dに、今後作っていきたい番組を聞くと、「一貫して変わらないのは、『ジャンルを問わず、人が知らないことを番組にしていきたい』ということです。今、とあるドキュメンタリー番組を作っているのですが、日本で生きていたらなかなか知ることのないことが知れる番組になると思っています。あと、バラエティでいうと海外ロケ番組を作りたいです。海の向こうには知らないことがたくさんあるし、何度行っても学びがあるなと。僕自身、テレビを見て海外に行きたいと思うようになったので、同じように見てる人が海の向こうの知らない世界に魅力を感じて、日本を飛び出したくなるような、そういう番組を作りたいです」と意欲を示した。

●山本将寛1993年生まれ、埼玉県出身。上智大学卒業後、17年にフジテレビジョン入社。レギュラーでは『直撃LIVE グッディ!』『バイキング』『めざましテレビ』『Mr.サンデー』、特番では『FNSドキュメンタリー大賞「禍のなかのエール~先生たちの緊急事態宣言~」』『エモろん ~この論文、エモくない!?~』などを担当する。

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