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なりきり玩具は「画面の向こう側と自分を繋げる媒介」- 「仮面ライダー」CSM開発担当フナセン氏、伝統の逆をいく挑戦

2022年10月28日08時00分 / 提供:マイナビニュース

●劇中に登場しないアイテムを作る
「仮面ライダー」「スーパー戦隊」「ウルトラマン」といった特撮ヒーローに欠かせない玩具商品として、変身アイテムや武器などの「なりきり玩具」は常に重要な存在感を発揮している。

古くは1971年『仮面ライダー』の「光る!回る!仮面ライダー変身ベルト」(ポピー)から、最近では『シン・ウルトラマン』(2022年)の「ウルトラレプリカ ベーターカプセル(シン・ウルトラマン)」や『仮面ライダーギーツ』(2022年)の「変身ベルト DXデザイアドライバー」まで、バンダイがこの50年もの間に発表し続けてきた「なりきり玩具」は膨大な数に上り、多くのファンたちに興奮と感動を与え続けている。

2012年からは「大人のための変身ベルト」をコンセプトに、従来の「DX(デラックス)」玩具よりも造形と塗装のクオリティを高め、劇中BGM、効果音、そして新規録音したセリフなどを盛り込んだハイクオリティー商品「CSM(COMPLETE SELECTION MODIFICATION)」も登場。新商品が発表されるたび、創意工夫に満ちた精密造形、豪華音声ギミックなどが充実を見せ、今や大人気シリーズとなって多くの玩具ファンから高い支持を得ている。

50年以上にわたってさまざまなIPのなりきり玩具を発売しているバンダイが今回、「なりきり玩具」をテーマにした展示イベント「NARIKIRI WORLD(なりきりワールド)」を初開催する(2022年10月28日から30日までの3日間、東京ドームシティ Gallery AaMoにて開催)。

これを記念して、バンダイ「CSM」開発担当のフナセン氏にインタビューを実施。10月28日よりPrime Videoにて配信開始した『仮面ライダーBLACK SUN』の変身ベルト玩具「COMPLETE SELECTION MODIFICATION 変身ベルト 世紀王サンドライバー」に至るまでのCSM開発秘話や、これまで作ってきた中で特に印象深かった商品について、そして「こんな商品が欲しい」というファンの思いを受け止め、より満足度の高い商品を作り出そうとする強い思いを語ってくれた。

――フナセンさんは第14弾「CSM NEWデンオウベルト」からCSMの担当になられたとうかがっています。ご自身がCSMを作られるにあたり、意識的に変えたこと、改良したことなどはありましたか。

「音」の構成や「劇中演出」の再現です。最初のCSMは「DXから外観の出来をより劇中に近づけ、大人が巻くに相応しいものを」というコンセプトで始まり、徐々に音声面にも新しい要素を付加して進化させていったのですが、自分が担当になってからはその中でも音声面の充実に特に力を入れまして、テレビシリーズ・映画などで様々に行われたたくさんの演出をおもちゃで再現できることを狙いました。効果音については東映さんとも連携して劇中の音声データも使用させていただきまして、それはプレミアムバンダイで発売するDX玩具でも手法が取り入れられるようになりました。

――2012年にブランドが誕生したCSMは、今年で10年という節目を迎えました。最初の頃にできなかったことが、現在ではできるようになったなど、商品開発の進歩について感じたことはありますか。

技術的なことは、世の中にすでにあるものが大きく進化したわけではありませんが、単純にそれを玩具に取り入れるか入れないか、という点については、より費用をかけてでも「玩具として新しいもの」を積極的に取り入れていくようになりました。最初のころは手探りで、何をどこまでやっていいかわからなかった部分が、シリーズを続けることによってお客様から求められる要素が整理され、実装されるようになった例は多いです。今度はBGMを入れて、変身音と同時に鳴らしてみようとか、アイテム同士で通信連動させてみようとか、DXではコスト上の制約が多くて実装できないような仕様を入れ込んでいき、より高い再現ができるようになりました。

――CSMに搭載されるさまざまなギミックの中で、これはチャレンジをしたなと思えるものはありますか?

「CSMブレイバックル」のプロジェクター投影機能です。ブレイドの大きな特徴である光の板=オリハルコンエレメントをどうやって再現しようかと考え、最初は変身ベルト本体に投影用のギミックを仕込もうとしたところ、物理的に仕込むのも難しく、また投影面積も大きくできないということで頓挫しかけました。最終的に「オリジナルの外付けアイテム」で画像を投影するという手法をひらめき、なんとか実現できたのですが、劇中に登場していないアイテム(プロジェクター)をつくってしまうというのはひとつのブレイクスルーになり、今後の商品開発でも可能性の幅を広げられることだったなと思います。

プロジェクターのデザインは、これまで数多くの仮面ライダーアイテムをデザインされてきたPLEXさんにデザインしていただきました。このプロジェクターは大きな反響をいただきましたね。

――「CSMブレイバックル」「CSMギャレンバックル」は、剣崎一真役の椿隆之さん、橘朔也役の天野浩成さんによるプロモーション動画が楽しい内容になり、評判も高かったですね。

特に天野さんはコメントがほぼアドリブで(笑)。それを狙って台本は簡易にしていたのですが、想像をはるかに超えた「会心の一発」が乱発されて、非常に愛すべき動画に仕上がりました。天野さんには本当に感謝しています。天才です。

――CSMで最もヒットした商品は第18弾「CSMオーズドライバー コンプリートセット」だとうかがいました。ヒットの手ごたえみたいなものはありましたか。

「CSMオーズドライバー コンプリートセット」のヒットは、映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL』(2017年)で仮面ライダーオーズ/火野映司(演:渡部秀)とアンク(演:三浦涼介)のコンビが「復活」したタイミングに合わせて発売したという部分が一番大きな要因だったと思います。今年は『仮面ライダーオーズ10th 復活のコアメダル』に合わせて「ver.10th」も発売しました。過去作の新規映像との連動でCSMを作っていくことは、作品への注目度もより高まらせることにもつながるので、今後もそのような機会があれば積極的に取り組んでいきたいと思っています。必ずしも作品の周年記念で毎回CSMを発売するのは難しいのですが、商品開発と記念周年・または新規の映像作品のタイミングが合いそうなときは、意識的に連動企画を行い、商品を展開していきたいと思っています。

――CSMシリーズの中で、開発が難しかった、苦労したものはどれでしょうか。

一番苦労したのは第25弾「CSMキバットベルト」と第26弾「CSMタツロット」です。無線通信でキバットバットⅢ世とタツロットが会話をしたり、「音声認識」でキバットと会話したり、などこれまでにない新しいギミックを詰め込みました。そのためこの商品のプログラム開発は本当に苦労しました。スケジュール維持のために中国出張もしていたのですが、出先ではずっと成型物・塗装品のチェックと、プログラムの修正・デバッグをし続け、その年の暮れまで滞在し、完成させました。当初予定していた出張期間で完成せず滞在延長になってしまい、大好きなアーティストの年末ライブに行けなくなってしまうという悔しいこともありましたが、その念は商品のクオリティー向上にすべてぶつけまして、結果完成した商品はCSMシリーズの中でもクオリティー・なりきり再現度が随一の物になったと思っています。

●「何でもできる、は何にもできない。」の逆をいく
――仮面ライダーのファンの方たちがCSMに求めていることについて、フナセンさんはどのように分析されているでしょうか。

おもちゃというのはなんでも機能を詰め込むのではなく、何が一番のポイントなのかをわかりやすく打ち出すべき、という考え方があります。うちの会社の格言で「何でもできる、は何にもできない。」というのがあります。あれもできます、これもできますだと、この商品の何が一番面白いポイントなのかがぼやけて、結果中途半端な商品が出来上がるという意味です。

ただ、CSMはその考えを覆すように「外観のクオリティ、音声・BGMの充実、キャストボイス収録、劇中のあらゆるシーンを再現するプログラム……と、多彩な要素を限界まで取り込んでいます。もちろんメインの「変身遊び」の再現度が最も大切なことなのですが、それ以外に遊びたいこと、あってほしいことはお客様ひとりひとり異なると思います。あらゆる要素をまんべんなく、最大公約数的に入れるというのは、自分の中で大事なことだと思っています。誰かにとっては不必要な機能でも、誰かにとっては必要な機能だったりする。高価ですし、何度も出し直せる商品ではないので、1回の商品化でより多くの方にリーチできる内容にしたいと思っています。

CSMでは、ひとつのベルトの中に「作品の面白い要素が全部詰まっている」というのを理想に掲げており、お客様のライダーの思い出を甦らせる「身近な装置」としても機能してくだされば幸いです。

――第1弾「CSMダブルドライバー」が2019年に「CSMダブルドライバー ver.1.5」として発売されたように、既発売のCSM商品をリニューアル、グレードアップする構想はありますか?

初期のCSMは、どこかの機会でバージョンアップしたものを作り直したいと思っています。昨年は「ディケイドライバー」を「ver.2」として発売し、今年は「オーズドライバー」もリメイクしました。商品企画はいつも一回一回が勝負なのですが、作り終わって、エンドマークを打ってからようやく初めて見えてくるものがあります。これはあらゆる創作物でも同じだと思いますが、じゃあそうそう作り直しできるかというとそんなことはありません。そんな思いに極力ならないように、毎回真剣に開発していますが、後に出せば出すほどクオリティは間違いなく上がりますので、同じ作品の商品でも、2号ライダーのベルトの方がスペックが高いなんて事例もあります。

本当は全部作り直したいと言うと怒られそうですが、常に進化し続ける先に、過去の商品も再び新たなスペックで世に送り出せる機会があればと思っています。適切なタイミングで、今後取り組んでいきたいです。

――平成仮面ライダーシリーズの変身ベルトが中心となっているCSMですが、ベルト以外の「大人向け」なりきりアイテムや、あるいは仮面ライダー1号の変身ベルト「CSM変身ベルト・タイフーン」に続く「昭和」ライダーのベルトなどの商品化についてはいかがでしょう。

現状ではまだ明確にお答えすることはできませんが、機会があれば昭和ライダーのベルトや、平成でもマイナーとされる仮面ライダーのベルトなども商品化していきたいという思いがあります。新シリーズ「CSG(COMPLETE STYLE GIGANTIC)タイタンソード」が12月に皆様の手元にお届けされますが、今後こういった「武器」の大型商品も続けていきたいです。一生追いつけないとは思いますが、すべてのベルトをCSMで出したいという野望はあります。

●「未来の変身ベルト」からサンドライバーへ
――話題騒然の配信ドラマ『仮面ライダーBLACK SUN』の変身ベルト「COMPLETE SELECTION MODIFICATION 変身ベルト 世紀王サンドライバー」について教えてください。

現在テレビで放送中の仮面ライダーシリーズとは違う流れで、完全に大人をターゲットにしている作品を作るにあたり、企画の立ち上がりから「作品の世界観にマッチしたハイターゲット向け商品」の提案をしました。連動アイテムを組み合わせることのない「変身ベルト」一個で完結している商品ですから、このベルトそのものに新たなギミックを施したいと考えたとき、変身ポーズに反応して「自動変形」を行う商品のアイデアが固まり、企画開発が始まりました。2019年に開催されたCSMのイベントで、「未来の変身ベルト」というコンセプトモデルを発表しましたが、あれが着想元になっています。パーツが「開いた」状態から、中央に向かって「閉じて」いくというギミックは、『仮面ライダーBLACK SUN』でコンセプトビジュアルを担当された樋口真嗣さんのアイデアです。エネルギーが中央に収束するイメージが、自動変形というギミックによって表現されています。発光についても、これまでの変身ベルトには見られなかった、表面の大部分が光るというインパクト抜群のビジュアルになっています。

――あのイベントから繋がって形になったというのは感慨深いですね。そして今回、仮面ライダーの変身ベルトをはじめ、さまざまなIPのなりきりアイテムが集合する展示イベント「NARIKIRI WORLD(なりきりワールド)」が開催されます。本イベントでの「仮面ライダー」コーナーの見どころはどこでしょう。

仮面ライダーのブースは「CSM 変身ベルト 世紀王サンドライバー」の展示がメインで、ブースでは変身ベルト史上初の「自動変形」ギミックを間近でご覧いただけます。歴代CSMシリーズも展示され、変身ベルトおよび「なりきり玩具」の今をご覧いただけるようなイベントになっています。「フィギュア」が子どもも大人も楽しめるホビーブランドとして認知されているように、「なりきり玩具」も子どもだけでなく、大人の満足度に楽しめるホビーである、ということが当たり前になっていくこと……そんな願いが、今回の催しに込められております。

――変身ベルト、変身アイテム、特殊武器といった「なりきり玩具」の魅力とは、どんなところにあると思われますか。

テレビ画面の向こう側にいるヒーローやヒロインと、それを見ている自分とを「繋げてくれる」媒介、フィクションエンタメをより身近に感じさせてくれる存在というのが「なりきり玩具」の一番の魅力なのではないかと思っています。現実と異なる世界で輝く存在を、私たちは虚構とわかっていながら、真剣に生み出し、真剣に受け止め、楽しみます。それは決して茶番でも不思議でもなく、今の世界では当たり前なことで、中には生きがいになっている人もいます。私たちの人生をより豊かに彩る存在として、我々の送り出すおもちゃがそんなフィクションエンタメをより楽しめる物にできればと願っています。

「CSM 変身ベルト 世紀王サンドライバー」は2022年10月28日(金)12:00より予約受付開始予定。

(C)石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

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