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東工大、折り紙構造の膜アンテナ展開技術を宇宙空間で実証実験へ

2023年03月17日17時55分 / 提供:マイナビニュース


東京工業大学(東工大)は3月16日、宇宙システム新規技術「折り紙構造による超高利得展開リフレクトアレーアンテナ技術の宇宙実証」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的衛星技術実証4号機」の実証テーマに選定されたことを発表した。

今回の提案技術は、東工大 工学院 機械系の坂本啓准教授を代表者とした、同・工学院 電気電子系の戸村崇助教、同・岡田健一教授、東工大 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の白根篤史准教授らの共同研究チームによるもの。

JAXAの革新的衛星技術実証プログラムとは、宇宙基本計画上の「産業・科学技術基盤を始めとする宇宙活動を支える総合的な基盤の強化」の一環として、大学や研究機関、民間企業などが開発した部品・機器・超小型衛星・キューブサットに宇宙実証の機会を提供するものだ。革新的衛星技術実証4号機はその4回目であり、2024年度の打ち上げが予定されている。今回は6件のテーマが選定されており、東工大のテーマは、キューブサット区分として選定された3テーマのうちの1つだ。

日本政府が提唱するSociety5.0の実現においても、小型衛星群を用いた大容量通信網の構築が期待されているが、小型衛星では質量と打ち上げ容積が強く制限されるため、宇宙で大電力・大容量通信を可能にするにはまだ技術的な課題があるという。ただし、小型衛星に大型アンテナを搭載できれば、以下の3点のメリットを得られ、新サービスの実現や既存サービスの革新的発展が期待できる可能性がある。

地球周回衛星通信網の大容量化
高頻度地球観測を実現する小型合成開口レーダー(SAR)衛星コンステレーションのさらなる低コスト化と高解像度化
小型深宇宙探査機への大型アンテナ搭載による通信距離・容量の増大

アンテナは、開口面積が大きいほど通信速度の向上や通信距離の拡大、観測データの高解像度化が可能になる。しかし、従来はアンテナ面が高い形状精度を持つことを前提としており、結果として軽量化・高収納率化が阻害され、大型化が難しかったという。

そのような課題を踏まえて研究チームは、アレーアンテナ面を剛性が著しく低い膜面で構成し、あえて高い平面度を要求しないというアプローチにより、積極的にアンテナを軽量化・高収納率化して大面積化する技術を開発。今回の技術実証ではまず、地球観測で広く用いられ、アマチュア無線帯でもあるC帯(5.8GHz)でのアンテナ利得向上を実証するとしている。

そして、3Uサイズ(10cm×10cm×34cm)のキューブサット「OrigamiSat-2」(4kg)を開発し、そこに搭載される。同機では2層式展開膜を用いた、軽量・高収納率の展開リフレクトアレーアンテナ構造物(50cm×50cm)を軌道上で展開し、高利得アンテナ性能を実証するという計画だ。


このような大型アンテナを、折り紙のように折り畳める平面形状で構成するため、リフレクトアレーアンテナ方式が採用される。同アンテナの構造には次のような独自性があるという。

高い平面度を要求しない展開膜を用いて、アンテナ構造を軽量化する
膜材として平織布の伸縮性を活用し、低容量収納を実現する
折り線をまたがない反射素子構造を採用する
「飛び出す絵本」のように展開後に5mm間隔で離れる2層構造にすることで、誘電体層の厚さを確保する

研究チームは、これら独自の設計アプローチにより収納面積から25倍規模に拡大する衛星搭載アンテナ技術を、世界に先駆けて軌道上で実証するとした。

なお、今回の折り紙構造による展開リフレクトアレーアンテナ技術については、これまでの東工大で培われた技術が活かされているという。その1つは、革新的衛星技術実証1号機の実証テーマの1つとして選定され、2019年1月に打ち上げに成功した3Uキューブサット「OrigamiSat-1」に搭載された膜展開技術だ。

2つ目が、もともとは革新的衛星技術実証3号機で採択され、同4号機にて再チャレンジが実施される実証テーマ「Society5.0に向けた発電・アンテナ機能を有する軽量膜展開構造物の実証」(提案代表者:サカセ・アドテック)のミッションの1つである、「第5世代通信ミリ波アンテナ」ミッション機器だ(3号機の11テーマは、イプシロン6号機の軌道投入失敗により4号機と5号機で再チャレンジが実施される)。

研究チームは、東工大の機械系と電気電子系の技術を融合させたこれら2つの開発の経験を活かし、膜面展開式リフレクトアレーアンテナ新技術を搭載したOrigamiSat-2を開発するとしている。また今後、東工大とJAXAの間で打ち上げに必要な取り決めの締結、技術調整、各種試験、安全審査などを進め、2024年度の打ち上げに向けた衛星の開発を行うとのことだ。

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