2022年10月21日16時33分 / 提供:マイナビニュース
資生堂は20日、「資生堂研究員と考える ビューティー&サステナブル 最新テクノロジー」と題するスペシャルトークセッションを開催した。第1部サステナブルセッションのテーマは『環境にも美しさを。生活者と生み出すエフォートレスな循環型社会』。資生堂 ブランド価値開発研究所から大山志保里氏と伊藤健司氏、そして環境省サステナビリティ広報大使のトラウデン直美さんが登壇した。
○■容器の水平サイクルを目指して
冒頭、伊藤氏はプラスチックごみの問題に言及し、日本人は1人あたりのプラスチックごみ廃棄量が世界のワースト2位であると紹介した。廃棄されたプラスチックごみは約80%が焼却処分されているとのこと。「焼却施設で生じた熱はサーマルリサイクルとして温水プールに活用したりしていますが、地球温暖化につながる二酸化炭素が発生してしまうことには変わりありません」と伊藤氏。
いま世界各国では2050年~2060年頃までに温室効果ガスの排出量をゼロにすべく、カーボンニュートラルの取り組みが本格化している。例えばイギリスでは、プラスチック容器に30%以上のリサイクル材料を使わないと税金を課す法律が施行された。日本でも今年(2022年)4月に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行。資源循環の取り組みの機運が高まっている。
こうした動きをとらえ、大山氏は「企業でも『決まりだからやる』ではなく、世の中に先んじて取り組みを進めていくことが肝心」と話す。これにトラウデンさんは「企業がサステナブルに積極的だと、消費者も商品を手に取りやすくなるし、『環境に貢献できる』と思うと嬉しくなる」と応じた。
大山氏によれば、同社では『資生堂5Rs』という理念を重要視している。いわゆる3Rと呼ばれる「リユース」「リサイクル」「リデュース」のほかに、素材を置き換える「リプレイス」、そして「リスペクト」を加えた5Rで環境に配慮した展開を加速させているという。「リスペクトとは、お客様が愛情を持って使い続けられる商品を開発すること。同時に、資生堂がお客様をリスペクトしながら商品開発することも意味しています」(大山氏)。この資生堂5Rsに基づき、例えば50超のブランド / 1,000以上の商品においてレフィル(詰め替え、付け替え)で展開している、と紹介した。
ここで伊藤氏は、積水化学がBRエタノール技術による画期的なケミカルリサイクル方法を研究していると紹介。これまで中身保護のため多種多様なプラスチックを使わざるを得なかった資生堂の化粧品の容器(=リサイクルしづらい)も、この技術を使えば分別せず、容器を洗浄することさえせずにエタノールに変換できるという。さらには住友化学がエタノールを原料としてポリオレフィンを製造できる技術を研究中。こうした技術を連携すれば新しい化粧品容器がつくれるのでは、と期待を寄せた。
○■生活者の意識が変化
続く第2部のスキンビューティーセッションは『メディカル×ビューティーで肌老化にアプローチ。免疫細胞(マクロファージ)と美容の最新テクノロジー』というテーマ。
資生堂 みらい開発研究所 研究員の堀場聡氏によれば、マクロファージを整えれば皮膚内部のコラーゲンの産生が活発化し、分解は止まり、良い肌をつくる作用を内側からサポートできるとのこと。詳しくは、炎症を起こして外敵と戦うM1マクロファージと炎症を抑える働きのM2マクロファージのバランスが美容のカギとなり、M1、M2マクロファージのバランスが乱れると”じわじわ老化”するばかりでなくコラーゲン代謝にも影響してくる、とした。
資生堂 エリクシールグローバルブランドユニットの阿部桃子氏は、コロナ禍によりマスク生活が常態化したことで18~49歳の日本女性の4人に1人は「肌状態が悪化してしまった」と考えていると紹介。そしてスキンケアに求めていることについては「自分を大切にしたい」が1位という結果に。従来ならリラックス、リフレッシュがトップに来ていたが、コロナ禍で消費者の意識に変化が訪れていると分析する。これらのことも踏まえ、1983年より展開しているエイジングケアブランドの「資生堂 エリクシール」は今年(2022年)9月にリニューアルを果たした。阿部氏は「お客様の肌の張りと潤いを立て直す、さらなるエイジングケアの革新技術を盛り込んでいます。国内における化粧品・乳液カテゴリでは15年連続で売り上げ1位を堅持するブランドを、皆さまの日常のスキンケアに役立ててもらえたら」とアピールした。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら