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高エネルギー粒子による波がプラズマを加熱する様子、核融合研などが観測に成功

2022年09月30日15時43分 / 提供:マイナビニュース


核融合研究所(核融合研)と東北大学は9月29日、核融合研の大型ヘリカル装置(LHD)において、プラズマの速度分布の時間変化を詳細に計測し、高エネルギー粒子が作り出した波が、「ランダウ減衰」と呼ばれるプロセスによって熱を運び、プラズマを加熱していることを観測することに成功したと発表した。

同成果は、核融合研の居田克巳教授(総合研究大学院大学(総研大)兼任)、同・小林達哉助教(総研大兼任)、同・吉沼幹朗助教(総研大兼任)、東北大大学院 理学研究科の加藤雄人教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の物理学を扱うオープンアクセスジャーナル「Communications Physics」に掲載された。

核融合発電は、プラズマ中の核融合反応で発生した高エネルギー粒子がプラズマを加熱することで核融合反応を維持する仕組みだが、このプラズマの自己加熱を効率良く行うためには、高エネルギー粒子が作り出した電磁波でプラズマを加熱するプロセスが必要と考えられている。

しかし、これまでプラズマ内部で発生した電磁波による加熱プロセスを直接的に計測する手法がなかったため、この加熱プロセスが実際に存在するのかどうかは不明だったという。LHDのプラズマ実験で、この加熱プロセスの存在を明らかにすることができれば、核融合発電の実現に向けた大きな一歩となるとされている。

そこで研究チームは今回、電磁波によるプラズマの加熱プロセスを捉えるため、新たな計測システムの開発に取り組むことにしたとする。

加熱プロセスを直接計測するためには、どの速度の粒子がどれくらいの割合で存在するのかを示す速度分布の時間変化を計測する必要があったことから、高速の原子をプラズマに入射して、プラズマから発せられる光の波長分布からプラズマ粒子の速度分布を高速で計測する「高速荷電交換分光法」を用いることにしたという。

そして実験の結果、これまで困難とされていた超高速計測に挑戦し、10kHzの速さでプラズマ粒子の速度分布の時間変化を計測することに成功したという。


LHDでは、核融合反応による高エネルギー粒子を模擬した高速粒子ビームを用いて、プラズマの自己加熱を調べる実験が行われている。今回、この自己加熱の模擬実験において、新たに開発された計測システムを用い、プラズマ粒子の速度分布の時間変化について詳細な計測が実施された。

その結果、プラズマ内部での電磁波の発生に伴って、高速粒子ビームが減速するとともに、プラズマ粒子の速度分布の形状が歪んでプラズマが加熱されていることが示されたという。

また、この速度分布の歪みの理由は、ランダウ減衰と呼ばれるプロセスによって、高速粒子ビームのエネルギーが電磁波に移り、その電磁波のエネルギーがプラズマ粒子に移ったためであることも判明。これは電磁波が、高速粒子ビームからプラズマ粒子へと熱を運んで、プラズマを加熱したことが観測されたということであると研究チームでは説明するほか、電磁波の発生の1万分の1秒後には、速度分布の歪みが始まることも確認されたとする。

なお、核融合発電におけるプラズマの自己加熱のためには、高エネルギー粒子がプラズマ粒子と衝突して加熱するだけでは不十分であり、ほかのプロセスによる加熱が必要だという。そのため、プラズマ内部で発生した電磁波が、そのプラズマを加熱できることを実証した今回の研究成果は、核融合研究に重要な知見を与えると研究チームでは見解を述べており、この成果は、同様のプロセスで粒子加速が起こっている地球磁気圏の研究にも貢献し、今後の学際的な研究の進展を促すことが考えられるともしている。

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